第73話:『女王へ報告、森国の法律』
毎日18時投稿!・・・予定です(なるべくがんばります)
サロンでの謁見は、アクス、王女、長老、トーカ、セクト、後はクライムサミットを代表して縛られたミサンド。リオルと雷牙もいるが姫との遊び相手だ。
扉の先には女王と姫。リオルを背に乗せた雷牙が姫に駆け寄る。姫は王女をじっと見つめ、何かを悟ったように一礼し、サロンの端で子獣たちと遊ぶ。
「ごきげんよう女王陛下、姫様の成長は著しいですね。」
「あぁ、感情一つでこうも変化をもたらすのかと日々驚いているよ」
全員がソファーに座る中、跪く者が一人。
「お初にお目にかかる、ハイエルフの女王陛下。我は”ダークエルフ族”の長、オルディスと申す」
「ふむ、よくぞ参られた、ダークエルフの長よ。面を上げ座るが良い」
オルディスも席につく。ミサンドは後ろで兵士が拘束中、こいつの話は後だ。
「して、もろもろ聞きたいこともあるが、まずは報告を聞こう」
皆で状況を説明。元奴隷は送っていった事、闇の魔力、魔人の討伐、里の崩壊、そして・・・。
「ふむ、また魔人か・・・しかし洞窟が崩壊とは不憫よな。よし、我らも里の復興の手助けとなろう。その為に長が出向いたのであろう?」
「いえ、それが、その・・・」
「何じゃアクス、ダークエルフを連れて行って和解したのであろう?妾の言うた通りではないか?」女王はしたり顔でアクスを見る。
「いえ、それどころか、ダークエルフを配下にして連れて来ちゃいました。その・・・いろいろあって」アクスは頭をかく。
「は・・・はぁ!?ダークエルフを配下に?お主のか?」
「・・・はい」
「里の一族全てか?」
「・・・はい」
「連れて行った元奴隷もか?」
「・・・はい」
「なぜそうなるのじゃ・・・」
女王は開いた口が塞がらない。
「恐れながら陛下、里の民を魔人から救い、我らが崇拝する闇の王を従えるアクス様こそ、我らの真の主に相応しいと判断致した次第。これは里の総意である」
長老が静かに語った。
「左様か。して、その闇の王とは?」
「影猫、出ろ」アクスの影が伸びる。
「ガルル・・・」虎サイズの影猫が出てくる。内包する魔力量と威圧感に女王は少し緊張する。
「おいアクスよ!なんじゃこの生物は!こんなバケモノを従えておったのか!」
「いえ、もともとは普通の黒猫だったんですが、先程お話しした闇の魔力を大量に取り込みまして、こうなっちゃいました」
「それが、ダークエルフの闇の王だと?」
「いかにも。元々我らは闇を纏う猫を里のシンボルとして愛でてきた。その猫が偉大な闇に覚醒したのを目の当たりにし、我らの王とする事に決めたのだ」
「その猫を従えるのがアクス、お主であると」
「まぁ、一応、そんなところです」
「猫・・・なのか?」
「・・・はい、一応」
「ふ、ふむ、まぁ良い。ダークエルフは元々独立したもので我らの管轄ではない。好きにせよ。それより・・・」
女王は追求を諦め、始めから気になっていた話題に移る。
(報告に無かったので敢えて聞くがアクスよ、長の魔力量、基礎ステータス、自信ある態度・・・どれを取っても洞窟で大人しくしていたあのダークエルフとは到底思えん。見た目は変わらんがまるで別種族のようじゃが?)
(え、女王陛下!?)
(念話じゃ、今お主とそちらの長にだけ繋いでおる。見た目を誤魔化しているという事はこの先の話は他の者には聞かせん方が良いかと思ってな、主となったお主は把握しておるのだろう?)
(ご慧眼恐れ入る。いかにも我らはこの度闇の魔力を大量に取り込み、ダークネスエルフへと進化したのだ!)
(ダークネスエルフとな・・・ダークエルフの上位種が居たとは初耳じゃ)
(我らも今回のケースは初めての事。種族名もアクス様にご提案頂いたものである)
(お主・・・新出の上位種に名付けをしたのか!歴史的快挙ではないか!)
「それほどの者たちを従えたとなれば、世界に名を刻めるぞ?」
女王は興奮気味だが、会話内容が元の話と繋がっているように話しだす。確かにずっと黙って念話していたら他の者が困惑する。
「いえ、基本的にダークエルフ達は表には出ず、影で暗躍し悪を成敗する存在としての活動を想定しています」
「なんじゃ、名誉を手放すというのか?」
「彼らも私と一緒で目立つのは苦手みたいで。配下となったからには守らないといけませんし」
「ふむ、主としての自覚はあるようじゃな。よしわかった、この事は口外無用としよう」
「あ、隠密部隊が必要な時はいつでもお申し出下さい。格安でお引き受け致しますよ」
「・・・考えておこう」
王女は扇で顔を扇ぐ
「いやはや、少々驚き疲れたわい。残りの件をさっさと終わらせよう。後ろの縛られとる女は何じゃ」
「王女殿下の護衛で同行した冒険者なのですが、里の秘宝を盗みましたので拘束しました。里には法が無かった為、森国の法を参考に・・・」
「知らん。お主らの国の人間の犯行であろう、人間の法で裁くが良い」
「では、王国に連行し処罰致します」トーカのメガネがキラリと光る。
ミサンドは更に顔が青ざめるも、同情どころか興味すら誰も持たなかった。
その日は宮殿で泊めてもらう。夕食までの時間アリシェ姫はルーシェ王女達とめいっぱい遊んでいる。明日お別れになるのを理解しているようだ。
夕食をご馳走になる。歓待の宴程ではないが、上品で美味しい料理を堪能する。相変わらず肉は無い。
翌朝、帰国の準備が終わり、出発の挨拶をする。姫は目に大粒の涙を浮かべていたが、以前アクスと交わした「泣かない」という約束を覚えていたようで、必死に泣き出すのを堪えている。
アクスはマジックバッグから2つの物を取り出した。一つは同じサイズのリオルのぬいぐるみ。抱き心地を重視して少しもこもこにデフォルメされている。
もう一つは子犬から二回りくらい大きい雷牙のぬいぐるみ。こちらは内部骨格をしっかり作ってあり、背に乗れる構造だ。足裏にはコロ(車輪)がついており、後ろから押してもらえば移動できるようになっている。
姫は2つのぬいぐるみを抱きしめ、笑顔でお礼を言う。花のような笑顔が別れの寂しい雰囲気を和ませた。
雷牙のぬいぐるみと姫の覚醒
雷牙のぬいぐるみに乗り、侍女に押してもらいながら遊ぶアリシェ姫。ふとテンションが上り、強めの放電をしてしまいます。その結果、金属製のコロが勝手に回り、侍女を置いて勝手に動き出しました。そこで姫は”電磁力”という概念を何となく悟り、雷をコントロールし自在にコロを動かして自力で走行が可能になります。遊びのついでに力の制御を学べて一石二鳥ですが、この能力が果たしでどのような力に覚醒するのか。リュミエールの未来は明るいですね!




