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第64話:『エルフの闇、ルーシェの圧』

毎日18時投稿!・・・予定です(なるべくがんばります)

 ガルザーは王城に残ることとなった。爵位授与式があるということで、アクスたちとは王都で別れることになる。


「アクスよ。貴殿が居なければ今頃、竜国はどうなっていたか分からん。・・・心より感謝する」

「いやいや、俺はただ流れで動いただけだし。あとはしっかり王様から階位もらっとけよ」

「ふん、階位など・・・」と渋い顔をしつつも、どこか照れ隠しのようにガルザーは視線を逸らす。


 アクスはリオルを腕に抱え、チャリオの馬車に乗り込んだ。目指すはリュミエールの森。

転移で行ってしまえばすぐだが、竜国にはしばらく来ることもない。ならば景色を堪能しながらの旅路も悪くないだろう。


「なぁ、リオル。ほら、見ろよ。遠くに竜峰が霞んでる。空が青いなぁ」

「ぴぃ~ぃ!」 無邪気な返事にアクスは思わず笑みを漏らす。


 やがて森の西が遠目に見えてきたところで、アクスはチャリオをアークへ帰還させた。代わりに呼び出したのは――雷牙。


「やっぱ森を移動するならこっちの方がいいよな。今回はフォレストウルフに偽装せず、この姿で行ってみようか。挨拶代わりにね」


 アクスの言葉に雷牙は「グルル」と喉を鳴らす。その白銀の毛並みが陽光を反射し、稲光のように煌めいた。


 森の西端へ辿り着くと、いつもの森国警備隊が立っていた。アクスを見るなり、兵士たちは背筋を伸ばし、恐縮しきった面持ちで深く頭を下げる。


「ど、どうぞお通りください! すぐに宮殿までご案内いたします!」


 転移陣が展開され、アクスたちは森国の宮殿へと案内される。 到着するや否や、朗らかな声が響いた。


「あー、アクシュ!」遠くから、姫が走り寄ってくる。未だ舌っ足らずは健在。何度も言うが手を握った覚えはない。


「ぴぃ!」リオルも彼女の声に反応し、ぱたぱたと翼を広げる。


「リオちゃん!」姫はリオルを抱き上げ、頬をすりすり。リオルも負けじと頬を寄せ合う。


――あぁ、てぇてぇ・・・その光景に、場の空気は一瞬で和んだ。


「ようやっと献上する気になったかの、アクスよ」挨拶も早々に背後から女王のセリフが飛ぶ。


「ご機嫌麗しゅう、女王陛下。ですが、リオルは私の子です。土産ではありません。絶対に譲りません」アクスは先手を打って、釘を刺した。


「ぐぬぅ・・・まぁよい。では土産はそちらのウルフでも・・・」と渋々視線を向ける女王だったが、そこで言葉を失う。


「お・・・おい、それは・・・いや、そちら様は・・・森の王フェンリル様ではないか!!?」


「あぁ、その最上位の希少種――プラチナムフェンリルだよ」


「なぁぁぁぁぁ!!!」女王の絶叫が広間に響いた。


「貴様ら!今すぐ肉を狩って来い!上質のものじゃ!早うせい!!」


「じょ、上質・・・? とは、何が上質なのでしょうか?」肉を食べないエルフ兵士たちは困惑しきって顔を見合わせる。


「いいから行けっ!!」女王が一喝すると、兵士たちは青ざめながら駆け出していった。


「ふわふわー・・・きれいねー」姫がうっとりと雷牙の毛並みに見惚れる。


雷牙が優しく顔を寄せると、竜姫の頬をぺろりと舐めた。その瞬間、雷牙の体にパチパチと青白い電流が走る。


「おい!フェンリル様が感電を・・・!」女王が声を上げたが、アクスが肩を竦めて答える。


「大丈夫です。プラチナムフェンリルは風と雷の属性を持ってますから」


触っても平気だと察した姫は、子供のように雷牙へ抱き着き、両腕でその毛並みをもふもふ。


「きもちーねー♡」絶妙な撫で加減に雷牙も気持ちよさそうにしている。


「ぴぃぃぃ!」その頭の上ではリオルが嫉妬の声を上げていたが――姫は指先ひとつでリオルの弱点を撫で、あっさり黙らせてしまった。


「な、何という魔性・・・恐ろしい子!」アクスは小声でつぶやき、思わず苦笑いするのだった。


突然、場の空気を切り裂くように伝令の兵士が駆け込んできた。


「お話し中失礼いたします。アルケシア王国よりご一行が到着されております!」


え、王国? (国交の具体的な内容を決めるための外交官かな? 何てタイミングだよ…)


「ふむ、サロンにて応対しよう。アリシェ、臨席を許可する。アクスよ、お主も来い」

「はい? い、いや、私は別にいなくても」

「いいから来い」

「・・・はい」


逃げ道を塞がれたアクスは観念し、女王と共にサロンへ向かった。


絶縁手袋越しではあるが、アリシェール姫と手を繋いで歩く。――初めての“握手”だった。姫は嬉しそうにぴょんぴょん跳ねながら進み、その姿にアクスは思わず頬を緩める。


女王セレヴィアの背後からは嫉妬めいたオーラが漂ってくる気がしたが、気付かないふりをした。


サロンに到着し、しばし待機。姫は子犬化した雷牙とリオルとじゃれ合い、笑顔を咲かせている。セレヴィア女王は奥のソファで悠然と腰掛け、アクスは手前の席で姿勢を正した。


待ち時間の間、アクスは森を通過して竜国に急行した事情を説明する。竜国での用件が終わったため帰りに立ち寄っただけであり、今回はまだ交易品を準備できていないことも素直に話した。


女王は興味を示し、竜国での出来事をもっと詳しく話せと促す。アクスはかいつまんで報告し、ガルザーが<聖水精霊せいすいせいれい>の加護を受けたことに触れた。すでに配下が泉で事実確認をしていたようで、女王も頷く。


「いやはや、精霊の加護を得る条件が“危機を救って惚れさせる”とはな。だとしたらもうその手は使えんではないか」

「いやー、条件っていう言い方はちょっと・・・それより魔人です。森の中に魔人が入り込んでいたのは・・・」

「その事については調査中なのじゃ。<神樹しんじゅ>の結界の外じゃからのう。森そのものに侵入者を阻む機能など無いのじゃ。致し方あるまいて」

「まぁ、そうですね・・・。俺からの報告はこんなところです」


アクスは立ち上がり、無邪気に戯れる子供たちの頭をわしゃわしゃ撫でに行く。


その時、重厚な扉が静かに開いた。入ってきたのは見覚えのあるような無いような文官、そして――


「「え、ルーシェ!?」」


アクスとアリシェール姫の声が重なった。


「お久しゅうございますわ、セレヴィア女王陛下。並びに、アリシェール姫殿下」


ルーシェリア王女は見事なカーテシーを披露した。だがそのそっけない態度に、アリシェの顔は曇る。


「姫、いまルーシェリア王女殿下は公務中です。ご理解下さい」

「うん、わかってる・・・」


アリシェも王族。場をわきまえるべきと理解しているようだが、目元には寂しさがにじんでいた。


「私は外交官のトーカと申します、この度正式にリュミエール森国専属となりました、こちらは副官のセクト。エルフではありますが現在はアルケシアの所属ですので敬称略にてご容赦願います・・・」


セクトも副官ではあるが外交官となって二国の橋渡しに尽力しているようだ。サロン内では国交に関する真面目な議論が交わされる。森国は全面的に従う姿勢を見せる一方、王国側は堂々と対等な条件を提示していた。さすが国王、わかってらっしゃる。


外交の品として、既製品のドレスや貴金属、先日のお披露目会で好評だった品々を多めに持参してきたという。


次に話題は帝国から解放された奴隷について。実はこれが本題だった。


亜人の中に<ダークエルフ>が二十名ほどおり、王国では彼らの住処を把握していなかったため暫定的に保護していた。今回は正式に国交が樹立されるので、先だって故郷に戻したい――それが王国側の意向だった。


「確かに我々はダークエルフの里を知っている、以前回答した通りじゃ。移民の移送も問題なかろう。しかし・・・」セレヴィアの表情が曇る。


「エルフとはいえ、我々とは別の種族という認識じゃ。今となっては我らの反省すべき点も多いが・・・長きに渡り交流した記録はない。友好的と呼ぶには程遠い関係なのじゃ」


「何か理由がおありですの?」ルーシェが丁寧に問いかける。


「わらわが生まれる前からの事じゃ。老人共は黙して語らん。・・・まぁ、素早く渡してさっさと帰ってくるのが賢明じゃろうな」

「そうですか。ダークエルフさんとも交流を広めたかったのですが・・・仕方ありません。そのように致しましょう」


サロンの空気は、やや重苦しい余韻を残したまま次の議題へと進んでいった――。


サロンの空気がひと段落したところで、ふいにルーシェリア王女が声を放った。


「ところで・・・」


その声音は穏やかだったはずなのに、途端に室内の空気がぴんと張り詰める。さっきまでの少し暗めの雰囲気が一変し、緊張感が一気に跳ね上がった。


「なぜアクス様がこちらに? 随分前から指名依頼を出していたのですよ?」


くるりと向けられた微笑は、外見だけなら可憐な笑顔。だがアクスはそこに、確かな怒りと圧迫感を感じ取ってしまう。横で遊んでいたアリシェや子供達まで、異様な気配を察してビシッと背筋を伸ばした。


(指名依頼って王女からだったのかよ! 言えよライラ!!)


移動含め1か月以上竜国にいたので、アルケシア発の依頼は拒否したのではなく位置的に受注不可だったのだからあまり責めないで頂きたい・・・。


「いや、ちょっと竜国に行ってまして。用が済んだのでその帰りに寄ったところです」アクスは努めて端的に説明した。


「まぁ、では今は依頼を受けていないフリーの状態なのですね?」


王女の顔がぱぁっと少女のように明るくなる。


「・・・まぁ、そうですね」

「では、私の依頼を受けて頂けま――」

「すみませんがお断り」

「受けて頂けますよね?」


再度の笑顔。その笑顔から放たれる圧力に、アクスの背筋が凍る。


「・・・はい」


なぜ王族はこうも押しが強いのか。そしてなぜ自分はこうも押しに弱いのか――アクスは心の中で天を仰いだ。

雷属性と森の相性の悪さ


 白雷の姫アリシェールはハイエルフと雷の半妖精エルフェリスで、その力をまだうまく制御できず、触れた者を感電させてしまいます。雷属性の生物であれば問題ないので、森で雷生物を捕まえて来れば姫のペットにできそうですが、雷は風の上位属性で、風も雷も木が障害となりうまく属性の効果を発揮できないので、森にはそのような生物がほとんどいません。


 雷属性の雷牙や雷無効のリオルは女王達にとって姫の為に喉から手が出る程希少で必要な存在なのです。だからといって家族を簡単には手放せませんけどね。


人物イメージ画像一覧はコチラ

https://ncode.syosetu.com/n1501lc/

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引き続き次回作もお楽しみ下さい♪

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