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第67話:『ダークエルフの事、気が利くノアの仕事』

毎日18時投稿!・・・予定です(なるべくがんばります)

 ダークエルフの里までは、通常であれば馬車で四日の距離にある。


 もちろん直通の街道など整備されているはずもなく、向かうには<転移門てんいもん>を利用するしかない。


 だが、さすがに森国とダークエルフの里を直通させるなど危険すぎる。そこで森国王都から伸びる街道のうち、最も里に近い街道を起点とし、そこから転移する段取りとなっていた。


 事前調査で、里から歩いて数時間の位置に、木々が生えていない広い土地が見つかっている。エルフたちが整備してくれたおかげで馬車でも入りやすい空間となり、一行はまずそこまで馬車で進むことになるのだ。そこから先は徒歩で里まで向かう。


 深い森を抜け、転移を挟み、さらに徒歩で――およそ一日ほどで到着できる算段らしい。


 アクスは揺れる馬車の窓から森を見やりながら(なるほどな・・・。こうして聞くと、ダークエルフの里は意図的に隠されているようなものだな)と考えていた。


 森は相変わらず濃く、外界からの視線を遮るかのように枝葉が覆い尽くしている。エルフの協力が無ければ、決してたどり着けない道筋。自然が結界となり、外の者を寄せ付けない。


 王女の馬車の中でも、護衛の冒険者たちの間でも、少し緊張が走っていた。

 未知の種族、交流のない隣人。そこへ向かうのだ。


 女王から伝え聞いた情報と、ノアがいつの間にかスキャンしていたリュミエールの古書こしょ、さらには移民いみん達の鑑定かんてい結果を総合していくと、次第に<ダークエルフ>という種族の輪郭りんかくが浮かび上がってきた。


 彼らの外見は、浅黒あさぐろい肌に漆黒しっこくの瞳、真っ直ぐに流れる黒髪。そして長くとがった耳。どこか地球でいう北インドや中東を思わせる、精悍せいかんで整った顔立ちをしている。


 里の場所は、森国しんこく王都おうとから南西に馬車で四日の距離にある、山脈さんみゃくの手前に口を開ける巨大な洞窟どうくつ。その立地は<ノルガルム>に近く、彼らは鉱石を掘り、鍛冶かじ治金やきん細工さいくの加工を生業なりわいとしていた。


 もっとも、洞窟にこもるだけではなく森に出て狩猟しゅりょう採取さいしゅも行い、肉を食すことにも抵抗はない。生活様式は一見するとエルフとドワーフの“いいとこ取り”とも言えた。


 だが実際には、そのどちらにも及ばない。

 鍛冶の腕はドワーフに遠く及ばず、狩りや採取の技術はエルフに劣る。器用貧乏とまでは言わないが、やや中途半端な印象はぬぐえなかった。


 魔法の素養そようは持つものの、相性は闇属性にかたより、汎用性はんようせいに欠ける。悪ではないため聖属性が致命的な弱点というわけではないが、基本的に夜行性であることもあって光との相性は悪かった。


 現在リュミエールとの交流は一切なく、かといって血で血を洗うような争いをしている様子もない。敵対とも友好とも言えない、不思議な距離感。


(文化や風習、好みの類いに至っては資料が全く無い・・・。本当に何百年も近くに住んでいながら、交流ゼロってどういうことだよ)


 アクスは違和感を覚えざるを得なかった。


 しかも、護衛についたその日にいきなり王女の馬車に呼ばれたせいで、肝心のダークエルフ移民いみんと直接話す機会すらない。王女の話を聞く“装置”と化したまま、アクスは流されるように馬車へ乗せられ・・・。


 そして一行は、気が付けば、ダークエルフの里の手前にある広場へと到着していたのである。


 ここから先は馬車では進めないため、徒歩での移動となる。


 アクスは軽く伸びをしながら馬車を降り、装備の確認を済ませる。護送車の扉が開き、中からぞろぞろとダークエルフたちが姿を現した――その瞬間、アクスは重大な事を思い出す。


(あっ! 欠損部位治してないや・・・!)


 帝国で奴隷にされていたのだ。森のエルフたちと同じように、手足を失った者がいてもおかしくはない。そのまま送り届けたら・・・いや、下手をすれば感謝どころか恨まれる可能性もある。


(・・・今から戻るか? いや、それとも――)

(ご心配なく)ノアの念話が静かに割り込んでくる。

(欠損、なかったか? いや、移民を受け入れた時、何人かいた気がするんだけど・・・)アクスは心の中で眉をひそめた。


 疑念を抱えながらも護送車を見やると、降りてきたのは驚くほど健康そうな者ばかり。欠損どころか、顔色もよく、歩きぶりにも不自然さがない。


(・・・記憶違いか? でも王国に欠損部位の修復技術はまだ無かったはずだし・・・)


(先日、セレネさんの欠損を治したハイエルフの治癒師がおりましたので、その方の意識を少しだけ操作し、ダークエルフのもとへと足を運ばせ、修復していただきました)


 ノアの澄ました声が答えを告げる。


(・・・さすが万能シゴデキ。手際が良すぎて逆に怖いよっ!)

(ありがとうございます)


 これなら歩きの移動も問題ないし、第一印象で余計な不信を抱かれる心配もない。アクスは内心で胸を撫で下ろした。


 ただ――この鬱蒼とした森の中を大人数でぞろぞろ歩くのは、正直なところ不安だ。いや、何より疲れる。


(雷牙・・・は今、子犬状態か。さすがにここでデカくするのはマズいな)


 そう心の中でつぶやき、アクスは腰に下げていた笛を取り出した。フィーーーーーーー、と軽快な音が森に響く。


 ちなみにこの笛、ただの笛である。実際に動かしているのはノアで、森の狼たちはすべて雷牙の配下。音を合図に、必要な数をノアが手配してくれる仕組みなのだ。


 ほどなくして、木々の影からフォレストウルフの群れが現れる。灰と緑の混じった毛並みを揺らしながら、静かに整列する姿は迫力満点だった。


「一人一匹、余裕で足りるな、皆さん!移動はこいつらに乗って行きましょう!大丈夫です!魔道具で操作してますから!」


 アクスの言葉に兵士達は動揺しつつも、王女が躊躇ちゅうちょ無くひょいっと乗ったのを見て、慌ててウルフに乗り出す。


 ダークエルフ達は何も言わず言われた通りに淡々と乗っている。


 クライムサミットも顔を引き攣らせながら何とか全員搭乗した。


 ウルフに乗った一行は、エルフの先導で森の中を進む。相変わらずエルフの森を進むスピードは凄まじい。ウルフもついていくのがやっとだ。


「さすが森の民・・・しかしあの速さは一体どうなってんだか・・・」


 アクスが苦笑しながら呟いた頃には、一行はもう山脈の手前に辿り着いていた。

 そこに口を開けるのは、巨大な洞窟。


 ――ダークエルフの里、その入り口である。

アクスと魔道具


アクスは事あるごとに何かしらのアイテムを使っていますが、アクスは魔道具を1つも持っていません。笛はただの笛ですし、バッグはただのバッグです。アクスの動きに合わせてノアが何かしらやっていますので、全てノアの能力です。まぁ、ノアを一つの高性能魔道具と考えれば持っていると言えなくもないですが・・・神に創られた万能の従者、ノアとは一体・・・何なんでしょう?


人物イメージ画像一覧はコチラ

https://ncode.syosetu.com/n1501lc/

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