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第68話:『長の卑屈、里の秘宝』

毎日18時投稿!・・・予定です(なるべくがんばります)

 一行は、ついにダークエルフの里の洞窟入口へと辿り着いた。


 岩肌に囲まれたその場所には、数人のダークエルフが立っている。彼らは皆、無駄のない細身の筋肉質の体躯たいくをしており、身にまとうのは闇夜やみよに溶け込むような黒一色の服。だがその装いは地味さの裏に、どこか大胆な雰囲気を漂わせていた。


 女性たちの格好は特に際どい。Tバックに紐のついたブラ、まるで水着のような衣装で、衣類や薬草、果物、肉や魚といった食材を整然と並べて干している。


 男性は上半身裸じょうはんしんはだかに短いパンツ姿で、少し離れた場所で巨大なボアを解体していた。その血と肉の匂いが漂い、同行してきたエルフたちが苦々しい表情を浮かべる。


 彼らは外から来た一行に気づくと、一斉に視線を向けた。しかし、驚愕きょうがくや敵意を示すでもなく、ただ無言で注視している。


「・・・」


 代表してセクトが前に出る。洞窟の入り口で門番のように立つ戦士に声をかけると、彼らは応対こそ普通に行った。だが、その表情には険しさが刻まれており、歓迎の色は一切ない。


(・・・妙だな)アクスは違和感を覚える。

(敵意は無いんだが・・・何か、早く帰れ、とでも言いたげだ。何か隠しているのか?)


 ノアから念話が届く。(歪んだ魔力の気配を感じます。ただ、洞窟の奥にある何かが解析を阻害しているようです)


「・・・やはり今回も一筋縄ではいかなさそうだな」アクスは小さく呟いた。


 とりあえず、開放した奴隷たちを引き渡し、長老と話をしたい旨を伝えると、戦士たちは渋々といった様子で奥へ案内することに同意した。


「中に入るメンバーは厳選した方が良いな」アクスが提案する。


 外交官のトーカ、副官のセクト、護衛としてアクス自身とミサンド、そしてハイエルフの警備隊数名。


「私も参ります」王女が言い張ったが、アクスは説得した。

「殿下、あまりに危険です。まずは我々で様子を見てまいります」


 しぶしぶながら、ルーシェは外で待機することを了承した。兵士とクライムサミットの残りは、彼女の護衛に回る。影猫もいるし子犬状態だが雷牙もいるので問題ないだろう。


(・・・しかしこっちの戦力が少々不安だな)アクスは考え、不可知のカグヤとエマを同行させた。狭い場所での戦闘が不向きなミレイユとヴァネッサはアークに残す。


 洞窟に入ると、内部は意外にも広大で、アリの巣のように枝分かれした通路が幾重にも続いていた。空気はひんやりと湿り、明かりは乏しく、少し気を抜けば迷子になりそうだ。


 やがて奥に進むと、小さな広場に出た。そこには簡素ながら玉座のような椅子が置かれ、その上に一人のダークエルフ――長老が座っていた。髭をたくわえた顔立ちは威厳があるが、首には二匹の大蛇がマフラーのように巻きつき、双頭が不気味に左右から覗いていた。


「・・・外の者などに用は無い!」挨拶をする間もなく、長老は叫んだ。

「用が済んだらさっさと帰れ! 我らを見下すな! 関わるな!」

(いきなり何だよこの爺さん・・・話になんねぇ)アクスは辟易するも何か違和感を感じる。


「なんだと・・・!」ミサンドが憤慨する。

「奴隷を解放して連れてきてやったのに、その態度は恩知らずにも程があるってもんさね!」

「長老様、我々は貴方がたを見下してなどおりません」トーカが毅然と言う。

「奴隷も対等に扱い、怪我も癒しました。貴殿らの文化も尊重したい。しかしその態度は、あまりにも不当ではありませんか」

「黙れぇ!」


 長老は苦悩の表情で頭を抱え、うわ言のようにぶつぶつと呟き始めた。――いや、違う。その声は、首に巻かれた蛇から発せられていたのだ。


「憎め・・・妬め・・・外の者はお前たちを見下している・・・拒絶しなければ滅ぼされるぞ・・・」


 そのささやきとともに、長老の身体から闇のオーラが漏れ出す。


 アクスはすぐに懐から光の魔石がついた魔道具を掲げ、エマに念話を飛ばした。

(エマ、やれ!)


「<解光かいこう>!」


 エマが詠唱し、白い光が洞窟に満ちる。その光を浴びた瞬間、長老の身体を覆っていた闇が霧散し、蛇たちは「ギャヒャアァァ!」と奇怪な叫び声を残して消え去った。


 長老ははっと正気に戻り、膝をついて深く頭を下げる。


「・・・すまぬ。広間に珍しい蛇が迷い込んだと思ったのだが、気が付けば負の感情に呑まれておった・・・助かった」


 外の者を拒絶していた長老が一転して謝罪すると、周囲のダークエルフたちは安堵あんどの息をらした。


「すまない、外の者、そなたらを拒絶する気は無かったのだが、長老があの様子だったのでな」


 話を聞いて見ると彼らは、エルフはもちろん、他の種族すらうらやみ、劣等感れっとうかんを抱いているらしい。特に自分たちにはこれといった強みがなく、他種族と関わっても見下されるだけ、暗い洞窟で地味に生きるしかない――そう思い込んでいたのは確か。


 言葉を話す不思議な蛇に、その心の隙を突かれ、闇に飲まれてしまったのだという。


(なるほど・・・あの蛇どもは“ダークエルフの劣等感れっとうかん”を利用していたのか)アクスは眉をひそめる。


 アクスは腕を組み、長老を見据える。


(・・・まぁでも、話は通じそうだ。問題は、この劣等感をどう処理してやるか、だな)


「ダークエルフの力は無駄なんかじゃないぞ」


 アクスは前に出て、落ち着いた声で告げた。


「夜行性で闇に紛れやすく、闇魔法に特化している。隠密や諜報には最適だ。王国にも隠密部隊があってな、もっと強化が必要なのが現状だ。実は今、アルケシア王国の第一王女殿下がここに来ている。もし精鋭を派遣すれば、王国からの庇護ひご援助えんじょも受けられるはずだ」


 長老達の目が見開かれる。これまで「自分たちには何も無い」と思い込んでいた彼にとって、その言葉は胸をいたのだろう。


「・・・我らの力が求められる場面がある、というのか?」

「・・・我らに・・・活躍できる場所がある、というのか?」


 その声には、かすかな震えと期待が入り混じっていた。


「もちろん!」アクスは頷いた。

「今まで閉ざしていた殻から出れば、きっとその力は求められるさ」


 安全を確認したアクスは、外に待機していたルーシェを呼び寄せた。王女は一行の説明を受けると、目を輝かせる。


「まあ! それは素晴らしいお話ですわ! 隠密部隊の強化は国の課題でもありましたの。ダークエルフの皆様のお力をお借りできるなら、これほど心強いことはございませんわ!」


 長老は深く息を吐き、頷いた。険しかった表情が少し和らぎ、周囲のダークエルフたちの目にも光が戻っていく。


「・・・ならば我らも力を尽くそう」


 その夜は、奴隷解放と王国との盟約の前祝いとして、里全体を巻き込んだ盛大な宴が開かれた。


 焚き火の赤い炎が洞窟の広場を照らし、香ばしい匂いが漂う。ダークエルフたちは誇らしげに、自慢の料理を振る舞った。


「うおっ・・・これは、すげぇな」


 アクスは思わず声を上げた。目の前に並べられたのは、塩で漬け込んだ肉を煙で燻した保存食――燻製。だが一口噛んだ瞬間、その旨味と香ばしさに衝撃を受けた。


「これまで食った肉料理の中で一番美味い・・・!」


 前世の頃から大好物だった”燻製肉”、キャンプで仲間と桜のチップを焚いて作った記憶が蘇る。

 だが、味付けは塩のみで、さすがに単調だった。そこでアクスは王国から持参したスパイスやハーブを取り出した。


「これを試してみないか?」


 ダークエルフの料理人たちは目を丸くしたが、すぐに真剣な眼差しに変わる。香りを嗅ぎ、少量を舌にのせると、瞬時にその特性を理解したのだろう。次々と調合を始め、あっという間に数種類のミックススパイスを作り出した。


 その場で肉に振りかけて焼き上げると――。


「な、なんだこれ・・・めちゃくちゃうまい!」

「すごい! さっきよりずっと複雑で、香りが広がる!」


 場がどっと沸き立ち、宴はさらに盛り上がっていった。


「明日は最初から肉をスパイスと塩に漬け込んでみよう!」


 ダークエルフたちは目を輝かせ、次々と意見を交わしている。その表情は明るく、暗い洞窟に生きる種族とは思えないほど楽しげだった。


 やがて酒も進み、場の空気が和やかになったころ、長老がふと思い出したように立ち上がった。


「・・・そうだ。せっかくの縁だ、お前たちに我らの秘宝を見せよう」


 そう言って彼が座っていた椅子の後ろを示すと、そこには大きな闇の魔晶石が置かれていた。


「これは・・・」アクスは思わず目を見開く。


「洞窟の地下から闇の魔力が漏れ出しておってな、石で封じたところ、魔力が宿ったのだ。さらに里で一番大きな魔晶石を置いた途端、魔力を吸い込み、日に日に結晶が成長していく。我らダークエルフは闇の魔力を取り込みやすい体質ゆえ、これが力の源となっている。だが、濃すぎる魔力を直接浴びれば心を蝕まれる・・・だからこうして石を通して扱っているのだ」


 長老は誇らしげに語り、周囲のダークエルフも静かにうなずいていた。


 だがその場の片隅で――クライムサミットの面々が、互いに視線を交わしながら、怪しい笑みを浮かべていたことに、その場の誰一人として気づいてはいなかった。


 宴は夜遅くまで続き、一行は里の空き部屋に泊めてもらうことになった。アクスはセクトと同室となり、目の前でアークに転移する訳にもいかないので、折角の機会として王都の様子や人間への印象などを語り合いながら眠りにつく。


(・・・たまにはこういう日も、悪くないな)


 そう思いながら、アクスは静かに目を閉じた。

ダークエルフの過去と未来


ダークエルフは元々エルフでしたが、その中でも闇に適性がある者が”何か悪そう”という勝手なイメージで国から迫害され、洞窟に追いやられたのが始まりです。その歴史は長く、エルフといえど当初はリテラシーも魔法知識も乏しく、闇は悪という理不尽な偏見によりはじき出されてしまいました。闇適性のエルフのみが集まり、子を成していった結果、闇適性が更に顕著になり、洞窟の闇魔力を少しずつ浴びる事により身体の色も闇に染まっていったのでした。


 では、ダークエルフにハイエルフはいるのでしょうか・・・ダークハイエルフ?ハイダークエルフ?はてさて・・・。


人物イメージ画像一覧はコチラ

https://ncode.syosetu.com/n1501lc/

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引き続き次回作もお楽しみ下さい♪

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