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無能転生者、何もせず遊んでたら異世界救ってました。  作者: 真理衣ごーるど
╰╮第7章:ディアドラ竜国編╭╯
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第46話:『至竜の焦燥、走竜と競走』

毎日18時投稿!・・・予定です(なるべくがんばります)

 王都での騒乱からしばらく。


 エリシュナを拠点にのんびり過ごしていたアクス、そこそこ依頼をこなし、ギルドの酒場やアーク内でだらだらと過ごしていた。


 そんな折、ギルドで依頼を見ていたアクスの前に現れたのはSランクパーティ竜人騎士団リーダー<至竜・ガルザー=ドラグニス>帝国解放奴隷護送依頼で指揮を執った竜人の冒険者だ。


「久しいな、英雄殿」ガルザーが声をかける。

「勘弁してくれよ、A程度の俺が英雄だったら、Sのあんたは神だよ」アクスは恐縮しながら答える。

「少し話したい、良いか」2人は酒場のテーブルに着く。改めて対峙するとすごい迫力だ・・・顔が。まるで竜と対峙しているようだ、まぁほぼ竜なんだが。

「実は・・・我が故郷である竜国でトラブルがあり、一刻も早く帰郷せねばならぬ。すまぬが、貴殿に助力を頼みたい」至竜が無能に頭を下げる。

「ちょっちょっ頭あげてくれよ、話聞くから」アクスはすこし慌ててガルザーの頭を上げさせる。

「詳細は道中追って話す、というか秘匿性の高い内容故、聞いたら断れないと思ってもらいたい。道中の護衛はこちらで担う、貴殿は付いてくるだけでいい、謝礼も期待してくれ、絶対に損はさせないと至竜の名に誓おう、頼む!」


 アクスはふむ、と考え込む。


(お!丁度行きたかった竜国か!しかもSランク竜人からの個人依頼・・・恩を売る絶好のチャンスだな。戦い方や人並?冒険者の立ち回りも学べるし・・・ついでにカルバリオンを入手できればヴァネッサの武器強化も狙える。お得すぎるだろコレ)


「うーん竜国かぁ・・・でもまぁ他ならないアンタからの頼みだからなぁ・・・仕方ない、俺なんかで良ければ手伝うよ」アクスは表向き渋い顔をして、少し勿体ぶりながら了承した。

「感謝する、アクス殿。今日はうちのメンバーが食料や消耗品の買い出し準備をしている、明日の朝出発するとしよう」


 竜国へ行くには、サンドラを西に進み、レガリア公国を通過し西の山岳を越え、獣王国を北上し竜国へ入国するのが一般的だ。だが、日程は早くても1か月半かかる。


 翌日、エリシュナの門に馬車で向かうアクス。そこには竜人騎士団のメンバーと、立派な四頭引きの馬車・・・ではなく竜車が待っていた。騎士団の構成は竜人の戦士4名、進化前である蜥蜴人の青年2人の構成だ。戦闘は主に竜人が担当し、蜥蜴人は後方支援および雑用や御者、見習いと言った所か。誰かの子供か兄弟か何かだろう。詳しくは聞かない。


 戦士は盾と剣の騎士、盾と槍の兵士、盾と杖の魔導士、そしてガルザーは・・・短剣一本だ。ただこの短剣は宝器であり、戦闘によって自在に形状を変える・・・らしい。人間のように武器適正はないが、身体能力と技量が高い竜人は大抵の武器が扱える。聞いた噂が本当なら、実際にお目にかかれるチャンスも来るだろう。


「来たな、アクス殿、諸々問題ないだろうか」S級の会話には無駄がない。

「あぁ、ばっちりだぜ!しかしすげー竜車だな」アクスは驚愕の表情を見せる。

「王都にあったグランステッド用の馬車に少し手を加えてな。走竜に引かせるのに丁度良い大きさだったのだ。先日の助言感謝する。」


 解放奴隷護衛の時に馬車の良さをプレゼンしたが、まさか即採用とは思い切りが良い。竜の調達は・・・聞かないでおこう。


「そういう訳だ、すまんが貴殿の馬車では恐らく追い付けなかろう。御者には休みを」

「待ってくれ旦那、ウチの御者を舐めちゃあいけない。こいつはグランステッドより早いぜ?」


 アクスはガルザーの提案を少し煽り気味に返す。


「ほぅ、ではサンドラとの中間にある泉の宿まで競おうではないか、今日はそこで宿を取る予定だ」ガルザーはノリノリである。

「了解だ、負けたら御者は帰して竜車に乗せてもらうよ」


 チャリオ対竜車の壮絶レースバトルが今、始まる!!!


 エリシュナの門を抜け、広がる街道。竜国行きの道は遠い。だが、その第一歩は意外にも――レースの号砲から始まった。


「いくぞ走竜!進めー!」走竜に”またがった”ガルザーの合図とともに、たくましい走竜が唸り声を上げ、騎士団を背に乗せ、竜車を引いて駆け出す。地面を蹴る爪の一撃ごとに、土煙が爆ぜた。

「よし、チャリオ!見せてやれ!」チャリオと並んで御者台に座り、アクスが掛け声を飛ばすと、彼の馬車も同時に地を蹴り、爆発的な加速を見せる。


 竜人騎士団の面々は驚愕した。「なっ・・・!? 人の馬車が、竜車と並んで・・・!」


 街道を疾走する二つの影。馬脚が大地を叩き、竜爪が大地を抉りながら駆け抜ける。風を裂き、車体が揺れる。


 互いに一歩も譲らぬ攻防――。やがて、遠方に泉を囲む小さな宿場が見えてきた。


「どうした走竜よ!あと一息だ!最後の力を――!」ガルザーが叫び、竜が全身をしならせる。速度が一段と跳ね上が・・・らない。

「さぁ、チャリオ。勝負どころだ」アクスは口元に笑みを浮かべる。その瞬間、チャリオは爆発的に加速し――。竜車を振り切った。

「――ッ!?」ガルザーの目が驚愕に見開かれたまま、竜車はわずかに遅れて宿場に到着した。


「・・・見事だ、アクス殿」宿前で竜車を止めると、ガルザーは潔く頭を下げた。

「この走竜に勝つ馬車など、世界に存在するとは思わなかった。秘密を・・・教えてもらえるか?」


(やっべ、調子に乗り過ぎたか?実は馬が王都の禁書庫の知恵と魔人の魔核石で作ったノア特製のゴーレムだなんて言えないしなぁ・・・ノア、何か言い訳考えて?)

(畏まりました、では・・・)


「・・・いやぁ、大したことじゃないさ。ただ・・・走竜くらいのサイズなら背に乗るより、全員車に乗って引かせた方が楽なんだよ」アクスは頭を掻きながら、気の抜けた声で答える。

「なに・・・?」

「背中に何キロも載せたら、いくら竜でも疲れるだろ? でも車輪なら重さを転がすだけで済む。・・・ま、今回はスタミナの勝利、かな?」


 ガルザーは絶句し、竜車を振り返る。確かに、走竜の息は荒い。対して馬車の馬は既に落ち着きを取り戻し、脚さばきはむしろ軽快にすら見える。


「なるほど。単純だが、誰も気づかなかった・・・! 貴殿、やはり只者ではないな」

「い、いやいや、ちょっとした知恵だよ、知恵!」アクスは慌てたように手を振った。


 蜥蜴人たちはぽかんと目を丸くし、騎士たちは苦笑を隠せなかった。

 その夜。泉を望む宿の食堂には、竜人騎士団とアクスの一行が集っていた。竜人の好物で有名な炉で焼かれた泉魚せんぎょの香りが漂い、樽から注がれたエールが並ぶ。


「乾杯!」ガルザーの豪快な声に合わせ、杯が打ち鳴らされた。

「アクス殿、改めて礼を言う。今日の一戦、負けは悔しいが、学ぶことも多かった」

「いやいや、俺は何もしてないって。チャリオと馬(・・・いや、馬型ゴーレムだけど)がすごいんだよ」

「ふむ。しかし“背に負わせるより、引かせる方が負担が軽い”とは・・・。我ら竜人は力に任せがちだが、知恵はかくも道を開くのか」ガルザーは杯を傾け、深々と息を吐いた。

「アクス殿、竜国へ共に行けること、ますます楽しみになってきたぞ」

「俺はただのお供だよ。でも、まぁ・・・よろしく頼むぜ、ガルザー」アクスは揚げた魚の骨をつまみながら、苦笑交じりに応えた。


 夜は賑やかな笑い声と共に更けていった・・・。

 翌日、朝靄に包まれた泉の宿を後にし、一行は再び街道を進み始めた。昨日のレースと夜の酒盛りを経て、今日は竜人騎士団も新しい試みを導入していた。――全員が竜車に乗り込み、走竜には牽引だけを任せる。


「・・・なんと静かな走りだ」竜人の槍兵が感嘆の声を漏らす。


 走竜の負担が減り、重みと安定感を増した車内に揺れはほとんどなく、走竜の息づかいも軽い。


「本当だ、昨日はもっと荒かったのに・・・」見習いの蜥蜴人青年が目を丸くする。彼らにとっては“常識を覆す体験”だった。

「理屈だけでは信じ難かったが、これほどとはな。竜の脚にまだ余力がある・・・」ガルザーは腕を組み、静かに頷いていた。


 ふと目をやると、アクスは窓際で欠伸をしながら、涼しい顔をしている。


「あれのどこが“無能”なのだ、その呼び名は、もはや彼に相応ではない」魔導士の竜人がじっと彼を見て、小さく呟いた。


 アクスは聞こえなかったふりをして、馬車の中で昼寝を始めた。その飄々とした態度が、かえって一行の中で妙な信頼感を生み出していた。日が赤く染まる頃には、遠方に小さな町の屋根が見え始める。道行く商人たちが竜車の威容に道を空け、子供たちが歓声を上げて手を振った。


「見えてきたぞ、サンドラの町だ」ガルザーの声に一行の目が輝く。


 旅はまだ始まったばかりだが、すでにその空気は少し変わっていた。竜車は力任せではなく“知恵”によって進む。その教訓が、竜人騎士団の胸に小さな誇りを芽生えさせていた。

 サンドラではレガリア公国産の珍しい食材や料理を楽しむ。夕食を済ませた後、ガルザーは地図を広げ今後の工程について打ち合わせをする。


「・・・最短はリュミエールの森を斜め北西にを突っ切ることだ。それで10日くらいは短縮できる。だが・・・森国の警備は厳しい。そこで貴殿の出番だ。森での功績は聞き及んでおる」とガルザーは言う。

「あぁ、任せてくれ。森国の女王陛下とも縁が出来たし、護衛の警備隊に話を通せば西側まで案内してくれるよ」アクスはあっさり答えた。

竜と亜竜の違い

 アルセイデアでは一般的に、一定以上の大きさのある鱗と手足がある生物を竜または亜竜と呼称し、馬より大きければ竜種、それ以下はトカゲと認識されることが多いです。竜と亜竜の違いは手足翼の数で、生物として根本的に違っています。手足翼を全て持つ竜種はこの世界で最強の生物であり、最も弱い個体だとしても成熟した竜を倒せる他生物はいないとされています。対して亜竜種は走竜やワイバーンなど、手足翼が揃っていない種族が分類されますが、所詮大きなトカゲでしかないので、竜種とは呼ばれながらも種族としての戦闘力は大分弱めの位置にあります。では竜人は?それは次回の後書きにて。


人物イメージ画像一覧はコチラ

https://ncode.syosetu.com/n1501lc/

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引き続き次回作もお楽しみ下さい♪

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