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無能転生者、何もせず遊んでたら異世界救ってました。  作者: 真理衣ごーるど
╰╮第4章:ザルグラード奴隷解放編╭╯
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第20話:『絶望の涙、希望の涙』

当作品を閲覧頂きありがとうございます。宜しければ是非レビューやご感想もお待ちしております。

 …森を抜けて暫く進んだ時点で遠目に人の大群が見えた。

 亜人メンバーは一旦足を止め、人間メンバーのみで馬で向かう。


 集団の周りを帝国兵がとり囲んでおり、亜人移民は歩く者と荷車に乗る重傷者、その荷車や食料を乗せた荷車を押す者等が見えた。


 合流の後、隊長らしき兵士から引き渡しの書類を受け取り、アクスがサインをして返す。書類を受け取った隊長は最低限の説明の後、そそくさと撤退した。


 荷車は持ってくなりその場で打ち捨てるなり好きにしていい。途中死者が出たら処理は任せるがゾンビ化対策の為出来れば燃やすか昇天魔法をかけるかして最低限埋めて欲しいとの事。まぁ冒険者としては常識だ。


 移民は3000人と聞いていたがノアの集計によると人数は3467人。おおまかに

 獣人が約1500、獣人と言っても兎や鼠など弱い動物の獣人と女子供だ。

 あとドワーフが約500、こちらも女子供と高齢の老人ばかり。

 アクス担当のエルフは300・・・より多そうだ。

 その他小人や魚人、ラミア、ハーピー、アラクネ、ダークエルフ、亜巨人、クワーム、他にも見たことない亜人が約600程。

 何と人間も500程入っていて、ノアによると元アルケシア国民らしい。国際問題だろこれ。だが今回アクスの担当はエルフなので、それ以外の面倒事は他に丸投げする事にした。


 亜人チームに合図を出し、お互いに近づいて合流、その場で野営の準備をする。


 移民たちの恰好はひどいもので、臭いも酷く何日も風呂に入っていないようだ。

 まずは風呂に入れる、奴隷の性か躊躇なく人前で全裸になる。

 土魔法で3つの大きな浴槽を作り、水魔法で水を貯め、火魔法で温める。

 身体を洗薬で洗った後1の水で流し、2の湯に入れて身体を温め、3の薬草が使った温水で解毒と小傷の手当、その後浄化魔法で綺麗にし、軽い回復魔法をかける。

 皆やせ細っているので、栄養が足りていない者へ重傷の回復魔法をかけるのは逆に危険なので、先に十分に栄養を取らせる必要がある。

 だとしても、欠損した目や手足まで再生する技術は現在の王国には無い。当然、竜国にも……ガルザーはやるせない思いに歯を嚙み締める。


 風呂に入れている間、たちこめるスープと焼けた肉の香りに反応はしながらも、恨めしそうに見ているだけで、その表情はどこか諦めたような雰囲気、自分は食べられないとでも思っているのだろうか。


 アクスは移民が運んできた荷車の食料を見る、腐りかけた果物、枯れた野菜(干し野菜ではない、茶色くなっている)、大きな土窯の中にはドロドロの白い液体、パン粥か?蠅がたかっている。こんなもの食わせてたのか。


 これはアクスのミスだ。帝国への方針①~④を決めた時、⑤奴隷を丁重に扱わせる。というのを入れていなかった。認識が甘すぎた。


 アクスは力いっぱい荷車の一つを持ち上げてひっくり返す。他の冒険者が飛んでくるが、中身を見た他の冒険者達も次々とひっくり返していく。

 亜人移民たちは絶望の表情を浮かべ、涙を流し、怒りの感情をこちらに向けてくるが反抗はしない。


「お前らにこんなもの食わせるか!あの肉とスープとパンの山を見ろ、あれはお前たちの飯だ!お前たちはもう奴隷じゃない!アルケシアの国民だ!アルケシアは亜人を差別しない!」


 アクスは勘違いしていそうな移民たちに檄を飛ばす。その言葉を聞いて移民達の涙は怒りと絶望から歓喜と安堵のそれに変わった。


「おいおい、無能のAじゃなかったのかよ、まぁ、能力使ってねぇけどな」肉を焼くライガルが大きめの独り言を言う。

「言ったじゃろう。あやつは英雄じゃよ」パンを切るザンガが返す。

「なるほど、四聖に愛された男か」エプロンをつけたガルザーがニヤリとした表情を浮かべながらスープを煮込んでいる。


 他の冒険者も大きな傷の応急処置、焚火の設置、配膳の準備、寝床の用意などせっせと行う。

 今日の飯は厚切り肉と野菜を挟んだサンドに、竜人特製スープのセットだ。エルフ用のサンドは肉の代わりにドライフルーツの蜜漬けを挟んでみた。


 移民に一人ずつ持たせる。最初は恐る恐る食べていたが、そのおいしさに黙々と食べ続ける。


「おかわりもあるぞ」


 ライガルの聞き慣れない”おかわり”というワードにきょとんとしている。


「腹いっぱいになるまで食っていいんだよ!並べ並べ!」


 と言うと焦って手元の飯を平らげ、数分後には長蛇の列が出来ていた。


 一通り食事が生き渡った所でアクスも食事を貰い、馬車に戻る。馬車は野営の端っこ、ドアは見られないよう外側を向いている。ドアを開けると王女が大きなぬいぐるみを抱きながら悶絶していた。


「王女様、今晩のお食事です」アクスが王女にサンドとスープを渡す。

「ありがとうございます。それからアクス様、物語全て見終わりましたわ。とても感動的なラストでしたわ!絵本や演劇に無かったシーンも…」王女の話は止まらない。

「すみません、明日には部隊が分かれますのでそれまでの辛抱です。別れた後エルフ達に紹介します。その後森に行きましょう」ふくれる王女を無視してドアを閉める。


 バレると説明が面倒なので王女の存在は秘密なのだ。馬車の事は特に詮索されない。それは初日の顔合わせの時にガルザーが明け透けに質問し、アクスの回答に納得する素振りを見せたから。冒険者は詮索御法度。質問は1~2回程度で、それで相手が語らなかったらそれ以上は話したくないという事、Sランクが納得した事に下位の冒険者は口を出さない。ここまで見通して真っ先に質問してきたのだとしたら、さすがはSランクといったところだ。


 アクスは馬車の陰からアークに転移、エルフ少女達と食事をする。風呂に入り、警戒されないよう武装を外したラフな格好に着替え、ノアから両手に収まるくらいの小さい箱を受け取りまた馬車の前に戻る。

 エルフ移民達とお話合いをする。エルフ達は一団に固まって食事を取っていた。おかわりをしたのか、食べるのが遅いのか…。


 ノアの集計によると人数は332人。やはり多い。ノアによると戦争用以外に一部の貴族や商人が無許可で隠し持っていた奴隷もいて、ノアがしっかり要所にタレコミを行い、完全に吐き出させたのだそう。安定のノアである。


 アクスはエルフの集団に近づく。皆ひどい状態だ。応急処置をしたとはいえ体中傷だらけ、殆どが両耳を切断され、片目や指手足の一部が無い者もいる。とりあえず挨拶をする。


「あー、こんばんは、食ってるやつはそのままでいいから聞いてくれ。俺はアクス、Sランクの冒険者だ。明日皆をリュミエール森国まで送る際の護衛を担当する」


 エルフ達は警戒しているのか、しっかり話を聞いているのか、完全に固まっている。


「メリル、メリル!!」いきなりエルフの一人が叫ぶ。


 目を向けるとぐったりとしたエルフの少女と、それを抱きかかえて叫ぶ若い男性のエルフ。少女の身体はやせ細り、意識が無い。かなり危険な状態だ。アクスはノアに指示を出し、少女に駆け寄る、手の平程の中瓶を取り出し、蓋を開け飲ませるよう促す、狼狽える男性を横目にアクスは少女の口を開け少しずつ瓶の中身を口に流す。少女の身体がぼんやりと光り、少女は意識を取り戻す


「お…」少女が少し声を出す。

「メリル!あぁ良かった、大丈夫か」男は安堵に涙を流す。

「お…い…」「どうしたメリル?」「…おいしい、あまい」死にかけていた少女の意外な言葉に場が和む。


 少女はノア特製回復薬の残りをゆっくりと飲み始め、飲み終えた頃には一人で立ち上がれる程回復していた。


「ありがとうございます、ありがとうございます…」周りのエルフ達は平服する。


 それは四つん這いになって腕を折り曲げ、頭を下げる。躾けられた犬のようで、土下座よりも屈辱的に感じた。プライドが高く人間を見下しているエルフをここまでにするとは、帝国から一体何をされたのだろうか…。やはり滅ぼすべきか。


「おいやめろやめろ!さっきも言ったがお前たちはもう奴隷じゃない!まぁリュミエールに帰るんだからアルケシアの国民ではないが、他国民だろうと変わらない、アルケシアは人種差別はしない。もうそんな事しなくてもいいんだ」


 アクスの言葉に安心したのか、辛い過去を思い出したのか、皆泣き出してしまった。収拾がつかなくなったアクスはノアから貰った箱を持ち直し、蓋を開ける。中から高く美しい音色が音楽を奏でる。ノア特製のオルゴールだ。曲は…


「ルリエル」

「ルリエルの眠りだ!」

「あぁ懐かしい」

「なぜそれをオb…人間様が?」


 エルフ達は泣くのを止め、音色に耳を傾ける。


 ルリエルの眠りはエルフの国に伝わるメジャーな子守歌。アークのエルフ達の中で、年少のエルフが夜泣きで困っていたところ、年長のエルフが歌い出し、泣き止ませるのを見たノアが覚え、寝かせる前に歌ってあげているのだそう、今では美従士全員も歌えるそうだ。


 その歌をオルゴールにしたものを持ってきた。効果は抜群のようだ。曲が何度かループし、皆曲に合わせて歌い出した。エルフ集団の美しい歌声に周囲も聞き入っている。5週回った辺りからだんだん笑いがおきて、少しおちゃらけながら歌う者も出てきた。


森の葉が そよぐ夜に

月のひかり やさしくともる

星の舟 夢を運び

風は歌う 眠りの歌

ルリエル ルリエル

森の子よ 安らかに

ルリエル ルリエル

朝まで 静かに


 6週回った所で蓋を閉じる。エルフ達が急に静かになる、少し残念そうだ。


「これは後であげるから、少し俺の話を聞いてくれ。改めて俺はアクス、アルケシアの冒険者だ…」アクスは明日の予定について説明する。


 このままこの集団と別れ、一気に西を目指す。

 距離はあるが乗り物は用意してるので歩く事はない。

 しばらく野営になるが水と食料は用意しているので我慢してほしい・・・等。


 一通り説明が終わり、今日はゆっくり寝るよう促し、集団から立ち去る。くいっと服を掴まれ、立ち止まるアクス、ふと見ると先程死にかけていた小さなエルフの少女、メリルだったか?がこちらを見上げている。


 少女はぐいぐいとアクスの服を下に引っ張りアクスを座らせ、あぐらの上にちょこんと乗り、体重を預ける。数秒後にはすやすやと寝てしまった。それを見た子供たちもアクスの周りに集まり、寄り添うように体重を預けてくる。最初はきゃいきゃいしていたが、数分後には殆どの子供が眠りについた。青年や大人のエルフ達も各々寝始める。


 微笑ましい光景ではあるが一つ問題が生じた。動けない。エルフの子供たちにより完全に包囲されている。座ったままでは寝れない。困った。ノア助けて…。


 首と背中に柔らかい感触を感じる。そのまま体重を預けると座椅子のようにもたれかかれる。ノアが空間固定背もたれを創ってくれた、大分楽だ、これならこのまま眠れそう。


 周りの集団も眠りにつく。夜警の担当も決めずに全員安らかに眠る。敵は来ない、風すらも吹かない、温度も湿度も快適。まるで何かに護られているような薄く紫の霧が立ち込める空間の中、一行は安らかな一夜を過ごした。

今回の依頼で棚ぼた的にAランクになったアクス。ここで冒険者ギルドのランクについて説明します。

SS:唯一級(現時点で該当者なし、ギルドもとりあえず設定しているだけ)

S :英雄級(複数の国から正式に承認された者、大抵はマスターになる)

A :主力級(大きな成果を果たし信頼ありと認められた選ばれし者)

B :逸材級(才能を認められた者、大きな成果を期待)

C :熟練級(依頼を充分にこなし、実績あり)

D :中堅級(通常の依頼なら問題なく任せられる)

E :一般級(得意分野に合わせた依頼を受付嬢が案内)

F :新人級(限定された依頼のみ)

G :登録者(草でもむしってろ)

優秀な冒険者でも大体Sランクになる頃には引退年齢になり、ギルドマスターに落ち着くのが一般的。無能で10代の人間であるアクスがAランクというのはかなり異例です。ちなみにアーク内メンバーの戦力は美従士どころか影猫ですらS~SS級。ノアさんの戦力は・・・人間では測れません。もうとんでもないですね。



おもしろかったら下のグッドボタンを押してくれると嬉しいです。引き続き次回作もお楽しみ下さいm(_ _)m

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