第48話:『至竜とアクス、神竜とリオル』
毎日18時投稿!・・・予定です(なるべくがんばります)
熾焔神竜メルラグノスとの対話は決裂し、遂に戦闘が始まった。
ガルザーは短剣を抜き、戦闘態勢に入る。
(Sランク冒険者、最強の竜人が本物の竜と本気の戦闘か・・・)腕を組み静観するアクスは危険と知りながらも、目の前の光景にワクワクが止まらない。
次の瞬間、短剣の柄が瞬時に伸び長大な槍へと変化した。柄が高速で伸縮し、連続の突きを繰り出す。
神竜が火球を放つ、柄が戻り刃が巨大化し大剣となり、火球を叩き割る。
神竜の背面を取ったガルザーが刃を広く巨大化、バトルアクスの重い斬撃が神竜の背中にヒット。
神竜は体勢を崩しかけるも持ち直し、火炎放射を浴びせる。ガルザーは刃を更に広げ盾にして火炎を防ぐ。
目にも止まらぬ武器変化を駆使し、次々と熾焔の猛攻を防ぎ、返す刃で神竜の体表を裂く。
「これが……ガルザーの本気か」アクスが思わず息を呑む。その戦いは神話に語られる神々の抗争さながらであった。だが神竜の力は常軌を逸している。数十メートルの炎を纏う翼が一振りされる度に山が抉られ、天地が唸った。ガルザーは短剣をしまい、咆哮した。
「竜化解放――!」その身の蒼き鱗が光り、背の翼、いや全身が巨大化し、瞳が竜の瞳孔を宿す。瞬間、彼の肉体は一時的に竜と化した。神に等しい力を得たガルザーと神竜の空中戦は、村人たちの視界すら追いつかぬ速さで交錯し、轟音が連続する。
だが代償は大きかった。力の時間制限が訪れる。巨大化した体から竜の鱗がぽろぽろと剥がれ、ガルザーの体が急速に萎み、元の竜人の姿へと戻っていく。
「くっ……ここまでか……!」地へと落下し、辛うじて膝をついて着地する。呼吸は荒く、四肢は痺れ、立つこともままならない。すでに戦闘不能。
「さぁとどめだ!愚かな矮小なる者共よ、神炎に焼かれて死ね!」神竜がブレスをこちらに向けようとしている。
(あー、無理だわこれ、すまんノア、何とかしてくれ)
(仰せのままに)
(……え?イヤぁ!それだけはイヤなのよぉ~)
(何をそんなに嫌がっているのです!)
(だってだってぇ~)
ミレイユが何やら嫌がっている・・・?
(……いいから早くしてマジで死んじゃう)
(……ハァ、はぁい)
次の瞬間、轟音と共に影が落ちた。空を覆い尽くすほどの巨影。紅蓮の鱗を持つ巨大な――伝説にのみ語られる赤き古竜。その姿は神竜の倍以上の巨体を誇り、声を発するだけで天地が揺れる。
「メ~ル~ラ~グ~ノ~スゥ~~~~!」その声はミレイユのものだった。普段は艶やかな魔導士の装いを纏い、気怠げに微笑む美女。その正体が万年以上を生きる古竜であったとは言葉に聞いていてもこれ程の姿だったとは想像も出来なかった。彼女は竜の口から炎を吐かない。ただ、一喝した。
「あぁあぁあぁ貴女様は、赤き古竜・ミレファルゴ・アストレイユ様!!」神竜は格上の古竜にビビり散らかしている。
「アンタねぇっ!あっ……ゴホン。貴様、竜の掟を忘れたか! この小娘がぁっ!」大地が震える。その威圧だけで熾焔神竜の翼から炎は消え、巨体は震えた。
「わ、我は……ただ我が子を……!」必死の反駁すら、声は掠れている。
怒り怒られる二匹の竜に圧倒され、卵の横で立ち尽くしていたアクス。
ふと、ピシリとかすかな音がした。神竜のが守っていた卵の最後のひとつがひび割れたのだ。メルラグノスの焦燥に満ちた瞳が釘付けになる。
孵化……パカリと卵が蓋のように開き、炎の揺らめきに押し出されるようにして転がり出た小さな体は、偶然にも近くにいたアクスの足元へと抱きついた。目を開いたばかりの瞳が、真っ先にアクスを映す。
――刷り込み。卵生の子は、最初に見た存在を親と認識する。ぴぃという弱々しい鳴き声に、場の空気が凍り付いた。
幼竜はアクスに抱きついたまま、また小さな鳴き声を上げた。アクスはそっと抱き上げ、神竜を見上げる。
「……お前も親なら、子供が傷つけられる気持ち、わかるだろ?お前の子供は無事だったが、竜人のみんなは家族を亡くし、癒えない傷を負ったんだ、お前がやったんだぞ!」
その言葉に、メルラグノスの怒気が揺らぐ。卵が孵らぬ苛立ち、若竜人の挑発、積もり重なった焦燥、帰らぬ命……だがいま、小さな命は確かに生まれ、アクスに抱かれていた。メルラグノスはついに項垂れ、深く低い声で答えた。
「……我が、愚かであった」村を襲わんとした怒りは悔恨の吐息となり、静かに消えていく。
「お前の子だ。大切にしてやれ」アクスは幼竜をそっと差し出す。
しかし幼竜は小さな翼をぱたぱたさせ、ぴぃぴぃ鳴きながらアクスの頭に飛び乗りしがみつく。メルラグノスはその姿を慈しむように見つめ、深く頷いた。
「いや、その子はお主に託そう。」そう言い残し、炎の翼をはためかせ、先に孵化した幼竜達の無事を確認する。
「人間、名は」
「アクス」
「そうか、アクスよ、我とその子は繋がっておる。何かあればその子を通して我に語りかけるのだ。さすれば、お主ごと我が子を守ってやろうぞ」
「それば頼もしいな、これから宜しく、メルラグノス!」
「こちらこそ、我が子を頼んだぞ」
「あ、あの岩邪魔だろうから良ければ持って行くぞ」
「あぁ、すまぬな、まぁそちらの若造が投げ込んできたのだがな」
「悪かったよ、じゃぁ俺らはこれで、孵化おめでとう、仲良く暮らせよ」
「うむ、達者でな」
アクスの仲間に幼竜<リオル>が仲間に加わり、リオルを通し間接的に熾焔神竜メルラグノスの加護を受けた。ついでに若竜人カインが投げ込んだ岩<カルバリオン>を手に入れた。
(ラッキー♪ノア、あと宜しく)
(畏まりました、ヴァネッサも喜ぶでしょう)
動けなくなったガルザーを担いで村へ戻ると、人々は涙と歓声で出迎えた。命を奪われた者の墓標は消えない。だが新たに失われる命は防がれた。アクスは膝をつき、傷を負った妹セレネの傍にガルザーを座らせた。セレネの痛ましい火傷はまだ癒えない。治癒魔法でも焼痕は残り、痛みも消えない。
「すまない、俺が守れなかったばっかりに……」
「生きているだけで、十分よ」
逞しく育った息子の弱々しい背中を、母セイラが優しく、静かに撫でた。涙に濡れた声が、夜の焔の中で揺れていた。
翌日。
「重症者を動かすなんて無茶だ!」
村人は反対するが、セレネの状態は日ごとに悪化しており、今動かさなければ死を待つだけ。
ガルザーは冷静に、しかしはっきりと言う。
「このまま村に置いておいても助からない。竜国王都の神殿に運ぶしかない」
「だが道は険しい!馬車で揺らしたら衰弱死する!」村人の言い分ももっともだ。
「では……どうすればいいのだ……」ガルザーの力なき言葉に、村人達も目を伏せる。
「なら俺の馬車に乗せないか?心配いらない。寝台に横たわっているのと変わらないよ」アクスが提案する。
「馬鹿を言うな。どんな馬車だろうと揺れもせぬわけがなかろう!ふざけているのか!」ガルザーは憤りを露にする。
「まぁ物は試しさ、急ぐんだろ?騎士団の皆も竜車でついてきてくれ!」アクスは馬車に乗り込む。
セレネを運び込み、慎重に寝かせる。ガルザー自身も看病の為に馬車に乗り込み、扉を閉めるむ。ガルザーは険しい顔で座り込み、妹を見つめる。――室内がひと時の静寂に包まれる。
「……ふむ、乗り心地は悪くない……さぁ、急いでくれ、アクス殿。妹がもたぬ」ガルザーは焦燥に駆り立てられながらアクスを急かす。
「ん?もう走ってるよ?」アクスは飄々と応える。
「……は?」窓を見たガルザーの瞳が見開かれる。
村が、風景が、既に後方へと流れていた。かつての泉の宿までの競争を思い出させる驚異的なスピードで進む馬車の中、ガルザーは無音に等しい静寂の中にいた。
「……馬鹿な。まるで動いておらぬかのようだ……揺れすらない」
「快適な旅のための工夫ってやつさ。結果的に、妹さんを運ぶのにも役立ったってだけだ」アクスは欠伸をかみ殺しながら、肩をすくめる。
ガルザーはしばし言葉を失い、静かにセレネの寝顔を見つめる。その表情に浮かんだものは、驚愕と……深い安堵だった。
竜の生態について
亜竜の生態はトカゲとほぼ同じですが、竜はまず男女の性別がありません。全ての個体が単体で卵を生み、自分で育てます。しかし、卵を生み育てられるのは絶対的な縄張りを持つ強い竜のみで、縄張りの無い弱い竜が卵を産んでも他の竜に食べられてしまう上、竜自体長生きな為か成長がとても緩やかなので、最強種とはいえ意外と個体数は少ないです。天敵は生態が同じである同族、世界最強種の竜がこの世界で最も生き抜くのが難しいとは皮肉な話ですが、そのサバイバルを勝ち抜いてこそ真の最強たる竜。ただ強く生まれただけじゃないんですね。
人物イメージ画像一覧はコチラ
https://ncode.syosetu.com/n1501lc/
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引き続き次回作もお楽しみ下さい♪




