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第75話:『内の影、外の影』

毎日18時投稿!・・・予定です(なるべくがんばります)

 王城の大扉が開かれると、赤絨毯の先に黄金の玉座。その上に静かに座すのは、威厳と知性を兼ね備えた王エリオス。隣には慈愛を湛えた王妃セレフィナ、そして整った顔立ちに真っ直ぐな眼差しを宿した第一王子アルディスが控えていた。


 玉座の間へ歩み入ったアクスたちは、一斉に膝をつく。高い天井に吊るされた燭台が炎を揺らし、磨き込まれた石床に影が滲む。


 最初に進み出たのはルーシェリア王女だった。背筋を伸ばし、真摯な声で告げる。


「父上、母上。ダークエルフの元奴隷を、無事に里へお返しすることができました」


「そうか・・・よくやったな、ルーシェリア」


 国王の低く温かな声が広間に響く。その瞬間、王妃が小さく微笑み、緊張にこわばっていた王女の肩から少し力が抜けた。


 次いで、外交官トーカが一歩前に出て眼鏡を押し上げる。


「リュミエール森国との条約は、陛下のご希望通りに纏まりました。女王セレヴィア陛下も快くご承認くださいました」

「うむ・・・よくやってくれた」


 王の頬がわずかに緩む。だがその直後、国王の視線がアクスへと注がれた。


「して・・・なぜそこにアクスがいる?」


 最後の伝聞では、アクスが受注不可となり、代わりにBランクの女冒険者が護衛についた――そう告げられていたはずだ。


 玉座の上から鋭い視線を浴び、アクスは心臓がひとつ強く打つのを感じた。


(やっぱそうなるよな・・・)


 王女は気まずそうに口を開いた。


「その・・・クライムサミットという女性だけの冒険者を雇いましたが、大変素行が悪く、どうにも信用できませんでした。そこで森国で偶然再会したアクス様に、護衛をお願いしたのです」


「・・・なるほどな」国王は重々しく息を吐く。


 場の空気が少し落ち着いたところで、オルディスが一歩進み出た。深い皺の刻まれた顔には、老練な戦士の誇りが漂っている。


「お初にお目にかかる国王陛下。我の名はオルディス、ダークエルフの長として此度の件、申し上げる」


 その声は低く、だが鋼のように響いた。


「我らの里の洞窟からは、闇の魔力が絶えず吹き出しておった。それを魔晶石で封じていたのじゃが・・・クライムサミットがそれを盗み出したのじゃ」


「なに・・・!」玉座の間がざわめく。


「結果、魔力が暴発し、さらに運悪く居合わせた魔人が魔力を取り込み暴れ回り・・・里は壊滅した。直接の破壊は魔人じゃが、原因を作ったのは彼奴きやつら。どうか厳正な裁きを!」


 国王の双眸そうぼうが鋭く光った。


「うむ、その件については報告を受けている。すでに余罪も多数確認されているそうだ。すべて揃い次第、裁きの場へ引き立てよう」


 オルディスは深く頭を垂れ、広間に重い沈黙が落ちる。


 その静寂を破ったのはアクスだった。


「陛下・・・魔人は討伐しました。しかし、ダークエルフたちは里を失い、行き場がありません。今は一旦仮の拠点に預けていますが・・・いずれ正式な拠点を整える必要があるでしょう」


 アクスは一呼吸置き、真っ直ぐに国王を見据える。


「そこでお願いがあります。彼らを、王国の隠密隊として採用していただけないでしょうか。これは今回の護衛の報酬と考えて頂いて構いません」


 オルディスも静かに続ける。


「我らは魔人から里の民を救って頂いたアクス殿に忠誠を誓いました。それでも良いと仰るなら・・・仕事として、王国のために働きましょう」


 玉座の間に、また重い沈黙が落ちた。やがて国王が口を開く。


「・・・隠密頭領、これへ」


 どこからともなく現れたのは、鋭い眼光を放ち、筋肉で固められた男――隠密隊頭領ガルドン。腕を組み、無言でこちらを睨み据える姿は、まるで獣が敵を値踏みするようだ。


「この者が隠密の頭領だ」国王の紹介に、ガルドンはただ鼻を鳴らす。


「まずはダークエルフの力、我が目で確かめさせてもらおうか」


 その瞬間だった。


「・・・腕組みとは、随分と余裕じゃな」


 ゾクリと背筋を撫でる声。気づけばオルディスがガルドンの背後に立ち、首筋に鋭い刃を当てていた。


「なっ・・・!? いつの間に!」


 広間がざわつく。よく見ると、オルディスが立っていた場所には別のダークエルフが影のように佇んでいる。


 さらに――柱、天井、玉座の裏・・・そこかしこに潜んでいた王国の隠密たちが、次々と影から現れたダークエルフたちに押さえ込まれ、武器を奪われ、床へと叩き出されていく。


「・・・っ!」抑えた呻き声とともに倒れる隠密たち。


 だが次の瞬間、ダークエルフ達は音もなく影へと沈み、一瞬存在そのものが霧散するかのように姿を消したかと思ったら、即座にアクス達の背後に整列する。余裕の笑みを浮かべるオルディス、愕然と目を見開くガルドン。国王は顎に手を添え、じっとその光景を見つめていた。


 圧倒的な実力差――それは言葉ではなく、たった一瞬の動きで証明されてしまった。


 王は短い沈黙の後、重々しく口を開いた。


「・・・なるほど。今の一手でよくわかった。お主たちの実力は疑いようもない」


 玉座の上から、広間全体を見渡す。その眼差しは鋭く、けれどもただ戦力を欲するだけの王ではない、国を背負う者の深い思慮が滲んでいた。


「だが――」


 その一言に場が引き締まる。


「力だけでは我が国の隠密は成り立たん。とはいえその力、みすみす手放す訳にも行くまい。ではこうしよう、隠密の外援部隊を新たに新設する。内と外、二つの影とするのだ」


 王は玉座の肘掛けに手を置き、ゆるやかに言葉を紡いでいく。


「王国隠密――すなわち〈内影ないえい〉。お主らは城を、都を、民を護る“王の刃”。忠誠と自己犠牲、その血によって築かれた壁だ。裏切りを疑わぬのは、お主らの”国よりも先に死ぬ”覚悟があってこそ」


 倒れ込んだ隠密たちは悔しさを噛みしめつつも、その言葉に小さく拳を握りしめる。王に誇りを認められたからだ。


 王は次に、オルディスとアクスの背後に並ぶダークエルフたちへと視線を移した。


「そして・・・そなたらは〈外影がいえい〉。森を抜け、山を越え、闇の只中に潜り込む者たち。種族の特性を生かし、他国の闇を覗き、敵地であろうと生き抜く。外の影として、王国に新たな目をもたらすだろう」

「・・・外影、か」オルディスの瞳が細められ、低く呟く。

「うむ。お前たちはアクスに忠誠を誓っている。ならば王直属の刃にはなれぬ。だがそれでよい」


 国王は静かに微笑んだ。


「忠誠の形は違えど、両方が必要だ。内の影が国を支え、外の影が国を広げる。二つの影が揃ってこそ、我が王国は盤石となるだろう」


 広間に沈黙が満ちる。だがそれは疑念の沈黙ではなく、重厚な言葉が胸に沁み渡った後の静けさだった。


 王子アルディスが感嘆の声を漏らす。


「・・・父上・・・」


 その眼差しには、ただの父ではなく「国を導く王」としての姿を見ていた。


 王は最後にアクスへと視線を投げる。


「アクス。お主が導いた“外の影”を、我が国もまた預かろう。だが忘れるな。彼らはお前の影であると同時に、この国の影ともなるのだ」


 玉座からの声は、炎に照らされた石壁に反響し、まるで国そのものが語っているかのように響いた。


 オルディスは静かに膝をつき、胸に手を当てる。


「承知した。外影の名、確かに拝命した。我らは今後、アクス殿の影にして、王国の影。望まれるままに動こう――良いな、皆のもの!」


 広間に、低く力強い声が重なる。


「「「「我ら外影、ここにあり!」」」」


 その瞬間、王城の空気はひときわ澄み渡り――新たな時代の胎動を、誰もが感じ取っていた。

お得な外影


 外部委託という形ですが、王家の影として王都の外から国外の広い範囲の諜報活動を担う外影ですが、常に全員常駐という訳ではなく、普段は最小限の人員で巡回監視を行い、不穏な動きが見えたら王に報告、適宜人員を追加投入し詳細な調査を行うというもので、余ったメンバーは常に影猫の影の世界で待機か、森で狩りをするか、里の前の広場で燻製肉を作っています。普段と変わらない生活に加え、やりがいのある任務まで与えられ、お金までもらえるのでダークエルフにとってはこの上ない条件ですが、国としても常に抱え込んでいる内影と違い、必要最小限の人件費で運用できるのでコスパ最高です。


 影に居ても余剰魔力を供給できるし、森に居てもアクスの好きな燻製肉を量産してくれるし、どこで何してても有用なダークエルフさん達。運用側としてもウィンウィンどころかオールウィンなのでした。


人物イメージ画像一覧はコチラ

https://ncode.syosetu.com/n1501lc/

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