第31話:『美従士の新武器、カグヤの真の力』
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夜。宴が終わると同時に、アクスたちは今後の宮廷滞在を正式に許可され、それぞれの部屋を割り当てられたのだった。
王女が部屋に入って行くのを見届けたあと、アクスと従士たちは一度アークに帰還した。
集合場所は演習室。近未来的なシミュレーションルームを思わせる空間で、壁一面には光のパネルが並び、床は滑らかな黒鉄のような質感を放っている。ただし――ところどころ、うっすらと線のような斬撃痕が刻まれていた。
「ドワーフによる新武器のおかげで、ついに斬撃で壁に傷を付けられるようになりました!」
カグヤが鼻息荒く胸を張り、どや顔を決めている。その顔は「もっと褒めて!」と書いてあるようで、アクスは思わず苦笑いした。
「はいはい、ご満悦なようで何よりだな」
先ほどの宴で出会ったグラン爺から聞き出した知識は、正直「仮説」や「妄想」に近いものも多かった。だがノアにとっては相当に有益だったようだ。
「グラン殿の推論には誤りも多々ありますが、それでも我々の武装をさらに進化させる足掛かりとなります。エマ、ヴァネッサの武器、さらにアークも強化可能です」
「でも、もう現時点で十分オーバー戦力だしなぁ……」
アクスがぼそりと呟くと、ノアは小さく微笑んで首を振る。
「では程々に調整しておきます」
まずエマの<ワンド>について。
従来のものは<ダイヤ型の魔石>が先端に装着されていた。だがエマがよく使う防御魔法や回復魔法は、球状に展開する性質を持つ。ならば魔石の形も球体の方が適しているそうだ。
「水晶の方が都合がよろしいでしょう。より自然に展開が行えます」
さらに柄の反対側には<サイコロ型の魔石>を装着。ただし角ではなく「面」に柄を接合する形に改良する。刻める魔法陣は一面減ってしまうが、サイコロ型はタンクとして魔力を貯蔵でき、さらにスタンド代わりにもなる。
聖魔法は本来目の前に水晶を置き手を組んで祈ったり占い師のように水晶を覆うように手をかざしたり、範囲魔法なら両手を横に広げたりするのが正しい所作で、いつもは聖魔法を使うときにワンドを地面に突き刺して発動しているが、地面が硬かったりすると床かどこかの台に置いて発動しなければならず、ちょっと格好悪い。かといって水晶単体は持ち運びや戦闘時の取り回しが悪い。
「なるほど。置いて祈る動作も自然にできる、ってわけか」アクスは感心した。
そして材質。ミレイユと同じミスリルでも良いが、ノアは別案を出した。
「実はエマ、こう見えてカグヤに次ぐ怪力の持ち主なのです」
「えへへっ、ちょっと恥ずかしいですぅ」エマが小首を傾げ、にへらと笑う。
「なぜ怪力が恥ずかしいのですか!戦闘に有利ではありませんか!」カグヤが語気を荒げる。そういう事ではない。
「・・・ですから、いざとなれば物理攻撃にも用いるべきです」
ノアの提案により、柄は<魔鉄鋼>へ変更。ミスリルより魔力の伝導率は劣るが、強靭さに優れている。つまり――ハンマーとしても使えるワンドが誕生した。
「サイコロの魔石はカウンターウエイトにもなります」ノアが指摘する。
「……殴ったら魔石壊れないか?」アクスが当然の疑問を口にする。
「魔石の周囲を防御結界で固めれば可能でしょう。――エマ、実際にやってみなさい」
ノアが目の前に岩の塊を出現させた。
「は、はいっ」
エマは新しいワンドの魔石部分を防御結界で覆い、そのまま岩に叩きつけた。
バキリッ!
岩が、簡単に砕け散った。いや――正確には、結界そのものが岩をえぐり取ったような跡を残している。
「な、何だこれ……」アクスは目を丸くした。
防御結界には特殊な性質がある。対象に展開した場合、その対象と結界の位置は強制的に固定される。だから人に展開すれば結界ごと動けるし、地に展開すれば衝撃を受けても仰け反らない。
つまり――ワンドに展開し、「殴打」に転用すれば、無反動の超硬質打撃兵器になる。
「最強の打撃武器じゃん!……でもリーチが足りないかな。なぁエマ、この結界って杖の三メートル先とかに展開できないのか?」
「で、できる・・・ますよぉ」
エマは杖を振ると、三メートル先に小さな結界を出現させた。そしてそのまま地面に振り下ろす。
べキリッ!
演習室の床――カグヤの斬撃ですら浅い痕しか残せない強度を誇るその床が、無惨にえぐれた。
「わぁぁぁぁぁ! ごめんなさぁぁぁい!」
慌てて杖を振り上げた瞬間、今度は天井にゴンッと当たり、窪みができる。
「え、えええええ!? ア、アクス様、ノア様ぁぁ!」
エマはパニックになって杖を持ったままアクス達の方へ振り返り、追従して結界が飛び回る。
軌道上にいた従士たちは軽やかに回避。しかし壁が容赦なくえぐられる。
「す、すみませんすみません!」
深々とお辞儀をするたびに、杖の先の結界がゴンゴンと床と天井に直撃して破壊を広げていく。
「いいから結界を解きなさい!!」
ノアの鋭い叱責に、エマはハッとして結界を解除した。
……近未来的で美しかった演習室は、もはや荒廃した廃墟のような無残な姿に。
「防御魔法のヤバい使い方編み出したな……バ、バリアハンマー……みたいな?」アクスは呆然と呟いた。
こうして、エマの新ワンドと必殺の新技<バリアハンマー>が爆誕した。
(これ……大きな結界で薙ぎ払いとかしたら……国ひとつ簡単に潰れるんじゃ……?)
アクスは冷や汗を垂らしながら、心に刻んだ。
(エマさんは絶対に怒らせないようにしよう……いや、みんなだけど。)
続いては、ヴァネッサの武器である。
ヴァネッサは魔法制御と命中精度が群を抜いており、現在使っている二丁の魔法銃で通常戦闘に不満はなく、感覚もすっかり手に馴染んでいる。
「・・・ですので、基本の形は変えたくありません」彼女は毅然と告げた。
ただ――。
「・・・ですが、一つだけ悔しかったことがあります。あの魔王の目玉、そして魔王虫の関節を貫けなかったこと。あれだけは、どうにも心残りです」
強い声音に、アクスは小さく頷く。確かに、彼女ほどの技量を持つ者が通じなかった瞬間――それは誇りを揺るがす痛恨の体験だっただろう。
そこでアクスはノアに視線を送る。
(ノア・・・)
(・・・承知しました。アクス様の記憶より、形を再現いたします)
二人が共有したイメージは――<対物ライフル>。遠距離狙撃に特化した、ロングレンジスナイパーライフルだ。
ストックとマガジン部には板状の魔石を仕込み、そこに魔力を充填する。銃口――マズルの内部には棒状に加工した魔石を組み込み、先端は鉛筆のように円錐形に尖らせる。
その構造は魔力の加速性、直進性、貫通力に特化し、先端へ狭められた密度の高い魔力が光線として放たれる。
ただし欠点もある。二丁魔銃の魔弾のように撃った後の操作や軌道補正は一切できない。撃つ瞬間が全てだ。
完成した武器は、洗練されたシルエットのライフルだった。
「……試しに撃ってみなさい」ノアが手渡す。
「え、ここでいいのですか?」ヴァネッサは少し戸惑う。
「大丈夫です。この壁はあらゆる魔法攻撃を吸収しますから。物理攻撃は……まあ、改善の余地ありですが」ノアが複雑そうに付け足す。
「承知しました・・・これは、初めて見るのに、手に馴染みます。使い方が自然とわかる・・・」
ヴァネッサは静かにライフルを構え、狙いを定め、呼吸を整える。そして、引き金を引く。
その瞬間アクスは思った(エマのバリアハンマーって物理攻撃なのか?)
――カチリ。
直後、演習室を満たすのは質量を感じさせるほどの高密度な光。一瞬で壁を貫き、そのまま――アークの外へ突き抜けていった。
けたたましい警告音が艦内に響く。
「っ!?」「な、なんだ!?」アクスと従士たちが思わず身構えた。
「だだだ大丈夫ですアークはすぐ修復可能です大丈夫落ち着いて下さい大丈夫です!」
珍しくノアが一人で大慌てしている。警告音はすぐに止まった。
「……外に出た光線の被害は?」アクスが冷や汗をかきながら問う。
「……大丈夫です。上空を抜けました。アークが天空にあって助かりました。地上で少しでも下に撃っていたら……星を貫通していましたね」
「……マジ?」アクスは心の中で頭を抱えた。
後に判明したことだが――。
・エマの<バリアハンマー>は、対魔法による吸収阻害、対物理による破壊効果を発揮した結果床を破壊。
・ヴァネッサの<ビームライフル>は魔力密度が高すぎて吸収が追い付かず、さらに光線の高熱で装甲を溶かして突破してしまった。
さらにライフル自身もマズル内部が溶解してダメージを受けていた。熱に耐える素材で覆わない限り、連射も最大出力も難しい。
「この世界にはカルバリオン――断熱鋼という素材がございます」ノアが説明する。
「西の大山脈、その北部に存在する巨大火山で採れる金属です。ただし――そこは熾焔神竜メルラグノスの縄張りです」
「しえん……なんだって?」アクスの背筋がぞわりとした。
「熾焔神竜。竜国では神と崇められる存在です。縄張りの石ころ一つ勝手に持ち去れば、烈火のごとく暴れ回り、周囲を消し炭にするでしょう」
アクスは頭を抱えた。
(いやいやいや……竜の国の神とか、相手にしたくねぇ……!)
ノアによれば、カルバリオンは竜国で一部流通しているため、交渉や交易で入手する方が安全だろうとのことだった。
ひとまずヴァネッサ用ライフルは、魔石の質と出力を抑えて作成。それでも二丁魔銃を遥かに凌ぐ威力を持っていた。
こうして四人全員の武器は強化されたのだが――。
「…………」
カグヤの顔が、すごく不満そうだった。他の三人の武器は劇的に進化しているのに、自分は「壁に傷が付くようになった」程度。実感が薄いのだろう。
(普段身近で護衛してもらって身としては、力は程々でいて欲しいんだが…)アクスは苦笑しつつも心の中で突っ込む。
ノアがそれに気づき、静かに声をかけた。
「カグヤ、貴女は他の三人と比べて、少し精神が幼く、暴走気味です」
「なっ……! わ、私が幼いと!?」
「もう少し落ち着いて行動できるようになったら……貴女の中に眠る真の力を解放しましょう」
「し、真の……力!?それは一体どんな――」カグヤの目が一気に輝いた。
「フフ、それはその時のお楽しみです。今言えるのは――ドワーフの刀は今の私の創造技術を凌駕しています、その力にも十分耐えられるでしょう・・・少々悔しいですがね。大丈夫。強いですよ、貴女は」
その言葉に、カグヤはすっかり上機嫌になり、早く冒険に行かせろとばかりにウッキウキでアクスに視線を送る。
(……幼いって、そういうとこやぞ)
アクスはツッコミたい気持ちを抑え、あえて何も言わなかった。今はただ、カグヤの自然な成長に期待しよう。
カグヤの真の力とは
実は現在70話まで下書きしているのですが、まだカグヤの真の力は出せていません。というか四聖が強すぎて異世界の敵が相手にならないという、他のバトル系の物語ではあり得ない味方インフレ現象が起きています。力の内容も候補が2つあってどちらにしようか両方出そうか、合わせ技にするか・・・皆さんはカグヤの力、どんなのがいいと思いますか?
人物イメージ画像一覧はコチラ
https://ncode.syosetu.com/n1501lc/
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