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無能転生者、何もせず遊んでたら異世界救ってました。  作者: 真理衣ごーるど
╰╮第7章:ディアドラ竜国編╭╯
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第51話:『森の牢獄、炎の応用』

毎日18時投稿!・・・予定です(なるべくがんばります)

 一行は精霊の聖水を手に入れるため、泉を囲う森のダンジョン、森牢の聖泉に足を踏み入れる。


 最初に現れたのは《樹狼》。木と狼が融合したような怪物が群れを成し、鋭い牙を剥いて襲いかかる。


 3人の竜人騎士たちが前に出て盾で抑えそれぞれの武器で牽制、ガルザーが後方から槍で次々と刺していく。しかし狼は圧倒的な数で押し寄せる。


「くっ、数が多い!ここは一旦……」ガルザーの脳裏に撤退の2文字が浮かぶ。

 アクスは後方から一歩も動かず、ただポツリと呟いた。「……雷牙、やれ。」


 次の瞬間、ガルザーは背後から強力な威圧を感じ取る。その威圧は樹狼たちを容赦なく押し潰していく。更なる強敵か、後方にはアクスがいる、守らねば!しかし……神竜とも互角に立ち向かうガルザーの背にじわりと汗が滲む。


 威圧が消えると樹狼達はそそくさと逃げ出した。竜人たちは呆然とし、ガルザーがはっ!と後ろを振り向く。背後にはアクス、後は彼を背に乗せるフォレストウルフのみ。しかしその瞳の奥には秘められた何かを感じる、冷たくも力強い、”頂点に君臨する者”の目だ。


「おぉ、追い返したか、すごいな!よし、進もうぜ」アクスはこちらを見ながらウルフの頭を撫でる。ウルフは気が抜けたように舌をだしてハッハッと喜んでいる。


(その言葉はどちらに……)竜騎士たちはガルザー様が追い払ってくれたと囃し立てている。高みに手を伸ばすガルザーだけが、その異様さを感じ取っていた。


 さらに奥で遭遇したのは幻惑を操る《ミラーディア》。その美しい氷の角から放たれる冷気が氷の鏡を生成し、騎士団は己の映し身と斬り結び始める。


 アクスの前にも氷の鏡が生成されたが、その鏡は即座に溶け消えた。近くで鏡に映った自分と戦っているガルザーに声を掛ける。


「おい、ガルザー、大丈夫か?」

「くっ、あの力、我と互角だ、かくなる上は……」


 ガルザーが何かを決意しようとしているが、アクスが近づいた途端に鏡とガルザーの映し身も溶け消えた。


「な、なにが起きた……アクスよ!その髪はどうした!?」ガルザーがアクスの髪を見て目を丸くしている。

「え?……あれ、何だこれ」アクスの白銀の髪が、淡く赤い光を放っている。


 とりあえず3騎士にも近づいて氷の鏡を溶かす。鹿はとっくに逃げ出していた。氷の鏡像を見せている間に逃げるタイプだったのだろう。早速魔導騎士に髪を見てもらう。


「強い火の力を感じます、おそらく神竜の子の残滓、もしくは神竜の加護の一部かと」


 焼いたその身に炎の刻印を刻む神竜(もしくはその子)の炎の魔力が、頭にしがみ付いてる内に写った。その竜の力が、氷の幻惑を打ち消したようだ。


「……何なんだ、あの人間は。」竜人たちは戦慄と共にアクスを見る。


 アクスの髪に宿った赤い輝きによって氷の幻惑は打ち消され、この森のモンスターが「火」に弱いことも判明した。

 この中で実践的な炎魔法を使えるのは魔導騎士サイラスのみ。彼は基本4属性が発動可能で、愛用の武器<スフィアワンド>を構える。

 それは込めた魔力の属性を球状に変えて放つ上級品で、効率も威力も高いが、ただ一つ欠点があった。球速が遅く、避けられやすいのだ。

 だからサイラスは盾を構え、敵に接近して至近距離で弱点属性球をぶつけるという戦法を取るしかなかった。


「……なぁ、相対速度って知ってるか?」アクスは少し考え、魔導騎士に尋ねる。

「……なんだそれは?」不思議そうに首を傾げるサイラスに、アクスは走竜を指差す。

「試してみよう。走竜で走りながら撃ってみてくれ。できれば前に振り抜くようにだ」


 半信半疑でサイラスは走竜を駆けさせ、タイミングを見計らってワンドを前に振り抜く。その瞬間、火球は信じられない速度で前方へ突き抜け、巨木を一瞬で焼き裂いて倒した。


「なっ……!」

「ば、馬鹿な……!?」


 騎士たちが目を丸くする中、サイラス自身が一番驚愕していた。今まで欠点だった速度問題が、たった一言で克服されてしまったのだ。

 以後、サイラスは先頭に立ち、炎の球を投げ飛ばしながら森を焼き開いて進む。氷に頼っていた小物の魔物たちは逃げ回り、襲いかかることもなくなった。サイラスは得意げに鼻を鳴らし、ますます自信に満ちていた。

 だが森は深く、やがて木々の密度は増し、火球では焼き落とすのに時間がかかり始める。火の威力はあるものの、どうにも「抜け」が悪いのだ。


「貫通といえば槍だろ。なぁ、その槍に何か効果ないのか?」アクスに問われ、槍騎士ヴォルフが胸を張る。

「よくぞ聞いた!この槍は<ウインドスピア>。魔力を込め突けば、この通り――!」彼が大地を突くと、突風が生まれ森の奥まで伸びた。木々の皮が剥がれ飛び、空気が唸る。

「どうだ、この射程!すごいだろう!」虚飾に胸を張るヴォルフ……沈黙が吹き抜ける。

「あぁ見ての通りだよ!……射程はすごいが、殺傷力が乏しいのだ……。」ヴォルフはがっくりと肩を落とした。確かに雑魚を吹き飛ばす程度ならともかく、硬い木々を貫く力は足りない。

 アクスはにやりと笑う。「いや、すごいじゃないか!何だ早く言えよ。じゃあ、それで火球を突いたらどうなる?」


 サイラスとヴォルフはピクンと何かに気付いた反応を見せた。2人は顔を見合わせ、同時に頷く。次の瞬間、サイラスが火球を発動し、ヴォルフが渾身の突きを放った。


 轟音と共に、炎を纏った突風が一直線に吹き荒れ、目の前の森を丸ごとくり抜いた。木々は焼き払われ、煙と焦げ跡だけが残る。


「……う、嘘だろ……」

「おいおい、道が……燃えた風穴みたいに空いたぞ……!」


 竜人騎士団は唖然とした。サイラスとヴォルフは互いの肩を叩き合い、子供のように喜んでいる。アクスも予想以上の効果に唖然とする。

 こうして「<炎の突風>(フレイムブラスト)が新たな道を切り開く手段となり、彼らは迷いなく奥へと突き進んでいった。


 ただ一人、剣騎士クランだけは黙り込み、表情を曇らせていた。仲間たちが次々と輝きを増していく中で、自分だけが取り残されていく……そんな焦燥感が胸を締め付けていたのだった。


 一行は順調に森を焼きながら進む。よく見たらこのダンジョンは迷路のようになっている。本来は空いてる道を見つけながら中心に向かって行くものなのだろう。しかし今回は木の壁を壊し、全てを無視してただ真っすぐ中心を目指している。チートかもしれないが、今は時間が無い。迷路で遊びたくなったらまた来るとしよう。


 森の奥、腐葉土の地面が揺れ、無数の根が生き物のように伸び上がり、襲い掛かる。まるで森そのものが侵入者を拒絶するかのように、一行へと襲いかかってくる。


「くっ……硬い……!」


 ガルザーの槍が閃き、根を次々と突き裂くが、その攻撃は点に過ぎず、太い根を貫くには力不足だった。形態を斧に変え対抗するも、圧倒的な数に追いつかない。

 ヴォルフも何度も《炎の突風》を放とうとしたが、一撃ごとに膨大な魔力を必要とし、すでに息が荒い。

 サイラスの火球も同じく、連発には限界が来ていた。

 そんな中、唯一余力を残していたのは剣騎士グランだった。彼の武器は<ソニックカトラス>。振るたびに生まれる音速の斬撃は、根の先を容易に切り裂くものの、幹のような太い部分には刃が届かない。


「ちっ……浅い!」


 焦燥と苛立ちが混じった声が響く。その時、アクスがふと声を上げた。


「同じ発想だ!――火球を斬れ!」

「火球を……斬るだと!?」グランはサイラスが放った火球へ向かって、ソニックカッターを飛ばす。


 刃は火球を切り裂くのではなく、まるで断面を薄くスライスするように通過し――炎が斬撃に宿った。


「なっ……これは……!」


 ソニックカッターは《フレイムカッター》へと変貌し、赤き軌跡を描きながら根の幹を焼き斬った。焦げ臭い煙が立ち昇り、硬い根がバタリと崩れる。


「おいおい、まだ火球が消えてないぞ!?」サイラスが驚きの声をあげる。


 アクスはにやりと笑った。


「ソニックは断面を少し切り取っただけだ。火球自体はそのまま残ってる……ってことは、何度でも使えるってことだな」

「……! そうか!」


 グランは歯を食いしばり、次々と火球に向けて斬撃を放つ。ソニックがフレイムへと変わり、無数の炎刃が飛び交った。襲いかかる根は片端から根元まで悉く焼き斬られ、道を塞ぐものは瞬く間に消え失せる。


「こ、これは……!」

「す、すげぇ……!」


 仲間たちの視線が、グランへと集中する。炎に照らされたその横顔は、これまでの影のような存在ではなかった。自身のカトラスに見出した赤い輝きを見つめ、グランの瞳にも同じ炎が宿る。


「俺だって、できる!」


 叫びと共に振り抜かれる無数のフレイムカッターが、森を赤々と切り裂き、進むべき道を拓いていった。

アクスがソロな理由


 アクスが他の冒険者とパーティを組まないのは、四聖との関係がバレて目立っていろいろ押し付けられるのが面倒で嫌だというのが第一ですが、他にも今回のように、頑張って進む者たちにペースを合わせなくてはいけないというのもあります。アクス一人ならダンジョン攻略どころか、泉まで一気に転移できちゃいます。まぁこの過程もアクスは内心楽しんでいるのですが、毎回こんなペースではやっていけないので、アクスはこれからもソロ冒険者として活動する事でしょう・・・たぶん。


人物イメージ画像一覧はコチラ

https://ncode.syosetu.com/n1501lc/

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引き続き次回作もお楽しみ下さい♪

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