第49話:『セレネの治療、リオルの異能』
毎日18時投稿!・・・予定です(なるべくがんばります)
竜国王都の大神殿。古き竜碑の前で、ガルザーは妹セレネを寝台に横たえ、神官たちの診断を固唾を呑んで待っていた。白衣をまとった竜人の神官長が深く息を吐く。
「……熾焔の灼き痕は、竜の炎にすら勝る神性を帯びておる。出来るだけの処置は施した。これで少しは命の危機を避けられたじゃろう。しかし、われら竜人の術では、神竜の力は癒やしきれん。いつ容体が悪化するかわからん状態じゃ。」
言葉は静かだが、告げられた絶望は鋭く重い。
「神殿ですら治せぬのか! では、我が妹はどうなる!」ガルザーの肩が怒りに震える。
「……奇跡を求めるならば、神樹の民リュミエールのハイエルフに頼る他あるまい、だが……」神官長の声が揺らいだ。
「彼らは森を閉ざす。われら竜族が立ち入れば即座に矢が飛ぶであろう。交流も途絶えて久しい……」
沈痛な空気が場を支配した。竜人の戦士たちが歯を噛みしめ、誰も次の言葉を継げない。諦めの色が漂う。その時、ガルザーが一歩前に出た。
「そうか、なら心配はいらぬ! 我らには、このアクス殿がいる!」高らかに宣言された名に、場の視線が一斉にアクスへと集まった。
「は?」アクスが面食らった顔をするのと同時に、竜人たちの間から嘲笑が漏れる。
「な、なんだその若造は。か弱き人間ひとりに何ができる」
「竜国が救えぬ傷を、下等の人間がどうにかできるとでも?」侮りと怒りが混じった声が飛び交う。
だがガルザーは一切揺らがない。その黄金の瞳に、確信の光が宿る。
「侮るな。アクス殿はリュミエール森国と友誼を結び、女王陛下と直に対話を果たした唯一の存在だ。森を閉ざす彼らと、言葉を交わせるのはこの男だけだ!」
「な……」竜人たちが一斉に息を呑んだ。驚愕と畏怖の色が走る。
「ハイエルフの……女王と……対話を……?」
「人間が……信じられぬ」
アクスは慌てて手を振った。「いやいやいや! 大げさだって! ちょっと運が良かっただブッ……」
彼の弁明を遮るように、小さな影がアクスの口元にまとわりついた。孵ったばかりの幼竜――リオルが、離れることなくアクスの頭しがみついている。
その様子に竜人たちはさらにどよめいた。
「神竜の子が……あの人間から離れぬだと……?」
「まるで親のように……」
「……勘弁してくれよ。なんでこうなるんだ」アクスは額を押さえた。
しかし、誰も彼の言い訳に耳を貸さなかった。この時すでに、竜国の戦士たちの目には――
「失われつつある同胞の命をリュミエールへ繋ぐ唯一の希望、神竜の子に認められた奇跡の人間」
として、アクスの姿が焼き付いていたのである。
ともあれ、竜国王都での情報を頼りに、ガルザーの妹含む村人の傷を癒す為リュミエール森国に行くことが決まった。
森の入り口に差し掛かった時、影のように現れた数名のエルフの警備隊が道を塞いだ。弓を構え、鋭い視線をアクスたちへと向ける。
「止まれ!そこの人間、名を名乗れ!」先頭の隊長が叫ぶ。
「……アクスだけど?」アクスは首を傾げつつ、素直に答えた。
(アクス……?帝国から同胞を解放した英雄か?しかし……オブの顔など覚えておらん。しかもなぜ西から来たのだ!王国は南ではないか!さては……)
「ハッハッハ!騙されるか愚か者めが!アクス殿がいる王国は森の南方にあるのだ!西から来るバカがいるか!英雄を騙る偽物め!射殺されたくなければ即刻立ち去れぃ!」隊長はドヤ顔でアクスの偽物?を追い返す。
ピリつく空気に、竜人の戦士たちも思わず構え直す。ガルザーが低く唸った。
「待て。無闇に剣を抜くな」だが警備隊はなおも警戒を解かない。
「英雄を騙る輩など珍しくはない。森に入れると思うな」すると、一人のエルフ兵が慌てて駆けつけた。
「待て!その方は本物のアクス殿だ!」息を切らしながら彼は必死に訴える。
「先日セリス隊長が南から西へ転移で送ったのだ!今はその帰りなのだろう。布告を見てないのか!?」
隊長の表情が一気に青ざめる。他の兵たちも弓を下ろし、深々と頭を垂れた。
「ししし失礼を致しました、英雄殿。西からの来訪ゆえ、つい疑ってしまった。我らの無礼、どうかお許しを!」
他の兵たちも一斉に頭を下げる。その光景に、横で見ていたガルザーは思わず目を丸くした。エルフはプライドが高い、その上人間どころか他種族全てを見下しているというのは有名な話だ。だからこそ竜国も親交を深める事が出来なかった。だから、非があるとはいえあのエルフがこんなに深く謝罪するなど信じられない。
「……本当に、どこへ行っても英雄扱いなのだな、アクス殿は」ぽつりと漏らすガルザーに、アクスはいつもの調子で肩をすくめて返す。
「いやいや、奴隷だったエルフ送った時にちょっと仲良くなっただけだよ。英雄なんて大げさだなぁ」その飄々とした態度に、ガルザーはなおさら感心するのだった。
森の奥へ案内されると、陽光を透かす大樹の枝葉の下に、繊細な彫刻を施された宮殿が姿を現した。白と緑に輝くその佇まいは、森と一体化したかのような荘厳さを放っている。サロンへ通されると、奥のソファーに座るべき女王の姿はまだなく、代わりに広間の一角から小さな影が飛び出してきた。
「……だ、だれ……あ、アクシュ!」手は握っていない。
銀髪に翡翠の瞳を宿す幼い少女。森国の姫アリシェールであった。アクスに向かって駆け寄る姫。しかし、後ろに聳える巨躯の竜人を見た瞬間、アリシェールはぴたっと足を止め、目に涙を浮かばせ、次いで周囲にぱちぱちと雷光が走り出した。
「いやっ……!こわい……っ!」
初めてみる人間以外の他種族、成人の竜人、竜そのものとも見れるガルザーの荘厳な”顔”を見た姫は今にも泣き出しそうだ。空気が一瞬にして張り詰め、竜人の戦士たちが慌てて距離を取る。
「な、何だ、これは――」ガルザーが目を剥く間もなく、雷が弾け飛ぶ。
「ほーら、これなら怖くないだろ?竜の赤ちゃんだぞ、こいつ、めっちゃ可愛いんだ」アクスはとっさに頭の後ろにしがみついていた幼竜リオルを持ち上げ、王女へ向け差し出した。
「ほあぁ、あかちゃん?」姫と幼竜、お互い円らな瞳で見つめ合う。ぴぃと鳴くリオルの可愛さに、少し興奮気味の姫、ふいにリオルに触れてしまう。
「危ないっ!」アクスが咄嗟に引き離すもリオルは……あれ、感電していない……?
「何だ、どうしたのだアクスよ」何も説明していなかったので、ガルザーは状況が掴めていない。
「ちょっとまってくれ……俺にもわからん、いやガルザーが聞きたい事はわかるんだが、えーっと」アクスも予想外の状況に少し困惑する。
恐る恐るリオルを姫に近づける。リオルが舌を出してぺろりと王女の頬を舐めた。驚きに目を見開いたアリシェールは、くすぐったさに思わず声を上げる。
「……ひゃ……!?」雷光がふっと消え、泣き声は笑いに変わった。
「かわいい……!」姫はリオルをぎゅっと抱きしめ、涙を拭うように頬をすり寄せる。リオルも満足そうに小さく鳴いた。
「雷が止まったぞ……」
「信じられん……直に触れるだと……?」
「女王に伝言急げ!」
エルフの衛兵や従者たちはざわめき、慌てている。
「よくわからんが……また何かやりおったのだな」ガルザーは目を細めてアクスを見やった。
「いやいや、俺じゃなくてリオルが特別だったんだよ」アクスは肩をすくめて笑う。
そこへ、広間の奥の扉が開き、女王セレヴィアが姿を現した。金糸を織り込んだ深緑のドレスに身を包み、冷ややかな威厳を漂わせる。しかし、娘の腕の中で甘える幼竜を見た瞬間、その瞳に驚愕とわずかな嫉妬が宿る。
「……娘に、直に触れても無事だと……?」
女王は動揺を隠すように顎を上げ、あくまで冷静を装った。
「ふむ、良い土産物だアクスよ」「いえ土産じゃありません俺の子です」
「……いくらだ?」「売りません」
「言い値で」「買えません」
「…だめか?」「だめです」
挨拶する間も無く相変わらず娘が絡んでガバガバの交渉を提案する女王、にも関わらずアクスの女王に対する毅然とした返しに、困惑と緊張に包まれていた広間の空気が少し和んだ。我に返った女王は周囲の視線に気づき、扇で口を隠し必死に威厳を取り繕った。だが、その耳先がかすかに赤く染まっているのは誰の目にも明らかだった。
――緊張と笑いが交錯する中、ようやく場は落ち着きを取り戻していった。
感電しないリオル
アリシェール姫に触れても感電しなかったリオル。属性は炎のはずなのに何故?これはリオルのある異能力によるものなのですが、これが表に出てくるにはリオルがもっと成長しないといけません。それまでこの物語が続くかどうか・・・このペースだとリオルが成長する前にアクス達が異世界を救済しきってしまいそうです。どうしましょう?(知らんがな)
人物イメージ画像一覧はコチラ
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