第21話:『ウルフで移動、エルフの意向』
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「よぉ、昨日はお楽しみ……器用な寝方してんな、無能の」
ライガルが朝からちょっかいをかけにきたが、アクスの少しのけぞって座ったまま寝ている姿勢に驚く。
「ん、あぁ、おはよう鬣の」
「俺様は鬣じゃねぇ、ライガルだ!」
「俺も名前は無能じゃなくてアクスだよ」
「お前は無能じゃねぇか」
「お前も鬣あるじゃないか」
「……わーったよ、アクス、これでいいだろ?」
「あぁ、宜しく頼むぜ、ライガル」
青年2人の大人げない会話にエルフ達も起き始める。昨日のエルフの子はいつの間にか木に掴まったコアラのようにアクスの胴体にがっちりしがみついている。
朝は軽めにジャムを挟んだサンドに塩と香辛料と昨晩の余りを適当に細かく切って沸かしたスープ。
王女には少し物足りないと思ったので、ノア特製干し肉のハーブオイル漬けを一品追加して提供。ご好評頂けたようだ。
「これからが本番です王女、念のため準備をお願い致します。」朝食後、部隊が分かれる前の最後の顔合わせをする。
「さて諸君、ここからが本番である。我々はこのまま南に転進して王都に帰還するが、アクス殿は本当にあの数を森まで送れるのか?ギルマスが大丈夫と言っておったが」ガルザーが訝し気に話す。
「まぁ大丈夫だよ。日持ちする食料もマジックバッグの中に多めに持ってきてるし。これからあるものを呼び寄せるが危険は無いから、絶対に戦闘始めるなよ?おーい!獣人は耳を塞いでくれー!」
アクスが大声で叫んだ後、ポケットから取り出したホイッスルを思いっきり吹く、フィーーという高い音が周囲に響く、耳の良い獣人たちはたまらず耳を塞ぐ。数秒後、南の森の方からドドドドという音と共に灰色の群れが土埃を撒きながら高速で近づいてくる。
「おぉ、なんだあの数、あれは、グレイウルフか?いやフォレストウルフか」
その大群は森の浅い地域に住むグレイウルフが100近く、更に森の深部にいる上位種のフォレストウルフが50程度。その先頭を走るのは一際大きなフォレストウルフ…のように偽装した雷牙だ。
「ありゃ森の主じゃねえのか?」ライガルは戦いたくて少しだけうずうずしている。
「いや、主というなら先日の大魔獣の話は聞いただろう、あれも大きいが、荷馬車を噛みちぎる程巨大ではない」ガルザーが冷静に返す。
ウルフの群れはアクスの前で停止し、お座りのポーズで待機している。ウルフに偽装した雷牙の頭をわしゃわしゃ撫で、安全である事をアピールし、エルフの所に向かう。
「皆にはこれからウルフ達の背中に乗ってもらう。小さいのには2人、中くらいのには3人、一番大きなこいつは俺が乗る、じゃぁ、頼んだぞ」
「ウォフッ」雷牙の一声で、ウルフ達はエルフの元に駆け寄り、伏せのポーズで待機する。
「さぁ乗ってくれ、大丈夫だ、危険は無いと保証する」
エルフが恐る恐る乗り始める。小さい子や腕が無い人は大人が抱き抱えるなど、人員をうまく調整、分配して何とか全員乗せる事ができた。
「よーしみんな乗ったなー?これからこのまま西の森に向かう、最初は軽めに走るからまずは慣れてくれ。股でぐっと挟み込むようにすると安定する。ウルフの毛は掴んでも大丈夫だ、人が引っ張ったくらいじゃ痛みは感じない。それより落ちないように気を付けろよー」
アクスは雷牙に乗り冒険者リーダーの所へ行き、別れの挨拶を告げる
「じゃぁみんな世話になったな。またギルドで会おうぜ!」
「待て待て待て待て説明なしかよ!なんだあのウルフの群れは、お前テイマーなのか?」
「おれは剣士だよ。テイマーのスキルが無くても仲良くはなれるもんさ。まぁこの魔道具のおかげでもあるんだけどな」
「その魔道具は…あーもうわかった!よくわからんけどわかった!そういう事にしてやるから、さっさと行け!」
「おう、じゃあな。ウルフ達、進めーっ!」
アクスの掛け声とともにウルフ達が動き出す、だがその動きは先程近付いてきた速さとは打って変わって、トットットッという軽快な小走り程度のもの。エルフたちもしっかりしがみついている。ウルフを乗せた部隊と一台の馬車は順調に西へと走り去っていった。
「…俺たちも準備するか」
「…そうだな」
南下する部隊も朝食を片付け、王都へと向かっていった。
合流地点から西の森までは馬車で5日、歩きなら15日はかかる距離。ウルフの全力なら2日で走破できるが、落ちないよう人を乗せながらだと大体3~4日程度になるだろう。2時間ごとに小休憩を取り、4時間後の昼に昼食と長めの休憩を取る。南下組も見えなくなったし、ここからはもう遠慮しない。
「さぁみんな昼食だ、取りに来てくれ、中身は全部野菜だから安心しろ」アクスはマジックバッグからテーブルを取り出す。実際はフリをしているだけでノアが転送しているのだが。
大きなテーブルの上にはノア特製の栄養たっぷり回復効果付きバゲットサンド、肉っぽい野菜入りだ。そして横には350個のコップと中には水、ではなく冷えたぶどうジュースだ。恐らく初めて食べる食感と、恐らく久しぶりに味わったであろう冷えた甘い果汁。皆嬉しそうに黙々と食している。
アクスは馬車をノックし、ドアが開く、中から王女が出てくる。
「食いながらでいいから聞いてくれ、皆に紹介したいお方がいる、こちらはアルケシア王国第一王女、ルーシェリア王女殿下だ」
「皆さま初めまして、ルーシェリア・セラ・ドラヴァルトですわ」
「アルケシアの代表としてリュミエール森国との親交の為にお忍びでご参加だ、皆仲良くしてくれ」
王女はぺこりとおじぎをする。
「きれー」
「きらきらー」
「おひめさまー」
大人たちはぽかんとしているが、子供たちの反応は素直だ。
王女はバゲットとコップを手に取り、子供たちの元へ行く。
「ご一緒しても宜しいかしら?」
「うんいーよー」
お互い終始ニコニコで昼食を取りながらキャイキャイ雑談している。たまにアクスの方を見てキャハハと笑いが出る、こんなSランク美青年捕まえて何の話題だろうか。
食事が終わり、1時間程休憩し、出発前に安全策を取る。
「一番小さい子と手足が無い子が3~4人居ただろ、ウルフに捕まるの大変だと思うから馬車に乗せる、連れてきてくれ」4人の子供と王女を馬車に乗せる。
中から「ふかふかー」「ねこしゃん!」等かしましい声が響いた。
午後からは少しずつ速度を上げながら2時間進んで休んで2時間進む。
夕方は焚火の設置を大人エルフに任せ、晩飯は野菜たっぷりのカレーライスを再現した。鍋は甘口と中辛の2つ。大人も甘口の方が好みだったが、ワインをふるまうと中辛も徐々に売れていった。初めて食す甘くスパイシーな食べ物、久しぶりの酒、皆満足そうだ。
夜はウルフにも水と食料を与える。ボアやミノの肉、丸々渡すと子供の前で無残な解体ショーがはじまるのである程度切り分ける、もちろんノアがだが。
森への道中、いくつか街を通り過ぎたが――エルフ350人を一度に宿に泊めるなど、到底不可能だった。結果、広大な草原に腰を落ち着け、夜空の下での雑魚寝となった。
とはいえ、ただ眠るには早い。疲れた身体を横たえながらも、火を囲んで自然と雑談が始まる。
子供たちは王女に群がり、楽しそうに話しかけている。中にはオルゴールの音色にうっとりと耳を傾ける子、あるいは少し元気を取り戻して、闇の中をキャッキャと走り回る子も現れた。その光景に、アクスの頬もわずかに緩む。
一方で、大人のエルフたちには少し真面目な話を持ちかけた。
「リュミエールでは、人間のことをどう見ていた?」
「……今はどう思っている?」
「帝国と王国、それぞれの違いをどう感じる?」
「……もし友好を築くなら、その糸口は?」
問いかけに、大人のエルフたちは表情を曇らせ、しばし沈黙の後、やがて口を開いた。
「我らは、人間を見下している……ように振る舞ってきました」
「けれど、本音を言えば――ただ恐れていたのです」
エルフは身軽で目も良い。だから高い木の上から矢を射かける戦法は、まさに理にかなっている。
だが――森を一歩出れば、その強みは消える。魔力適性が比較的低い一般のエルフでは、力ある人間や魔獣に到底太刀打ちできないのだという。
「……つまり“人間が怖い”というより、“森の外が怖い”のが正しい、か」アクスは焚き火の炎を見つめながら呟いた。
だからこそ、彼らは森を広げようとする。外に出るのが怖いから、森の方を外へ押し広げていくのだ。
エルフの森国は、森そのものの恵みは豊かだ。だがそれ以外はあまりに乏しい。誰でも読める歴史書を見ても、魔法や魔道具以外の文化は五千年以上ほとんど変わっていないという。
「変化を嫌う国民性、か……」アクスは心中で苦笑する。
外との交流を絶ち、進化を怠った結果――今や完全に時代遅れ。元・地球人の感覚からすれば、ほとんど原始的とさえ言える。
(……やっぱり交渉カードは“文化と技術”だな)
そう結論を出したアクスは、大人のエルフたちを相手に森国との交渉の秘策となる”ある物”を見せ、デモンストレーションを始めた。
手にしたのは、見慣れぬ異様な形状の品。その動きと性能を目の当たりにしたエルフたちは、思わず目を丸くし、細い瞳をさらに見開いた。
「……なんだ、これは……」
「人の技ではない……」
驚愕に満ちた声を耳にしながら、アクスは確信する。
(これは勝ったな)
あとは――。
「……あとは射殺されないことを祈るだけか」自分で言って苦笑するアクス。
だが、エルフたちは慌てて首を横に振った。
「絶対、大丈夫です」
「あなた様が矢で射られることなど、あり得ません」
その断言に、逆にアクスの方が不安になったのは言うまでもなかった。
人間とエルフの違い①
顔:エルフは肌が綺麗で全体的に整っている。鼻が高いが目は細い。スッピンのフランス人というイメージ。人間はかなり個体差あり。王女は美人で目もぱっちり、ハリウッド女優のようはゴージャス美人。アクスはジャニーズ系、ガルドはでかいドワーフのよう。
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