第74話:『王女と相談、侍女の壮断』
毎日18時投稿!・・・予定です(なるべくがんばります)
森を抜け、約2ヶ月ぶりに王国へ帰ってきた。かなりの長旅だったがまだ終わりではない。王女の依頼は終わったが、クライムサミットを拘束してしまったので代わりの冒険者の護衛が必要になる。
乗りかかった船なので、そのまま王国まで王女を護衛する事にした。お礼は国王からたっぷり頂くとしよう。欲しいもの無いけど。
帰りはいつも通りサンドラを越え、泉の宿、エリシュナを経て、王都へと向かう。
サンドラに向かう途中、アクスは馬車の中で王女と話す
「王女殿下、一つお願いがあるのですが」
「はい、何でしょうか」
「ダークネスエルフの件、すみませんが秘密にして頂けないかと」
「秘密・・・ですか?」
「はい、女王と話した際にも言いましたが、彼らはこれから影に生きる者、新しい上位種が誕生したと広まれば一気に注目が集まります。そうなると彼らは目立ちすぎて仕事ができなくなるのです」
「国王陛下には何と?」
「彼らは力を抑えると肌の色が元に戻り、見た目は普通のダークエルフと同じになります。なのであくまでもダークエルフの隠密という事にしようかと」
「なるほど、そうですね・・・」王女は暫し考える。
「陛下が隠密隊にダークエルフさんをご採用なされましたら、私は秘密を生涯話さない事を誓いますわ。国益に関わりますので。同じ理由で不採用となった場合、陛下にはご報告しなくてはいけません。これは王族としての責務ですわ」
この子は本当に16歳なのだろうか。自分なら前世で30歳の頃でもこんなはっきり言えるか怪しいところだ。
「畏まりました、ではそのように、あとは・・・」
アクスは隣にいる侍女を見る。名前も知らないその侍女は常に王女と行動し、アクスが行動する時は大体手にリオルを抱えて預かってくれる。何故か雷牙も足元で転がっている。
「こちらの侍女さんも約束を守ってもらえるのでしょうか」
「ジーナ、良いかしら」
侍女さんはジーナと言うらしい。ジーナは少し考え、覚悟を決めたような表情で返答する。
「王女殿下、私は貴女が生まれた時からずっと成長を見守ってきました。僭越ながら王妃殿下よりも共に過ごした時は長いでしょう」
王女は静かに頷く。少し潤んだ目から二人の強い信頼関係を感じる・・・え、ジーナさん何歳?ルーシェと同い年かと・・・。
「しかし、私の主は国王陛下です。殿下の命とあらばこの場では従いますが、王命があればそちらを優先せざるを得ません、ですので・・・」
「・・・そうですわよね、ごめんなさい」
ジーナの少し冷たい言葉に王女は少し寂しそうだ。だが仕事に対する姿勢は立派な・・・
「・・・ですのでアクス様、私の記憶を消して頂けませんか?高ランクの冒険者様でしたらそのような魔道具はお持ちかと」
「はぁ・・・え、ええええぇぇぇっ!!!?」
「忘れてしまえば王命も何もありません。覚えていない事は話しようがありませんので」
恐ろしいことをけろっと言う。記憶を消して部外者になる事で、相反する王女と国王の命を両方全うするというのだ。ただ後ろで付き従っていただけの侍女かと思いきや、とんでもない壮断を下す肝っ玉侍女姐さんだった。
「アクス様・・・」王女は不安そうな目でアクスを見る。魔道具で記憶を飛ばすなんて普通どんな副作用が出るかわからない。
・・・まぁ、ノアなら造作もない事だ。
(だよな?)(もちろん)
アクスは魔道具風のそれっぽい物体をかざし、ジーナに向ける。その瞬間、ジーナはふっと気を失い、座席に倒れ込む。
「ジーナ!」王女が慌てて声をかける。
「大丈夫です。無くなった記憶の部分をを頭が整理しているところです。目覚めた頃には3日前、里に着く直前から今までの記憶が無くなっています。さすがにダークネスエルフの記憶だけ消す事はできないので」
実際は可能なのだが、この世界の魔道具にそんな便利な機能が無い為、スペックを合わせる必要があるのだ。
どさくさに紛れて王女の記憶を消しても良いんだが、理由を説明できないし、不測の事態が起きた時に口裏を合わせてくれる人物を残しておくのは悪いことではない。
そんな事がありつつ、アクス達はサンドラを経てエリシュナに帰還した。王女を王都まで送っていかないといけないのだが、どうせ一泊するし、その前にクライムサミットの件をギルマスに報告しなくてはいけない。事前にサンドラのギルドでこちらに伝文を送っていたのでスムーズに話が進むだろう。
エリシュナのギルドに着くと、いつもは豪快なガルドが青ざめた顔で登場した。彼女らを護衛に推薦したのは他でもないガルドらしい。まぁいきなりの依頼だったし、女性だけの高ランク冒険者なんてそうそういないから仕方ないのだが・・・。
表向き特に悪い噂は聞かなかった彼女らだが、拘束されたという話が広まった途端あれよあれよと被害報告が殺到した。低ランクの冒険者らを脅し、口を封じて小銭を搾取するコスい手を使っていたり、また手柄の横取りや盗難被害も多く、明らかに他に犯人候補がいないのに証拠が無い為泣き寝入りするケースが多数報告された。
「ルーシェリア王女殿下! この度は! 大変申し訳ありませんでしたぁーーーっ!!!」
ガルドは王女の前で土下座。額を地面打ち付けガンッ!!という音がギルド内に響く。この世界土下座の文化があったのか。奴隷の平伏とは少しスタイルが違うので見たことは無かった。
王女はガルドに頭を上げるよう言い、むしろ突然の依頼に無理な条件をつけてしまった事を謝罪した。事前にアクスが王女に今回の依頼内容の理不尽さを解いていたのだ。ノアの入れ知恵で。
という訳でガルドは不問。クライムサミットは諸々の証言が集まり次第王都で裁判が開かれるだろうとの事だ。とりあえず王都まで運んであとは任せよう。魔晶石の件は謁見の時にダークエルフの村長に証言してもらえば事足りるだろう。石を盗んだ事をギリ未遂としても、その結果魔人に力を与え里を壊滅させた原因を作った罪のほうが遥かに重い。
翌日、一行は王都へ、宿場街を経由し、6日かけてようやく城壁が見えてきた。
長旅の果てに王女を護送し、ひとまずの任務は終わった。だがアクスにはまだ課題が残っている。
――ダークエルフの力を、国王はどう裁くだろうか。
影に生きる彼らが、王国を守る刃となるのか。あるいは秘密のまま、アクスの配下として影に潜み続けるのか。
「ま、いつも通り流れとノアに任せるだけだな」
蹴伸びをしつつ馬車に身を預ける。
旅は一区切りついた。しかし、次の物語はもう始まりかけていた。
人物紹介:ルーシェの専属侍女ジーナ
年齢22歳。4歳の頃から侍女として英才教育を受け、6歳でルーシェが産まれた時から専属侍女として付き従って来た。代々王家の従者を継ぐ家系で、母はメイド長、父はあの何も動じない執事長である。サラブレッド侍女として生きる彼女だが、表向き国王に忠誠を誓いつつも、産まれた時から見守り続けている王女には並々ならぬ想いがあり、いざという時は王命を無視してでも王女に付くと心に決めている。
王女の御付き以外では隠密隊で戦闘訓練を受けており、結構戦える。隠密隊の現状も理解しており、今回のダークエルフ追加については歓迎の意向を示したいが、侍女に意見を求められる事はないので、隠密隊と王女の力になれるなら多少の副作用も厭わないという意思のもと、記憶消去を提案する。
人物イメージ画像一覧はコチラ
https://ncode.syosetu.com/n1501lc/
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