第57話:『竜国王の謁見の間、リオルの飼育許可』
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──王都の中心にそびえる黒曜石の城、竜国王城。その奥深く、荘厳なる謁見の間は、天井から吊るされた紅玉と翡翠の燭台が淡い光を投げ、床の黒石に黄金の装飾が映える空間だった。
入場の号令が響き、扉が重々しく開く。ガルザーを先頭にアクスと幼竜リオル、後に竜人騎士団員が進み出る。
「竜国王、ゼルグラディウス・ヴァルディア・ディアドラ陛下──!」
呼び上げられた名と共に、玉座の上から放たれる眼光が一行を射抜く。その視線は鋭い竜眼そのもの。重圧が空気を震わせ、場に立つ全員の背を強張らせた。
「・・・ぐ、重いな・・・これが竜人の王か」アクスは思わず喉を鳴らす。
リオルが「ぴぃ」と不安げに鳴き、アクスの頭にしがみつく。オムツで謁見する訳にはいかないので、ノア特製のハーフパンツを履いている。
「・・・よくぞ参った。至竜ガルザー、そして竜人騎士団。我が耳には既に届いておる・・・神竜メルラグノスを見事鎮めたと」
ゼルグラディウスの声音が響き渡る。王の言葉に、広間がざわめく。重臣や近衛の竜人達が驚きの声を漏らした。
「馬鹿な・・・神竜を退けたというのか・・・」
「しかも無傷で・・・?」
ガルザーは一歩進み、深々と頭を垂れた。
「恐れながら陛下、メルラグノスは討伐にあらず。暴走を鎮め、今は子の育成に励んでおります」
「・・・その証は?」ゼルグラディウスの竜眼がさらに細められる。
ガルザーはアクスの方へ目をやり、合図を送る。アクスは頷き、頭の上にリオルを乗せて前に出た。
「これが・・・神竜の子、リオルです」
リオルがきょとんとした顔で首をかしげ、「ぴぃ」と鳴いた瞬間、広間に再びどよめきが走った。
「神竜の血脈・・・!」
「幼竜を生きて見た者がいるとは・・・」
ゼルグラディウスの顔にも、一瞬驚きが走ったが、すぐにその威厳を取り戻した。
「・・・確かに、神竜の気配を宿しておるな。よくぞやった、英雄ガルザー。そして竜人騎士団。その功績、まさに国の誉れである」ゼルグラディウスは玉座に身を預け、深く頷いた。
重厚な声に、広間の竜人たちが一斉に膝をついた。ガルザーも跪き、騎士団がそれに倣う。アクスは場の空気に少し遅れ、慌てて膝を折った。
王は続ける。「望む褒美を申すがよい。我が国の財でも地位でも、汝らの功にふさわしきものを与えよう」
その言葉に、騎士団員たちは息を呑み、期待に目を輝かせた。だがガルザーは顔を上げ、静かに首を振る。
「陛下・・・我は褒美を辞退いたします」
「なに?」広間が再びざわめく。
「ほう、あれ程名誉と功績を求めていたそなたが褒美を要らぬと申すか?」
「正気か・・・!」周囲のざわめきは止まらない。
「理由を申せ」ゼルグラディウスの眼差しが鋭さを増す。
ガルザーは真っ直ぐに王を見据えた。
「神竜メルラグノスと対峙し、悟りました。奴は我らの国を守る意思など持っておりせん。ただ己の縄張りを荒らす者を排除しているだけ・・・結果として他の竜が寄り付かず竜国が護られてきただけに過ぎません」
王の眉がわずかに動く。ガルザーは続けた。
「ゆえに、これからは──人族に親しい竜を育てる必要がございます」
ガルザーはアクスを一瞥し、そして再び王に向き直る。
「我が褒美の代わりに、この冒険者アクスに、幼竜リオルの国外飼育許可を与えていただきたいのです」
広間は一瞬、静寂に包まれた。やがて怒涛のように声が上がる。
「無謀だ!」
「神竜の子を人間に預けるだと!?」
「国を裏切るつもりか!」
ゼルグラディウスは手を上げて制し、静かに問いかけた。
「・・・なぜ、その者に託す?」
ガルザーは真剣な面持ちで言った。
「今、この幼竜はアクスを親として懐いております。強引に引き離せば、この幼竜は親と自分を引き離した”竜人”に恨みを抱く恐れがございます。なればこそ、今はアクスと共に歩ませるべきです」
そして、重々しく言葉を紡いだ。
「人間の寿命は数十年。竜にとっては一瞬に等しい、ですがその間にリオルは十分に成長する事でしょう。・・・アクス、お前がその命果てた時には、リオルを竜国へ戻せ。真の守護竜として、この国を導く者となるはずだ」
アクスは息を呑み、リオルを見下ろす。幼竜は何も知らぬ顔で「ぴぃ」と鳴き、彼の胸にすり寄った。
「・・・俺が死んだら・・・か」呟いた言葉は、広間に重く響いた。
「なるほど・・・ガルザーよ、そなたの言は理に適っておる。人族に親しき竜を育てること、その価値は計り知れぬ」竜国王の厳粛な言葉が謁見の間に響いた。
王は玉座からゆっくりと立ち上がり、重々しい気配をまとったままアクスへ視線を向ける。その瞳はまるで魂の奥底まで射抜くような力を帯びていた。
「アルケシアの冒険者アクス・・・汝、人の子ながら竜を導き、神竜の血を受け継ぐ幼竜を従えた。その縁を天命と受け止め、この責務を背負う覚悟はあるか?」
玉座の間に緊張が走る。リオルはアクスの肩の上で「ぴぃ」と鳴き、不安そうな顔で見つめる。まるで「答えて」とせがむように。
アクスは苦笑し、頭を掻きながら小さく息を吐いた。
「・・・竜国の事とか天命とかはよくわかりませんが、神竜に託された俺の大事なこの子を、親として何があっても守り抜く、その覚悟だけはあります。人族を好きな俺が育てた子が、人を嫌いになるはずがない。だからこの子を、竜人どころか人族全部守れる立派な竜に育てて見せますよ!」
その答えに、王の厳しい顔がわずかに綻ぶ。
「よい、その覚悟があれば充分だ。神竜の子が汝を選んだ時点で答えは定まっておる。――竜国王の名において命ず。リオルを国外に連れ出し育てることを許可し、人族の地において竜の絆を広げる使徒と定める」
その瞬間、広間の左右に控えていた近衛たちが一斉に竜槍を打ち鳴らした。荘厳な音がこだまし、謁見の間は祝福の空気に満たされる。
「ふふ、言っただろうアクス。我々だけでは成せなんだ。これはお前にしか出来ぬことだ」ガルザーが一歩進み出て、にやりと笑った。
「・・・やっぱりそういう流れになるのね」アクスは頭を抱えるが、肩の上のリオルがぺろりと頬を舐める。
「ぴぃ♪」
「あぁ、これからもずっと一緒だ、リオル」アクスがそう笑うと、謁見の場に温かな笑いが広がった。
「――アクスよ、竜国にとっても人族にとっても、そなたとリオルが新たな未来を紡ぐことを期待するぞ」王は最後に厳かに言葉を結ぶ。
こうして、アクスは正式にリオルを国外で育てる許可を得ると同時に、人と竜を繋ぐ新たな役目<竜主>の称号を背負うこととなったのだった。
竜国の本音
リオルの飼育許可については、要は冒険者の従魔登録なのでギルド扱いになります。国の許可というのは建前で、実際は特定の竜が国外に流出した際の責任者が誰なのかを明確にするというものでした。この時点でリオルが国内外で何かをやらかした際の責任は全てアクスに向きます。周りがギャーギャー騒いでいましたが、仮にアクスがリオルを放棄し、竜国の誰かが面倒を見る(=責任を取る)という話になっていたら、全員適当な言い訳を並べてたらい回しにしていた事でしょう。それくらい竜の存在とは恐ろしく強大なのです。まぁアクスにはノアがいるので問題ないでしょう・・・たぶん。
人物イメージ画像一覧はコチラ
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