第50話:『治療の要、聖水の泉』
毎日18時投稿!・・・予定です(なるべくがんばります)
「お初にお目にかかる、ハイエルフの女王、縁の無い竜人が突然の訪問、またこの場に割って入る事、諸々謝罪する。だがどうか、我の話を聞いて頂きたい!」ガルザーが跪き、正式に女王へ挨拶する。
ガルザーは故郷の村が神竜に襲われ、多数の負傷者が出ており、特に妹セレネが重傷を負っていて一刻も早い治療が必要であることを説明。女王も表情を引き締め、協力を了承する。
ハイエルフの治癒魔導士(治癒師)が手をかざし、セレネの焦げ爛れた背を慎重に観察した。光の魔法陣が何重にも重なり、やがて淡く弾かれるように消えていく。その表情は険しくなった。
「……やはり熾焔の灼き痕か。性質こそ違えどその効能は呪いに近い。呪いのように外から付与されたものではなく、炎そのものが肉体に刻み込んだ火傷の紋様。いわば“灼熱の刻印”じゃ。これでは通常の回復魔法は弾かれてしまう。」
「では……治す術はないのか!」ガルザーが拳を握り締める。
治癒師は首を横に振り、ためらいがちに言葉を続けた。
「不可能ではない。火に対する対の属性、水の浄化によって“相殺”できる。だが普通の水では無理じゃ。この森の北東に《聖水精霊の泉》と呼ばれる場所がある。その聖水ならば……刻印を消し去ることができよう。」
「じゃぁ聖水貰って来ればいいんだろ?」アクスは腕を組み、短く問う。
治癒師は深く頷いた。「百年程前より、泉を取り囲む森そのものが歪み、自然のダンジョンと化している。今では《森牢の聖泉》と呼ばれ、エルフすら近づけぬ禁地じゃ。」
場に重苦しい沈黙が落ちる。だがガルザーは、静かにアクスを見やった。
「まぁ、行くしかないんじゃない?前にも言っただろ、物は試しさ」アクスが気楽に応える。
その言動に、ガルザーの緊張が少し解け、落ち着きを取り戻す。
「泉の聖水は我らエルフも欲しておる。多めに取ってきてくれるなら娘の延命は我らが責任もって請け負おう」
「それはありがたい、これでダンジョンに集中できる。聖水は余分に持ち帰るとしよう」
「それは願ってもない、そうじゃ、これをもって行くが良い。」ハイエルフがガルザーにひょうたん型の入れ物と樽のような入れ物を渡す。
「これは<千日瓢>、精霊の好むものが入っておる。只で聖水を頂く訳にはいかんのでな。そしてこれは<清泉の甕>、大量の水を入れられる、水専用のマジックバックのようなもんじゃ、素手で持ち帰る訳にはいかんだろう」
「おぉ、感謝致す」
「なんのなんの、助かるのはこっちじゃて、頼んだぞい」
出発にあたり、リオルは当然のようにアクスの頭に乗っていた。だが、竜とはいえまだ生まれたばかりの赤子をダンジョンに連れていくのは気が引ける。
「言葉も通じないし、どうしたもんかな……あっ」
アクスは頭の後ろにしがみついていた幼竜リオルを持ち上げ、これから向かうダンジョンへ向け差し出した。リオルは何か感じ取ったのか小さな体をブルリと震わせ、青い瞳を怯えたように揺らす。そしてひょいと飛び移り、アリシェール姫の頭にしがみついた。
「……なるほど。お前火属性だもんな、水と森が苦手か。仕方ない、今回は留守番だな。」
アクスは苦笑しつつ言うも、内心ホッとする。姫が驚いて顔を上げると、アクスは続けた。
「姫様、俺たちがダンジョンから帰るまでの間、たくさん遊んでやってくれ。ただ、リオルは俺が神竜に託された子だ。俺たちが国に帰る時は必ず連れて行く。……別れ際は泣かないと約束してくれよ。」
アリシェールは真剣に頷き、胸に小竜を抱きしめた。リオルは安心したように小さくぴぃと鳴いた。
竜人騎士団の見習い蜥蜴人2人もお留守番、メンバーはアクス、ガルザー、盾騎士3人の5名。森の中なので馬車は使えない。馬も危険(ゴーレムだけどバレたくないので話を合わせる)なので走竜で行く。
走竜の速度は人間のアクスでは追い付かない。ガルザーがアクスに後ろに乗れと誘う。アクスは断り笛を吹く。フィーという鋭い笛音が森に響くと、木の影から一匹の狼が現れる。一際大きなフォレストウルフ……に擬態したプラチナムフェンリルの雷牙である。
「まぁ、こいつなら走竜相手でも負けないさ。」アクスはにやりと笑った。
「おぉ、あの時のウルフか……全く、我らより多才ではないか、貴殿のどこが”無能”なのだ」ガルザーが改めて感心する。
「いやいや、俺じゃなくて魔道具がすごいんだよ。これもたまたま手に入れたようなもんだし」アクスはいつも通りの返答をする。
4匹の走竜とフォレストウルフに乗った5人が森を駆ける。走竜は慣れない森にも関わらずウルフ並みのスピードを維持している。雷牙も本気を出せばもっと速く走れるが、意味が無いし目立ちたくないので大人しく自重して付いていく。
ダンジョンの入口に辿り着いた時、そこは異様な光景だった。森の木々が絡み合い、外界を遮断するかのように結界のような樹壁を作り出している。中に足を踏み入れた瞬間、音が消えた。鳥も虫も鳴かず、空気が重く淀んでいる。
「これが森牢か、なるほど……確かに、エルフにはきついな」ガルザーが低く呟いた。
枝から枝に飛び移り、木の葉で身を隠し高いところから弓や魔法で攻撃するスタイルのエルフにとって、この場所は”濃すぎる”のだ、一歩入った瞬間、中は夜のように暗い。これだけ樹上が複雑に生い茂っては木の上は移動できないし、矢も射れない。
熾焔神竜とエルフの関係
森の西の山脈を越えた所に竜国があり、竜国に隣接する山の頂上に火山・・・つまり、メルラグノスの棲む火山は森国と竜国の間の山脈の山頂にあります。実際はもう少し北のあるので森国とは少し離れているのですが、神竜の縄張りに森国の北西部がバッチリ入っています。
しかし神竜は森には一切関与しません。理由はリオルの反応にもあるように、水は火の弱点属性だからです。また神樹の防御も厚く、最強種とはいえタイマンならまだしも、ハイエルフの集団に反撃されたらさすがの神竜も太刀打ちできません。なので近隣に住みながらお互いに存在を認識した上でしっかり棲み分けがされているんですね。
人物イメージ画像一覧はコチラ
https://ncode.syosetu.com/n1501lc/
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