第62話:『解呪を続けた至聖竜、神竜が倒した魔道士』
毎日18時投稿!・・・予定です(なるべくがんばります)
――静寂。
「・・・ふぅ・・・終わった、の?」エマが膝をつく。
ヴァネッサがすぐに駆け寄り、身体を支える。
「お見事でした、エマ。これ以上の浄化は、この世にありません」
ミレイユは肩で息をしながら苦笑する。「・・・全力で相殺してた私も、ちょっと褒めてほしいんだけど?」
「ふむ、見事な連携だった」アクスが短く告げると、三人は顔を見合わせて微笑んだ。
カグヤは無言で剣を収め、エマの小さな頭をひと撫でしている。広間に残ったのは、聖光の余韻と、重苦しい闇の気配が完全に消え去った後の清らかな静けさだった。
戦闘が終わり、魔導士ザハークの骸は崩れ落ちた。広間に漂っていた禍々しい瘴気も霧散し、重苦しい空気がようやく晴れる。
(皆さん、お疲れさまでした。危険は取り除かれましたね)
ノアの澄んだ念話が響くと同時に、アクスたちの身体は光に包まれ――瞬きの間に外へ転移した。見慣れた空の下、彼らが振り返った時には、背後にあった魔導士の城ごと空間が歪み、粒子となって亜空間に吸い込まれていく。
(ふふふ・・・良い収穫です。サーチが届かない扉、あの実験結果、呪術式、死の時刻を操る理論――全部解析すれば、また研究が大きく進展します!)
ノアがウキウキとした調子で報告してくる。美従士たちが思わず顔を見合わせた。
「・・・ママったら、嬉しそうねぇ」ミレイユが苦笑する。
(はい! 人道的には最低ですが、学術的には最高です!ってママはやめなさい!!)
「・・・やっぱりちょっと怖いですぅ」エマが額を押さえた。
「まぁ解析はゆっくりやってくれ。俺らは一息つかせてもらうぜ」アクスはため息をつきつつも口角を上げた。
その後ノアに竜国王都の様子を探らせると、結果はすぐ届いた。
(呪いの進行は止まっています。再発も無し。ただし、一度発現した呪いは解除を行わなければ文様が残り続けるようです。ただし苦痛はなく、緊急性はありません)
「じゃあ、ガルザーが無茶して走り回る必要も無いってことか」
(はい。王都は落ち着きを取り戻しつつあります)
それならと、一行はアークに戻り、束の間の休息を取った。オープンデッキで焚き火を囲んでの食事、湯浴み、そして久しぶりにぐっすり眠れる夜。2日、3日とゆったり過ぎ、心身を取り戻す。
4日目の朝、ミレイユは古竜の姿となり、アクスと共に熾焔神竜メルラグノスの火山を再訪した。古竜の威圧を纏ったミレイユは、メルラグノスを前にして堂々と告げる。
「――先刻は竜人に対し過度な反撃で迷惑をかけすぎたであろう? 弱き他種族への過度な攻撃は最強種たる竜の掟に反する。 せめて詫びの為に我らの計画に協力し一芝居打つのだ」
神竜は面白くもなさそうに目を細めたが、結局は渋々と承諾する。
一方その頃、竜国王都。大広場の中央では、今日もガルザーが倒れそうな身体を奮い立たせ、呪いの解呪を続けていた。昼も夜もなく、民の列は途切れない。人員整理のおかげで多少は楽になったものの、果ての見えない治療に限界は近づいていた。
「・・・我が騎士団が聖水を持ち帰ってくれれば・・・我も竜骸の魔導士を討ちに行ける・・・あと少し・・・あと少しの辛抱だ」
歯を食いしばる彼の額には、滝のような汗が伝っていた。その時だった。晴天の空を覆うように、突如として巨大な影が広場に落ちた。
「な、なにごとだ!?」
「空を見ろ! 竜だ!!」
熾焔神竜メルラグノス――。王都民は一斉に悲鳴をあげ、蜘蛛の子を散らすように逃げ出す。広場に残ったのは、疲労困憊のガルザーただ一人だった。
「・・・神竜・・・! こんな時に・・・っ」
全身の魔力は枯渇寸前、体力も限界。ここで戦えば王都は灰燼に帰す。ガルザーは短剣に手をかけつつも、己の最期を悟った。だが――
「おーい、ガルザー!」
聞き慣れた声が、頭上から降ってきた。見上げると、神竜の背に人影が立ち、手を振っている。
「・・・アクス!? な、なぜ貴殿が神竜と・・・!?」
よく見れば、神竜の顎には巨大な骸骨のようなものが咥えられている。熾焔神竜は広場へ降り立ち、翼を畳んだ。ブフー、と鼻息ひとつ。サウナのような熱風が辺りを包み込み、石畳の砂埃が吹き飛ばされる。ガルザーは慌てて地に平伏する。
「神竜様・・・! ようこそお越しくださいました。い、一体何用でございますでしょうか」
神竜は答えず、口を大きく開くと――ガシャン! と音を立て、巨大な骸骨をガルザーの前へ吐き落とした。
「な・・・っ!」ガルザーの背筋に冷たい汗が流れる。
「よっ、久しぶり!」神竜の背からアクスが明るく声をかけ、軽やかに飛び降りてきた。
「・・・おぉ、一週間ぶりか。で、これは一体・・・何事だ、アクスよ」
「いやー、帰るついでにリオルを神竜に挨拶させようと思って火山に行ったんだよ。そしたらさ、竜骸の・・・なんとかってやつ? 居場所知ってるって言うから、連れてってもらったらそのまま倒してくれたんだよねー」
「な、何と・・・! では、こやつが・・・」ガルザーはうつ伏せに転がる骸骨を蹴り返し、仰向けにさせる。
「この頭蓋・・・竜人か・・・なぜ・・・同胞を・・・!」拳を握りしめ、怒りに震えるガルザー。
「自分の事をザハーク何とかって言ってたなぁ。元宮廷魔導師団長? とか言ってたっけ」アクスはとぼけた顔で答える。
「・・・なっ! ザハーク様だと!? 何という事だ・・・」ガルザーは頭を抱え、言葉を失った。
熾焔神竜は何も言わず、翼を広げると轟音と共に大空へ舞い上がる。
「ありがとなー! 助かったよ!」手を振って神竜を見送る。
頭の上のリオルも「ぴぃぴぃー」という鳴き声と共に小さな翼をフリフリしている。
――特に返事もなく、そのまま火山へと帰っていった。
王都の広場には、なおも残っていた民や兵たちが駆けつけ、目を疑う光景に息を呑んだ。
「こ、これは・・・神竜が・・・?」
「見ろ、あの骸骨を! あれは呪いを撒いた竜骸の魔導士ではないか!」
「あの人間がが討ち果たしたのか?」
次々に歓声とどよめきが広場を包み込む。やがて伝令の兵士たちが駆け出し、この出来事は瞬く間に城中、王都中へと広がっていった。
竜骸の魔導士はついに討たれた。あれほど禍々しく広がっていた呪いも、これで進行は止まる。残されたのは残滓を解除することだけ――それさえ済めば、呪われていた者たちも皆、元通りになるはずだ。
ノアが研究する意味
ノアが書物を調べたり、倒した敵の残骸を回収してなにやら研究をしておりますが、万能たる彼女にそんな事必要なのでしょうか? そう、必要なのです。何故なら彼女は”万能”であって”全知”ではないから。知識は自力で手に入れる必要があります。では「この世の全ての知識を一気に取り入れる」事は可能でしょうか?それはできません。その理由は彼女の”万能”に秘密があります。詳しい話はまたいつか。
人物イメージ画像一覧はコチラ
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