第79話:『妨害の罪と罰、戦獣の爪と牙』
毎日18時投稿!・・・予定です(なるべくがんばります)
アクスは数日間、パルマの村に滞在していた。
壊れた柵を直し、倒れた倉を建て直し、傷ついた村人には薬を配り――いつもは冒険者として走り回る彼が、土埃にまみれて泥臭い復興の手伝いをしている姿は、村人たちの胸を温めた。
パルマもまた家族の手伝いに励みながら、ふとアクスの背中を見ては目頭を熱くする。
(やっぱりこの人に護衛を頼んでよかったですぅ・・・)
そんなある日の夕暮れ、村に獣王国の紋章を掲げた兵士が訪れる。
重い鎧を鳴らし、鼻を利かせた狼獣人の兵が無愛想に巻物を突き出した。
「獣王陛下からの勅命である。アルケシアの人間アクス、そして・・・兎人のパルマ。両名、速やかに王都王城に出頭せよ」
「え・・・俺はともかく、何でパルマまで?」
怪訝に眉を寄せるアクスに、兵士は嘲るような笑みを浮かべる。
「理由は“徴税行為の妨害”だ。貴様らが兵を追い払った件、王城にて裁定を下される。期日までに出頭しなければ、指名手配の上、強制捕縛となるだろう」
理不尽極まりない言い分だが、兵の声色には一切の冗談はない。
パルマは青ざめ、耳をぴんと立てた。
「・・・わたしまで・・・ですぅ?」
「命令は絶対だ」
兵士たちは用件だけ告げると、土煙を巻き上げて去っていった。
重苦しい沈黙が村に残る。
「・・・俺が行くよ。一人でな」
アクスは溜息をつき、淡々とそう言った。
だがパルマは、首を振って涙を堪えながら訴える。
「だめですぅ。獣王様の命令は絶対なんですぅ・・・それに、今はアクスさんの側が一番安心できるですぅ。だから・・・案内も兼ねて、一緒に行きますぅ」
その瞳は震えていたが、どこか決意の光も宿していた。
アクスは少しだけ目を細め、苦笑する。
「・・・わかった。じゃあ一緒に行こう。大丈夫だ、俺が必ず守るから」
パルマは涙をぬぐい、こくりと頷いた。
――数日後、王都の正門前。そこに待っていたのは見知った顔だった。
「おう、無の・・・いや、アクスか。ここで会うとはな」
赤毛を逆立てたオオアカネコの獣人、ライガルが腕を組んで立っていた。背後には獣王の牙の仲間たちも揃っている。
「また嬢ちゃん(パルマ)を連れてるのか。ちょうどいい、王都は今ちょいと物騒なんだ。同じ獣人の好で、また護衛してやるよ。もちろんタダでな!」
(・・・またかよ)アクスは目を細め、内心ため息をついた。
(こいつら、やっぱり怪しいな・・・だが断ったところでついて来るだろうし、見える範囲にいてくれた方が都合がいいか)
「何度も悪いな、助かるぜ」
表面上は平然と答えた。
パルマは馬車の陰でそっと震えていたが、アクスが横目で「心配するな」と囁くと、小さく息を吐いて落ち着きを取り戻した。
一行は王都に入り、厳重な城門を抜けて王城の前に立つ。
その重々しい門が開かれ、獣王直属の使者が現れた。鷹獣人の男は、ぎらついた目でアクスたちを見下ろす。
「人間のアクス。そして兎人の女。早速だが詰所で裁定を受けてもらう」
中へ通されると、使者は椅子にふんぞり返りながら宣告した。
「人間よ、部外者である貴様が国の公務を妨害したことは重罪であり、その罰は極刑に値する!」
いきなり物騒な事を言い出す使者。罪状もあやふやで適当な上に理不尽すぎて逆に笑えてくる。
「だがしかし! 特別に今回の件は不問にしてやろう。ただし条件がある――その兎人を獣王陛下へ差し出すのだ」
「・・・は?」
パルマは血の気が引き、アクスの袖をぎゅっと掴んだ。
アクスの返事は一拍の間もなく、きっぱりとしたものだった。
「断る。彼女は俺の仲間だ」
「なにぃ!」使者は机を叩き割らんばかりに立ち上がり、怒声を上げた。
「貴様、獣王国の権威に逆らう気か!」
「獣王国の権威がどうだろうと関係ない。俺は俺の仲間を守る」
使者は顔を真っ赤にし、口角から泡を散らして叫ぶ。
「よかろう!我らが獣王国兵団最強の戦士長を呼べ!決闘で白黒つけてもらう!」
その場に現れたのは、体格の巨大な虎獣人の戦士。牙を剥き、腕は太い鉄のように膨らんでいる。
アクスが前に出ようとした瞬間――
「ここは俺に任せろ」ライガルが一歩踏み出した。
「あんたには借りがあるからな。見せてやるぜ、俺様の爪と牙」鋭い眼光がアクスに向く。
虎獣人の戦士長が吠える。
「我が名はバルドガル!獣王直属の戦士にして、百の戦場を生き抜いた猛虎だ! この斧でお前らチビ猫族など一撃で叩き割ってくれる!」
闘技場に移された場内は熱気に包まれ、兵士たちが鬨の声を上げる。
対するライガルは、ゆっくりと拳を握り締めただけだった。
「・・・俺は獣王の牙のリーダー、戦獣のライガルだ。獣人は爪と牙こそが誇りだ。余計な飾りは要らねぇんだよ」
彼の身に纏う気迫は、まさに戦う獣そのもの。
開始の合図と共に、バルドガルが地響きを立て突進した。大斧が風を裂き、地割れのような咆哮が響く。
だがライガルは紙一重でそれを躱し、逆に虎の腹へ拳を叩き込んだ。
「ぐっ・・・!」
巨体がぐらりと揺れる。
ライガルの拳はしなやかで爪は鋭く、肉を裂く度に赤い軌跡を描く。虎獣人の反撃は力強いが直線的で、ライガルは獣の勘でそれを読み切っていた。
「お前、斧に振り回されているな!」
ライガルが低く吼えると同時に、爪の連裂が雨のように降り注ぐ。虎の巨体が膝をつき、観衆から驚愕の声が上がった。
最後に跳躍したライガルの牙が虎の首を捉え、バルドガルは大の字に倒れ込む。
闘技場に静寂が訪れ――次の瞬間、轟音のような歓声が爆発した。
勝者、ライガル。
ライガルは肩で息をしながらも、誇り高く背を伸ばした。
「見たか!これが俺の・・・戦獣の爪と牙の力だ。武器なんざ要らねえんだよ」
人物紹介:ギルド受付嬢パルマ
兎人の女、9歳、(獣人は成長が早く寿命は人間の半分なので、人間で言うと18歳)
パルマは村の獣人の中でも頭が良く、見目もきれいで、ただの村娘で終わらせるには勿体ないと言われ続けていた。7歳くらいの時に独り立ちを決意、王都のギルドで受付嬢に就任するも、配属先は遠き人間の国アルケシア王国のエリシュナとかいうよくわからない場所。実はこれは獣王国の現実を知る獣王国王都ギルド長の采配で、パルマがこのまま王都で受付嬢をしていたら、あっという間に食われていた。
知らない土地で草食獣人が虐げられない世界がある事を知り、たくさん稼いで村のみんなをエリシュナに移住させるのが現在の夢。しかし、獣人の村基準で頭が良いと言っても、人間基準だと少し足りず、数字の計算も苦手なのでいつもドタバタしながら先輩に怒られている。
人物イメージ画像一覧はコチラ
https://ncode.syosetu.com/n1501lc/
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