第77話:『獣王国の所見、獣人達の食刑』
毎日18時投稿!・・・予定です(なるべくがんばります)
アークに帰還したアクス、いつもの通りラウンジのソファーに座る。
リオルと雷牙を従士達に預け、改めてノアと情報整理を行う。
「ノア、獣王国について教えてくれ」
「はい、獣王国は只一人の獣王によって統治されている独裁国家です。王都の住人及び貴族、王族は殆どが肉食系獣人。草食系獣人は農民か下働き、娼婦。場合によっては食料にされています。草食が肉食に勝てるはずもなく、弱肉強食が普通という社会感覚のようです」
「食料・・・自然の中ならわからんでもないが、国家の中でそれは・・・えげつないな」
「同族食い、になるのでしょうか。獣の種類が違えば別種とも考えられますが、個人の感覚なので何とも言えませんね」
「そもそも獣人って何なんだろうな。人間と獣が交わったのか?あの種類を??」
「獣人国は王の代替わり方法が独特なのもあり、あまり歴史を重んじないというか、書物や記録といった類が殆どありません。なので起源は不明です。パルマ嬢も遠隔で生体解析を行いましたが、もうそういう種族としか・・・かくなる上はパルマ嬢を直接生体か――」
「ちょー待て待てィ! 何となく気になっただけだから! 今回の件とは関係ないし!少し落ち着け!」
「・・・仰せの通りに」
ノアは一礼し大人しく待機する。
「ん、王の代替わり方法って?」
「王に決闘を申し込み、王を殺せば王位を簒奪できます」
「まんま獣じゃねーか!それは本当に国なのか?」
「一応法律はあるようですが、王や王の気分が変わる度に変わっているようです。税制もあるようですが、まぁ殆ど草食獣人からの搾取ですね」
「なるほど・・・納得も共感も一切できないが、理解はした。うまい立ち回りを考えないと、下手すりゃ俺も食われちまうかもな」
「そんな事は絶対にさせませんけどね」
「わかってるよ、頼りにしてるさ」
翌日、一行は王都へ続く街道を進み、王都手前の少し大きな街にたどり着いた。
石畳の通りを抜け、商人や獣人たちの活気ある声を耳にしていたその時――群衆のざわめきが一か所に集まり、異様な熱気が漂っていた。
「なんだ・・・?」アクスは足を止め、人だかりを覗き込む。
中央には、縄で縛られた牛の獣人。その前に立つハイエナの兵士が胸を張り、わざとらしく声を張り上げた。
「・・・罪状は、貴族への反逆罪! 草食平民は肉食の貴族に無礼な態度を取ってはいけない。よって貴様をこれから――しょっけいに処す!」
兵士の顔には愉悦の色が浮かび、口端からはよだれが垂れ落ちている。
わざと区切るように放たれた「しょっけい」という響きは、処刑を意味する言葉には聞こえず、愉悦と溢れるよだれによる言い間違いに聞こえる。
「なんだあいつ、しょっけいって・・・ろくに言葉も話せてないぞ。頭大丈夫か?」
アクスが呟くと、隣のパルマが耳を伏せ、小さな声で答えた。
「いえ・・・“しょっけい”で合ってるですぅ。食の刑――食刑なんですぅ」
「なに! じゃぁあいつは今から・・・」
アクスの声に緊張が混じる。
「はい・・・見ないほうがいいですぅ」
パルマの指先が小刻みに震え、アクスの袖をぎゅっと握った。
兵士たちはゆっくりと牛の獣人に歩み寄り、鼻先が触れるほど近づく。牛の獣人は必死に顔を逸らし、恐怖に歪んだ目を閉じる。
「ほら泣けよ・・・怖いかぁ?」
「はは・・・牛は喰いがいがあるからなぁ!」
弄ぶように笑うハイエナ兵士たち。次の瞬間、牙が閃き、肉が裂ける音が響いた。
「・・・っ!」
牛の獣人は声を上げる間もなく喉元を噛み砕かれ、目を見開いたまま沈黙する。血の匂いが風に乗り、観衆のざわめきはさらに熱を帯びる。だが、止めに入る者は誰一人いなかった。
「・・・あいつら、命をなんだと思っているんだ!」
アクスの拳が震えた。だが袖を掴むパルマが、必死に首を振る。
「あれが・・・この国の日常ですぅ」
ハイエナ兵士たちは肉を引き裂き、嬉々として胃袋へ収めていく。
アクスは無意識にライガルへ視線を向けた。ライガルは――動じない。彼らの目にはこの惨状はどう映っているのか。
鋭い眼差しでただその光景を眺め、やがて口を開いた。
「ん? あぁ、終わったな。早く行こうぜ」
冷ややかで、何の感情も滲ませない声。アクスの胸に怒りがこみ上げ、思わず胸ぐらを掴み問い質したくなる。
――だが、歯を食いしばってそれを押し殺す。
(郷に入っては郷に従え・・・か。ここはそういう国なんだ。気に入らないなら出ていけばいい、それだけの話だ)
そう自分に言い聞かせながらも、喉の奥に苦い塊が残ったままだった。
獣王国にも冒険者ギルドは一応存在する。一行は街のギルドで受付を済ませ、その夜は宿に泊まることにした。
「アクスさん・・・ごめんなさい、どうか・・・」
パルマは震える声で相部屋を希望した。
「・・・わかったよ。ただしベッドは別な」
「は、はいですぅ」
部屋に入ると、パルマは耳を垂らしながらベッドに潜り込み、やがて安眠の息を漏らした。
その姿は、ただ巣の中で震えて眠る兎のようで――アクスは胸の奥が少しだけ締め付けられる思いがした。
この街から北西に進むと王都、南西に進むとパルマの村がある。
獣王の牙は王都に用があるそうなので、ここであっさりお別れ。あの怪しい雰囲気は何だったのか。
「じゃぁ、またギルドでな、道中気をつけろよアクス・・・と、パルマ・・・」
「あぁ、護衛助かったぜ、またな!」
「はい、さようならですぅ」
ライガルは何か言いたそうな、もどかしい雰囲気を醸しながら去っていった。とりあえずライガルにパルマを襲う気は無い、少なくともアクスの前では。
食刑について
現国王が思いつきで決めた最悪の制度です。巡回の兵士が罪人を見つけた場合、その場で拘束し、罪状を読み上げ、その場で刑を実行して良いというもの。その方法は、その場で兵士がその罪人を文字通り食うというもの。どうせ罪人は草食だし、裁判になった時点で有罪なのは変わらないのだから、いちいち王が裁定するのが面倒になりその場で処理してしまえば良いという勝手な考えで制定されました。
食い残しのおこぼれは周囲の国民がありつけるので特に獣人国民からの反対も無く、草食獣人の反抗は当然無視され、その結果、兵士の腹が減ったから、食いたい獣人がいるからという理由だけで罪をでっち上げ、その場で無理やり食刑を実行するという蛮行が相次ぎ、国の治安は更に低下していくのでした。
人物イメージ画像一覧はコチラ
https://ncode.syosetu.com/n1501lc/
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