第63話:『爵位を持つ無能、階位を賜る英雄』
毎日18時投稿!・・・予定です(なるべくがんばります)
「そうか、もう、これで・・・」
ガルザーは安堵の声を漏らすと、そのまま力尽きるように倒れ込んだ。眠っているというより、完全に気を失っている。魔力は枯渇し、体力の限界を超え、体内のエネルギーは空っぽ。放っておけば命に関わる危険な状態だ。
「うーん、少し目立つが、仕方ないな」
アクスは腰のマジックバッグを探り、ノア特製の回復ポーションを取り出す。淡い輝きを放つ液体をガルザーの口に流し込むと、太い喉がごくりと動いた。
「お、おぉ・・・なんと甘露な・・・そうか、我は・・・天使殿、これから世話にな――」
「何寝ぼけてんだよっ!」アクスはためらいなくガルザーの頭をペシッと叩いた。
「・・・はっ! あ、アクス殿・・・感謝す・・・うっ」
ようやく意識を取り戻したものの、立ち上がろうとしたガルザーはよろけ、膝を折ってしまう。
「無理すんな。体力と栄養を少し補給しただけだ。魔力はまだ戻ってない」アクスはガルザーの肩を支え、再び座らせた。
「しかし・・・魔力ならポーションを飲めば・・・」
「どうせここ数日、飲みまくってみんなの解呪を繰り返してたんだろ? 身体ぶっ壊すぞ、マジでやめとけ!」
「ふん・・・まぁ、魔力など数時間休めばすぐに・・・」
(全く真面目な奴だなぁ。どうしよう、もう急ぐことでもないし、放っといてもいいんだが・・・)
アクスが考え込んでいると、後方から聞き慣れた竜車の車輪音が近づいてきた。
「おーい! 聖水、貰ってきたぞー!」声を張り上げながら戻ってきたのは竜騎士団の面々。樽に入った聖水を抱え、汗だくになりながらも誇らしげだ。
絶妙なタイミングで戻ってきた彼らだったが、ぐったりしているガルザーの姿に一斉に顔を曇らせる。
「ガルザー様!?」
「え?アクス?何だ、戻ってきたのか!」
「おいアクス、何があった!大丈夫なのか!?」
アクスはその様子を見て、ふと一つの案を思いついた。
「・・・なあ、その聖水、少し分けてくれ。ガルザーに飲ませてみる」
「えっ、団長に?」騎士の一人が目を丸くする。
「魔力は完全に空っぽだ。なら聖水を取り込んでも魔力過多で酔うことはない。それに聖水精霊の加護もある。問題はないはずだ」
短くそう説明すると、アクスは躊躇なくガルザーの口元に聖水を流し込んだ。
次の瞬間、ガルザーの体が淡い光に包まれ、脈動するように明滅する。蒼白だった顔に血色が戻り、かすかに震えていた手も力強さを取り戻していく。
「・・・ぬぅ・・・これは・・・」
その姿を見て、騎士団から歓声が上がった。
「団長が回復していくぞ!」
「さすが聖水だ!」
ガルザーの身体から放たれる光は徐々に落ち着き、彼の呼吸も安定していった――。
「アクス! 貴殿は・・・どこまで我らに恩を売れば気が済むのだ! エルフの森を通し、聖水へ導き、神竜の子を担い、そして今度は竜骸の魔導士までも・・・」ガルザーが慌てて立ち上がり、アクスの肩を掴む。
「ちょっ、待て待て! 違うって!」アクスは手を振り、全力で否定する。
「俺は何もしてないって! さっき言ったろ?神竜がたまたま居場所を知ってて、ついでにさっくり倒してくれただけ! 俺はただ後ろで見てただけだから!」
「はは、また謙遜を・・・」
「いや本当だって! 俺、マジで何もしてないからな!? リオルに挨拶させに行ったついでで・・・!」
必死に否定すればするほど、周囲の兵士や民は「またご冗談を」「いつものアクス殿だ」と笑みを深める。もうこの手は通じないようだ。
「人間が・・・いやアクス様が神竜を動かしたのだ」
「人も竜も惹きつける御方か・・・」
「もはや竜国の恩人どころか、ガルザー様に並ぶ英雄そのものではないか!」
勝手に積み上げられていく評価に、アクスは頭を抱えた。
「・・・だから俺は何もしてない・・・はぁ」
しかしその声は、感謝と歓喜の大合唱にかき消され、もう誰の耳にも届かなかった。
――謁見の間。
燭台の炎が高々と燃え上がり、白亜の柱に影を踊らせる。王座にはディアドラ竜国の王――ゼルヴァード・ドラグニル・ディアドラ。その傍らに王妃イリシア、さらに王子アルヴェリオスと竜姫セレナーデも並んでいた。王族全てが揃っての謁見は極めて稀であり、国の重臣や騎士たちが緊張に満ちて居並ぶ。広間に歩み出たアクスとガルザーの姿に、場の視線が一斉に注がれる。
「人族の冒険者アクス、そして竜人騎士団長ガルザーよ。お主たちが竜骸の魔導士による呪いを討ち果たした功績、まこと天に届く誉れである」ゼルヴァード王が重々しい声を響かせた。
「私だけでなく民の命も救ってくださり、心より感謝申し上げます」
王妃が小さく微笑み、竜姫セレナーデは胸に手を当て深々と頭を垂れた。広間に賛同の拍手が満ちる。
「まずはアクスへの褒章だ、何か希望はあるか?」国王が問う
「恐れながら、今回私はただ事件の行く末を傍観していただけの身、リオルの飼育許可を頂けたただけで充分でございます。ただ、もしそれで国のメンツが立たないという事であれば・・・今後もアルケシア王国と仲よくしてもらいたいですね。」
「・・・欲の無い奴め、まぁ良い、アルケシアの国王に感謝状でも送るとしよう」国王が応える。
「続いてガルザー殿への褒章ですが、陛下、この大恩に報いるには、やはり相応の階位を授けるほかありませぬ。ガルザー殿には第十二階位を。アクス殿、この階位は人間の国で言う騎士爵に該当致します」宰相ルセリオが一歩進み出て進言する。
広間にざわめきが走る。だが当のガルザーは一歩進み、深く頭を垂れてから静かに言葉を発した。
「恐れながら・・・我が身には過ぎた栄誉にございます。これまでも幾度か賜ろうとするお言葉を辞退してまいりました。冒険者として自由に動く身であり、階位を得ればかえって足枷となりましょう。今回も、故郷と家族を守るために急ぎ駆けつけただけにすぎませぬ。他人を救う責任まで、背負えるとは思えませぬゆえ・・・」
その言葉に、場は静まり返った。すると隣にいたアクスがぽつりと呟く。
「・・・え、俺は名誉騎士爵持ってるけど」
「なっ・・・!?」ガルザーが弾かれたように振り返る。
「き、騎士爵だと!? なぜ今さら言う! ではこれまでの我が無礼な態度は・・・っ!」
ガルザーが慌てて頭を下げようとするのを、アクスは片手で制した。
「やめろやめろ! 今さら頭なんか下げるな。俺は別に偉そうにするつもりなんてないよ」
ゼルヴァード王が喉の奥で笑った。「ふむ、面白い。ガルザーよ、これ以上辞退するのは王の顔を潰すことにもなるぞ。アクスと肩を並べ、国を跨いで共に歩むためにも、階位を受けよ」
ガルザーはしばし唇を噛み、深く息を吐いた。「・・・承知いたしました。謹んで第十二階位を拝命仕ります」
広間に拍手と歓声が湧き起こる。アクスがにやりと笑い、ガルザーの肩を軽く叩いた。
「これで俺たち、正式に対等だな」
「あぁ、頼もしい限りだ。これからも宜しく頼むぞ、アクス」
互いに視線を交わし、固く握手を交わす二人の姿に、謁見の間はひときわ大きな拍手で包まれた。
「あ、ガルザーの方が冒険者ランク上じゃん」
「・・・今それを言うな」
――こうして謁見は幕を閉じ、アクスは竜国を後にして、次なる地――森国リュミエールへと向かうことになるのだった。
ガルザ―の心境と状況の変化
これまで幾度も階位の受諾を断ってきたガルザ―。本人は未だに一番になりたい欲を持っており、階位なんか貰っても自分より弱い血筋だけの貴族竜人の下とされるだけなので、まずは冒険者初のSSランクを目指す事を第一としていました。しかし今回の事件を経て、力だけではどうにもならない局面がある事、知恵や経験が状況を劇的に変える場合がある事を学びました。そのお手本とも言えるのがガルザ―にとってのアクスであり、自分より弱いはずなのに自分に無いものを多く持つ人間の男の生き方を参考にしようと考えていた矢先に、アクスが騎士爵位持ちと聞き、国王の勧めもあって流れで階位を受け取ってしまいました。これで立場上ガルザ―は貴族の末席となり、王族との婚姻も可能な身分になった事で今後何かおもしろ・・・たのしい展開が起きそうですね。
人物イメージ画像一覧はコチラ
https://ncode.syosetu.com/n1501lc/
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