第65話:『王女のミッション、女性のパーティー』
毎日18時投稿!・・・予定です(なるべくがんばります)
「では、私の依頼を受けて頂けますよね?」
「・・・はい」
王女の圧に負け、依頼について話を聞く。
とはいえ、指名依頼なら本来は森国までの護衛任務だったはず。いまさら受ける意味はない。だが、さっきの話からすると・・・。
「依頼とは何でしょう、まぁ大体想像つきますが」
「はい、ダークエルフの里まで護衛をお願いします♪」
「・・・一応聞きますが、今回は護衛の兵士や冒険者はお連れでは?」
「えぇ、同行して頂いておりますが、アクス様がいると何かおもしろ・・・いえ、良い事が起きそうですので」
(どんな理由だよ・・・)
「はっはっは! 正しく同意じゃ。なんならダークエルフと和解なぞしてくれても良いのじゃぞ?」セレヴィア女王までノリノリで煽ってくる。
「そんな都合よくいく訳ないじゃないですか。王女殿下、今回私は付いていくだけでいいんですね?」
「はい、ありがとうございます♪」
(まだ受けるって言ってねーよ!)
こうして、半ば押し切られる形でダークエルフを里まで連れていくミッションが決定してしまった。
「では、交易品目の詳細はこちらの外交官であるトーカ達とお話しください。私はここで失礼させて頂きますわ」
王女は席を立ち、サロンを後にするかと思いきや――後ろの侍女からポンチョと手袋を受け取り、素早く身に着けた。
「お待たせ致しました、アリシェ姫。さぁ、いらっしゃい♪」
ルーシェは満面の笑顔で両手を広げる。アリシェの表情がぱぁっと輝き、その懐に走って飛び込んだ。きゃいきゃいと再会を祝う二人はとても嬉しそうにはしゃぎ合う。
「これ娘達、商談の邪魔じゃ。アリシェ、遊ぶなら部屋に皆を連れて行け」
女王の言葉は威厳に満ちていたが、どこか優しい響きがあった。
「はーい! ルーシェ、行こう!」
「はい、アリシェ」
二人の姫は仲良く手を繋いで扉へ向かう。
「ぴぃ!」
「まぁ、かわいいドラゴンちゃん」
「リオちゃんっていうの!」
「わんわん!」
「あら、こちらのワンちゃんは?」
「んーわかんない」
「わんっ!?」
・・・少し心配になる会話を残しつつ、二人は雷牙とリオルを連れて楽しげに去って行った。
アクスもその隙を見計らい、そっと腰を上げてサロンを抜け出すのだった。
宮殿の外に出ると、そこには王国からやって来た多数の護衛と、まるで小さな屋敷のように立派な護送車が並んでいた。
移動用どころか、そのまま宿泊まで出来そうな豪奢な造りだ。
その護衛団の中に、見覚えのある冒険者パーティの姿もあった。
(・・・たしか、Bランクだったはずだが。王族の護衛を務めているってことは、Aランクに昇格したのか?)
アクスがそう考えていると――
「あー! 無能の英雄がいるー! なんでー?」
いきなり冒険者の一人から声をかけられた。その一言で理解する。こいつら、絶対めんどくさい・・・。
(うわー・・・見つかったー・・・)アクスは心の中で頭を抱える。
軽く会釈だけして、その場をやり過ごそうと背を向けたが、肩にガチリと重いガントレットの重みが加わった。
「おいおい、こちらが挨拶してんのに無視とはつれないじゃないかい?」
(挨拶された覚えも無視した覚えもないんだが)
「・・・あぁ、奇遇だな。えーと、あんたらは・・・」
「そういやまともに会話すんのは初めてだったねぇ。アタシらはB級冒険者――」
「「「「「クライムサミットさ!」」」」」五人が声を揃えて名乗りを上げる。
クライムサミット――女性だけで結成された五人組の冒険者パーティーで、登録から十年を数えるベテランだ。
登録して一年も経たない無能力の新人がランクを追い抜いたとなれば、面白く思われないのは明白。
だからこそ、アクスは今まで会話を避けてきたのだが・・・とうとう絡まれてしまった。
「アタッカーのフェイムだ、よろしく」寡黙な剣士。大剣を背負い、雰囲気はどこかカグヤを洋風にしたような印象。
「テイマーのアンネス、こっちはフーちゃん、よろ」言葉は少なめだが服装はカラフルで目立つ。従えているのはウインドウルフ、属性持ちとは珍しい。
「魔法担当のミニスでーす! 無能くん、よろぴ☆」紫のローブに大きなとんがり帽子、杖を携えた典型的な魔法使いスタイル。さっきアクスを見つけたのはこいつだろう。
「ヒーラーのスートです・・・よろしく」白いローブにワンドを持つ姿は、どことなくエマを思わせる。しかし彼女と違い、どこか陰のある根暗な印象を漂わせている。
「そしてアタシがタンクでリーダーのミサンドさね! 覚えときな!」身長は優に一八〇センチを超えるだろうか。大柄で筋肉質、大盾とフルプレートで身を固め、見るからに重量級。
アクスは内心ため息をつきながらも、適当に挨拶をしてその場をやり過ごそうとした。だが、次の瞬間――
「そーそー無能君聞いてよー、アタシ達の今回の護衛対象ダークエルフなんだよー☆」
「ねーほんとやだー、あの地味で黒いやつら、テンション下がるわー」
「肌も髪もぜーんぶ真っ黒。夜になったら見失っちゃうよね・・・」
「炭かと思って燃やしちまうところだったさね」
「・・・正直、気持ち悪い」
こちらの挨拶をさせる暇もなく、嘲笑交じりの声が飛び交う。
アクスの表情が一瞬で凍り付いた。
「・・・おい」
その声は低く、周囲の空気を震わせる。
「生まれつきの容姿を馬鹿にするんじゃねぇ」
クライムサミットの面々は一瞬たじろぐが、すぐに顔を歪めて反論する。
「はぁ? 無能のくせに生意気だね」
「そーよそーよ!パイセンに敬意を示しなさいよー☆」
アクスは鼻で笑った。そして静かに、懐から一枚のカードを取り出す。
「・・・俺のランクはAだ、高ランクの冒険者には敬意を示した方がいいぞ」
冒険者カードを掲げると、五人の顔色が一気に変わった。
「っ・・・!」
「ま、マジでAなんだ・・・」
驚愕に息を呑む彼女ら。だがすぐに、取り繕うように口を尖らせる。
「ど、どうせ偶然か、汚い手でも使ったんだろう!」
「そうよ、運が良かっただけじゃない!」
アクスの口元に、不敵な笑みが浮かんだ。
「少なくとも・・・お前らごときよりは強いさ」
挑発の言葉に、五人の顔が一斉に赤く染まる。
「へぇ、だったら――試してみるかい?」
ミサンドが大盾を構え、地面を鳴らした。
「模擬戦だ! 無能の英雄様の実力、見せてもらおうじゃないさね!」
こうして、アクスとクライムサミットの模擬戦が始まろうとしていた――。
(さて、さすがにBランク5人相手は厳しいな。とはいえ美従士を出すわけにもいかないし、これから一緒に護衛するんだから倒すわけにもいかない。ノア、どうしよ?)
(ではこうしましょう・・・)
冒険者ランクの差
冒険者のランクは単純な戦闘力では測れませんが、一応強さとしての目安はあります。大体1個上のランクの冒険者を倒すにはそのランクの冒険者5人が必要とされており、ソロのAランクと5人パーティのBランクであれば互角かBランクの方が勝ちます。それを踏まえての彼女たちの勝ち気な態度なのですが・・・果たして彼女たちはアクスに勝てるでしょうか(フリ)。
人物イメージ画像一覧はコチラ
https://ncode.syosetu.com/n1501lc/
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