第18話:『王国の建前、国王の本音』
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王が王女同行の理由を建前と本音に分けて話す。建前としては4つ。
1,国防:隣接国で和平が結ばれていないのは森国だけ、国防上の観点から敵国か友好国か国として判断したい。
2,有益:リュミエールにもメリットがある。帝国は亜人を開放すると言っただけで森国を侵略しないとは言っていない。このままだと森国が侵略されるかも。友好を結べば防衛に協力する
3,信頼:帝国の所業は心苦しいが、人間としてエルフに誤解され続けるのは心外。今後の未来の為、人間も国によって思考が全く違うという事をエルフにわかってほしい。アルケシアには違法奴隷も亜人差別もない。
4,誠意:王族が直接出向く事によって誠意を示し、信頼を得る為命を賭して交渉の場に赴く。
確かに建前だけ聞くと耳心地が良く感じる。だがまぁやはり体裁的で、命を賭す程でもない気がする。
本音は7つある。
1,先行:他国よりも先に森国と和平を結びたい。先に同盟を組まれて和平条約を無視して二方向から攻められると対応できない。当然王国は他国を攻める気なんて一切ない。
2,国境:王国と森国の国境が曖昧。人の出入りは無いが森林地帯が年々拡大している。取り決めは無いが慣例として森から先を森国領としているが、森を増やして勝手に領地を侵されるのは困る。どこかで線引きしたい。
3,技術:魔法技術発展の為、エルフの魔法技術を取り入れたい。(魔道具、秘薬等)
4,歴史:王国や周辺国の成り立ち、歴史等に説が複数あり、本当の歴史が不明確。盤石な国造りとして強い根拠のある事実に沿った歴史の記録が不可欠。長命なエルフの見解とすり合わせたい。
5,恩恵:アルケシアにも森はあるが小規模で、恵みが少ない。大森林の恵み(魔獣の素材、薬草、果物、木材)を少しでも享受させてほしい。
6,箔付:お披露目後の箔付けとして人類史上初の森国との和平という偉業を成した王女として国内外にアピールしたい。
7,王女:成人を迎え、基本ずっと城の中にいた王女に世界の広さを見せ、未来の糧として貰いたい。これは王族というより親心としての本音。
一番の目的はやはりエルフとの友好そのもの。それ以外はオマケ程度、人類史上初のエルフと和解した国として各国に知れ渡れば、四方を国に囲まれた中立国家として盤石な地位を確立出来、王女も国王も各国の歴史に名を残せる。それこそが王族として最高の栄誉なのだ。
しかも今回はドワーフ奴隷もいるので、同様に奴隷の返還と共にノル=ガルムと国交の交渉に赴く。こちらは王子が赴き、護衛にはドワーフ三兄弟によるAランクパーティ”鋼鉄の誓い”が担当するそうだ。
「あぁ、ドワーフの国?集落?ならこの間行きましたよ。意外と気さくな感じだったので結構すんなり行くんじゃないですかねぇ?」
「待て待てアクスよ、ノルガルムに行ったのか?ドワーフと和解したと?」
「いやー道でドワーフの子が困ってたんでちょっと助けたら何か仲良くなっちゃいまして…」
「その方は女性の方ですか!!?」王女が声を上げる。
アクスは余計な事を省き、かいつまんで説明。
集落に着いたら炉の調子が悪くなっていた。
ドワーフは体質的に近寄れないが人間は無害だった。
ただ開いていた蓋を閉じただけで過剰に感謝された。
他種族も少しは受け入れるべきと言っていた等。
あとは手土産に良さそうなもの、干し肉、腸詰、珍しい酒、果物…要は森の恵みをドワーフも欲しているが、エルフが話にならなくて調達が困難である事等を話した。
「これは思わぬ収穫だ、アクスよ感謝する。爵位を与えたいくらいだぞ」
「絶対要りません」
「左様か」王様は残念そうだが機嫌は良いようだ。
まぁそもそも王の勅命なんだから断れるはずもない。変な護衛が付かなかっただけマシというもの。理由を聞いたのは単なる興味と、今後の為に王族が何に重きを置いているのか知りたかったから。
国を護り、歴史に名を遺す、その為に命を懸ける。結局彼らは根っからの王族なのだ。王の覚悟というのは、民の常識で測れるものではなかった。アクスは王女を連れて行く覚悟を決めた。
「わかりました。王女の護衛、お引き受け致します。ですが道中、特に目的地では私含め命の保証はありません。それだけはお覚悟下さい。」
「宜しい、命に代えても守れとは言わん、ルーシェも覚悟は出来ておる。」
「それから、道中は必ず私の指示に従う事。変な要求はしません、御身をお守りする為、我儘はお控えくださいという意味です。以上を踏まえた書面のご用意を」
「わかりました。お約束いたしますわ」
「では、5日後にここを出れば丁度現地で合流できますので、当日お迎えに上がります。ご用意は洗いやすく動きやすい服装を七日分程度、あとは森国代表との謁見用に礼装を一式。他はこちらでご用意いたします。」
「5日間王城に泊っても良いのだぞ?」
「これでもAランク冒険者なもんで、5日で達成できる依頼でもこなしてきますよ、では、ごきげんよう」
アクスは部屋を出る。魔道具がぼんやりと光を灯す。しかしその光に気付く者はいなかった。
4日後の出発前日、夜に王妃の寝室のドアをノックする王女、王妃は愛娘を招き入れ、お茶を淹れる。
「それで、こんな時間にどうしたのですルーシェ、まぁ大体察しは付きますが」
「マ・・母上様、私…」
「良いのですよルー、ここには私たちしかおりません」
「ママ、今日だけ一緒に寝てもいい?」
「あらあら成人もしたのにまだ甘えんぼさん、なんて言い方は意地悪ね、もちろん良いですよ。明日からの旅路、不安なのですね。」
「はい、それもありますが…」ルーシェはなにかもじもじしている。
「あら、ではあの冒険者さんの事かしら」
「なっ!…はい」王女の顔は耳まで真っ赤だ。
「やはりそうなのですね。あぁルー、愛しのルー、貴女は恋をしたのですね?何て素敵なのかしら♪」王妃はテンションが上がっている
「ママ、恥ずかしい…」
「堂々となさいルー、王族だろうと恋はするものです。…わかりました、私の持論ですが、あのような態度を取る殿方は…で…だから貴女は…」
王城の夜は更けていき、じきに朝を迎える。
人物紹介です。今回は国王と王妃について
国王エリオス・セラ・ドラヴァルト
40代の金髪。実力はSランク冒険者クラスだが、無駄な争いは好まない聡明な善王。国の各機関から報告が挙がっている四聖の存在については警戒しつつも、その行動から少なくとも国や人と対立はしていないと考えている。スタンピードから街を救った英雄が娘の恩人で、しかも噂の四聖との繋がりもありそうで、アクスに興味を抱く。国の機関が無理やり四聖を取り込もうとするのを危険視し、友誼を交わす方向にできないか思案している。王族が王位を正当に継承した場合のみに発現する血継スキル(王威)を持っており、王威をを持つ者の配下は主人と認識した瞬間に絶対の忠誠を強制される。ドラヴァルト王家は代々王威を継承しているからこそ絶対なる繁栄が約束されており、反王家派、貴族派等は表向き存在しない。
王妃セレフィナ・セラ・ドラヴァルト
20代に見える30代。薄桃色の髪。美しい容姿。政略結婚だが、夫である国王に心底惚れている。娘ルーシェにも立場上政略結婚を勧めないといけないが、内心では愛する男と一緒になってほしいと願っている。
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