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無能転生者、何もせず遊んでたら異世界救ってました。  作者: 真理衣ごーるど
╰╮第9章:レオバルド獣王国編╭╯
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第82話:『獣人の想い、魔人の呪い』

毎日18時投稿!・・・予定です(なるべくがんばります)

 雷牙が闘技場から戦場を見下ろし、牙を剥き出して唸る。


「グルルル……」


 その金色の瞳は、暴走する獣人たちを哀れむように揺れていた。


 ノアの声がアクスの脳裏に響く。


(アクス様、あの鎧は“カーステッドアーマー”。戦意を強制的に高め、血と魂を糧に力を増す呪具です。あの数を一匹ずつ脱がせるのは面ど――困難ですが・・・魔人自体は対して強くないので雷牙の魔力を帯びた強力な咆哮なら、纏めて呪いを打ち払えるでしょう)


 アクスは小さく頷き、顔を寄せる雷牙の鼻面を撫でる。


「行け、雷牙。目を覚まさせてやれ」


「ガウッ」


 雷牙は小さく一鳴き、その後大きく跳躍し、一瞬で戦場のど真ん中に降り立った。


「グオォォォォォォォォン!」


 爆風と共に雷牙の咆哮が天地を揺るがした。その声は大地を震わせ、空を裂き、雷光を伴って王都の邪気を焼き払う。


 電撃と威圧に晒された草食獣人たちは動きを止め、獣の本能に従うように膝を折り、地面に伏した。


 次の瞬間、黒い鎧が音を立てて砕け散る。


「ガッ……アアァァァァ!」

「くそっ……やめろ……!」


 悲鳴と共に、鎧は蒸気のように霧散し、あっけなくどこかへと消えていった。


(生きた魔人の捕獲は初めてですね・・・フフフ、これでまた研究が・・・)


 鎧を剥がされた獣人たちは、血まみれの手を見つめ、嗚咽を漏らす。


「……俺は、何を……」

「村を守りたかっただけなのに……!」


 涙を流す者、地面に爪を立てて吠える者、その姿は皆、罪悪感と絶望に震えていた。


 アクスは拡声の魔道具らしきものを口元にかざし、彼らの前で声をあげる。


「もういい、これ以上は誰も死なせない。お前らが悪いんじゃない。全部あの鎧のせいだ」


 雷牙が一歩進むと、空気に緊張が走るが、ノアにより拡声されたアクスの声が静かにそれを溶かした。


「だから、ここで終わりにしよう。二度とこんな馬鹿な戦いはするな」


 沈黙の後、草食獣人の一人――白髪の老バッファローが涙を流しながら頭を下げた。


「……すまない、人間殿。救ってくれて……ありがとう」


 観衆の間からすすり泣きが漏れる。肉食獣人ですら、その光景に胸を突かれて言葉を失っていた。


 闘技場の上段からその光景を見下ろすレオングラードの顔に、複雑な色が浮かぶ。悔しさと、驚きと、そして認めざるを得ないという屈辱の混ざった表情だ。


「この国を・・・救ったというのか、人間が」


 闘技場に重苦しい沈黙が落ちていた。草食獣人たちは涙ながらに家族のもとへ駆け寄り、肉食獣人の兵士たちは呆然と立ち尽くす。雷牙の威光はなおも空気を震わせ、誰一人として声を荒げることができなかった。


 レオングラードがゆっくりと立ち上がる。巨大なライオンの頭部が月光を浴び、影を落とす。


「……アクス、と言ったな」


 その声は低く、威圧を孕んでいたが――先程までの嘲りや侮蔑は消えていた。


「この俺様が人間ごときに頭を垂れるとは、何とも屈辱だが・・・この国を救ったのは、間違いなく貴様だ。」


 レオングラードは苦渋を滲ませ、頭を下げる。


 観衆の獣人たちがざわめく。王が“屈辱”という言葉と共に他人に頭を下げるというのは、おそらく建国史上初めてだった。


 アクスは肩をすくめて答える。


「別に頭なんて下げなくていいさ。ただ……もうこれ以上、誰も食わせたりするな。納税だの徴発だの、理不尽な搾取も終わらせろ」


 宰相が慌てて声を上げる。


「な、なんと無礼な!陛下にそのような口を――!」


 だが、レオングラードは片手を挙げて制した。


「……よい。アクス、貴様の言葉、聞き届けた。この場にいる全ての者の前で宣言しよう」


 獣王は堂々と宣言した。


「今日より――食刑を廃止する。草食獣人からの一方的な徴発も、肉食の脱税も認めぬ。弱肉強食は変わらん。だが、無益な搾取と殺戮は、国を滅ぼすと悟った」


 その場にいた草食獣人たちは王の言葉を聞き一斉に涙を流し、地面に額をこすりつけて嗚咽をあげた。肉食獣人の兵士たちも、驚きと困惑の入り混じった顔で沈黙する。


 パルマは両手で口を押さえ、堪えきれない涙を流した。


「……これで少しは、この国も……」


 その肩にアクスが手を置く。


「全部を変えるのは一日じゃ無理だ。でも、一歩進めたんだ。お前が帰りたいと思える国に、少しは近づいただろ」


「アクスさん……」


 パルマはしゃくり上げながらも微笑んだ。その目は涙で潤み、だが確かに希望の光を宿していた。


 雷牙は子犬の姿に戻り、アクスの足元で褒めてほしそうに尻尾を振っている。リオルが「ぴぃ?」と鳴いて、頭の上から覗き込む。場の緊張は少しずつほどけ、空気に安堵が広がっていった。


 こうしてアクスは何もせず兵士からパルマの村を救い、獣王からパルマを救い、魔人から肉食獣人を救い、食刑から草食獣人を救い、内戦から獣王国を救った。

そして・・・


「今なら兄貴が獣王になれますぜ?」


 何故かアクスの後ろで跪いているライガルが物騒な提案をする。


「やだよ面倒くさい。一応改心した獣王を今更殺したくないし」


王位簒奪の条件は”現獣王を殺すこと”、本来決闘によって殺されるはずだった獣王の命すら救ったのだ。

獣王国の今後


 今後と言っても、特に大きな改革が起きるわけでもなく、やはり弱肉強食が根底にあるのは変わりません。獣王が大人しくなり、重税も食刑もなくなり、要は前王の状態に戻ったということです。草食の地位も低いままですが、食べられるのは自然死した者だけになり、他の肉は魔獣や周囲の動物を狩って補う事になります。これでも人間の感覚からしたら異常に見えますが、これが”獣人国”というものなのです。


人物イメージ画像一覧はコチラ

https://ncode.syosetu.com/n1501lc/

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