第47話:『山村の惨状、山頂に参上』
毎日18時投稿!・・・予定です(なるべくがんばります)
翌日、一行はサンドラの街を北に進み、森を目指す。森の入り口付近の木が無くなり、街道のようなものが整備されて始めいた。丁度森国のエルフの警備隊と出会った。しかもセリスだ。これは好都合。
「セリス、すまないが急ぎの用だ。森の西まで送ってほしい。女王には帰りに必ず挨拶すると約束する。うまく伝えておいてくれ」
セリスはは即座に了承し、道を準備する。そして次の瞬間――。視界が揺れたかと思うと、彼らは一瞬で森の西の境界に車ごと移動していた。
「なっ……!? 一瞬で……!」ガルザーは目を剥く。
森を抜けた後は山岳地帯を越える。
本来なら森を突っ切っても一月程度はかかるはずの行程――。だが彼らは、たった二十日で竜国の国境へ到着してしまった。
「……こんなにも早く……アクス殿、礼を言う。貴殿がいなければ到底間に合わなかっただろう」ガルザーは感嘆し、深く頭を下げた。
「いやいや、俺は特に何もしてないですよ。エルフ様のおかげですから、ってな」当のアクスは、例によって手をひらひらさせて答える。
(またか……)と、ガルザーは心中で苦笑した。
竜国の外れにあるガルザーの生まれ故郷――かつては緑と活気に溢れた竜人の村は、熾焔の焼け跡をいまだ深く刻んでいた。黒ずんだ焦土の上に、骨組みだけが残った家屋が並ぶ。半ば炭と化した梁の間に仮設の布が張られ、そこが家族を失った者たちの寝床になっている。
広場の一角では、女竜人たちが大釜で粥を煮、重傷者に匙を運んでいた。呻き声が風に混じり、誰もが顔を伏せている。襲撃から二十日以上経っても、痛みは癒えていなかった。
村の外れには、並んだ新しい墓標。真新しい石の前に、涙を枯らした母親が黙って腰を下ろしている。ガルザーはその光景を見つめ、拳を固く握った。彼の胸を締め付けるのは、自らが間に合わなかった悔恨ではない。報せを受け、誰よりも早く駆け戻ったはずなのに――村は既にこの有様だったのだ。
「俺が……故郷を離れたりしなければ」
竜国で英雄と呼ばれている男が絞り出す声は、小鳥の囀りよりも弱々しかった。強さを求め、世界を巡った歳月。英雄と呼ばれるに至った誇り。それでも、背を向けていた間に失ったかつての日常は取り戻せない。
その時、村の生存者たちがガルザーに気づき、押し寄せた。泣きながら抱きしめる母セイラ、白髪が混じりながらも背筋を伸ばした父オルド、そしてまだ幼い弟ディラン。あとは……
「ガルザー! 帰ったのね!」
「無事でよかった……! お前がいれば、また……!」
「にいちゃん!にいちゃん!うわぁぁぁぁぁぁ!」
震える腕の温もりが、英雄を縛る鎖となった。彼は答えず、ただ強く抱きしめ返すしかなかった。
「……セレネ、セレネはどうした!まさか……!」ガルザーは妹の不在に動揺する。
「落ち着いて、セレネはまだ生きているわ、でも……」母セイラの顔には陰りが見える。
その様子を見てガルザーの表情が凍りついた。
家に入ると、布団に小さな体が仰向けに横たわっていた。まだ十五にも満たない若い竜人の子。片腕は焼け落ち、背中には大きな焼けただれた痕が残り、痛みに呻きながら浅い呼吸を繰り返している。
「これは……」アクスは直視できず目を背けた。
焼痕は赤黒く、ただの炎ではありえない禍々しい力を帯びていた。ガルザーは震える手で子供の手を握り、悲しみと怒りの感情を膨まらせる。
「なぜ……妹がこんな目に……!」ガルザーが涙を流す。
「おねえ、ちゃんが、ひっく、僕を、ひっ守っ……っ……」弟ディランが泣きながら話すが、要領を得ない。
「……セレネが神竜の炎から身を挺してディランを庇ったのだ。」父オルドが語る。
「そうでしたか、それで背中に……勇敢であった、我が妹よ……そうだ、そもそもなぜ神竜が我らの村を襲ったのですか!」
「……の息子のカインが……神竜に……」母が涙を拭いながら説明する。
「……何と愚かな…‥!」ガルザーの目が鋭く光った。
やがて一人の若竜人カインが連れてこられた。まだ十代半ば、背中に早熟の翼を得て、力を誇示したい年頃。その顔は青ざめ、全身を震わせている。
「……ぼ、僕が……」
「どういうことだ」
「ただ……ちょっと……ちょっと挑発しただけなんです! 神竜様の巣の近くに行って、い、こっ小石を投げて……そしたら……!」嗚咽混じりに吐き出す告白。
「馬鹿者ぉ!」ガルザーの怒声が響く。
村人たちは皆、怒りと呆れの入り混じった目で若竜人を睨みつけるも、続いて怒鳴る事はしない。もう二十日も前の事だ、散々吐き出した後なのだろう。
「……す、すみません! 本当にすみません! 僕のせいで……!」カインは震えながら膝をつき、涙を流して謝罪した。
ガルザーは拳を震わせ、殴りつけたい衝動を必死に抑え込んだ。深く息を吐き、重く言い渡す。
「……軽率だったな。だが俺も昔は無鉄砲で無謀な真似をした。若さゆえの過ちというものもある」
「……!」若竜人は顔を上げ、驚いた表情を浮かべた。
「二度と繰り返すな。お前の過ちは、この村の痛みとなった。その罪を一生背負って生きろ」
若竜人は大粒の涙を流しながら、深く頭を垂れた。
翌日。ガルザーとアクス、そして数名の戦士たちは、熾焔神竜が棲む火山の頂上へ向かった。大地は赤く爛れ、熱気で空気が揺らぐ。溶岩が流れるカルデラの中心に、巨大な影が蠢いていた。
「熾焔神竜、メルラグノス……」ガルザーが低く呟く。
黄金の瞳、漆黒の鱗、背には灼熱の翼。圧倒的な存在感があたりを支配し、近づくだけで竜人戦士たちの膝が震えた。
「何しに来た、人の子よ」雷鳴のような声が火山を震わせる。
ガルザーが進み出る。「神竜よ!こちらに敵意は無い、先日の浅はかな行為は改めて謝罪する。しかし、若き者の好奇心ゆえだ、ただの小石程度で村を襲うのはやめろ!どうか怒りを鎮めてくれ!」
神竜の瞳がぎらりと光り、唸り声が響いた。「小石……? これが小石に見えるか!それに好奇心だと?貴様らは好奇心でこんな岩を投げ飛ばすのか!我が卵を脅かしたのだぞ!」神竜が示す先には卵と同じくらいの岩が転がっている。
(……岩?話が違うではないか、あの小僧)ガルザーの表情が歪む。
「し、しかし、これ以上はもう止めてくれ!其方の炎で仲間が何人も死んだ!我が妹も……決して癒えぬ傷を負った」
「貴様らの家族など知らん! 我が子が……孵らぬ! 片時も離れずもう何日も魔力を与えているのに! その苛立ちも知らずに我を挑発した……許せぬ!」咆哮と共に炎が噴き上がり、岩壁を赤く染める。
怒りと焦燥が混じり、理性の糸が切れているのがわかる。どれほど説得しても、耳を貸す様子はなかった。
「……仕方ない」ガルザーは目を閉じ、短剣を抜いた。
「対話が無理なら、力で止めるしかない」
空気が一瞬で張り詰める。炎の守護神と、竜国の英雄――避けられぬ戦いの幕が、いま上がろうとしていた。
熾焔神竜メルラグノスとの対話は決裂し、遂に戦闘が始まった。
竜人について
竜人は生まれた時は翼がなく、普通は成長するにつれ翼が生え、大人になります。ただ竜人にも個体差があり、見た目がほぼ人間の者から、体の一部に鱗が生えている者、戦闘時に一時的に竜の素質が現れるもの、見た目殆ど竜の者。中には大人になっても翼が生えない者だって居ます。
その中でガルザ―はエリート中のエリート。普段も全身鱗で顔は竜そのもの、翼も大きく戦闘力も竜国でトップクラスです。次回、そんなガルザ―がどのように戦うのか、至竜の二つ名の謎も次回明かされます。お楽しみに!
人物イメージ画像一覧はコチラ
https://ncode.syosetu.com/n1501lc/
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引き続き次回作もお楽しみ下さい♪




