第14話:『帝国の皇帝、四聖の主人』
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アークで一夜明け、寝室にエルフの少女がアクスを起こしに来る。
「おにいちゃ・・ごしゅじんしゃま、おはようございます。あさでしゅよー。」
アクスは既に目覚めていて起きるのが面倒だったのでゴロゴロしていたが、娘?が折角起こしに来てくれたので目覚めたフリをする。
「ふぁーあ、おはよう、えーっと……」
10人の名前はまだ覚えきれていない。ふと目をやると少女の頭の上に名前が浮かんでいる。
「おはよう、リーン」
「はい!おはようございます!」リーンは名前を呼ばれたことをとても嬉しそうにしている。
さすがうちの従者は優秀・・いや万能だ。エルフというか子供にとってご主人様というのは早口言葉みたいで言いにくいのか。
「リーン、お姉ちゃん達が居ない時だけならお兄ちゃんって呼んでもいいぞ?」「ほんと!?」「あぁ、お姉ちゃん達には内緒な?」「やったー!ウフフ、おにいちゃーん♪」
全く朝から何てもの見せてくれるんだ。心が癒され過ぎて…本気で帝国を根絶やしにしたくなる。
エルフ達と一緒に朝食を取る。アクスは当然肉を食うのだが、エルフ達の皿にも肉が乗っている。
「エルフって肉食うのか?」
「あれは肉のような食感で植物性タンパク質を多く含む野菜です。私が創造しました。生体解析の結果、体質的には動物性食品の消化吸収に問題ありません。菜食主義はエルフの文化なので一旦は尊重しますが、国から離れた存在になりましたし、ゆっくり説明をして、希望する者からいろいろ食べさせてみようと思います。」
「さすがママだな!」
「何でしょうか」
「何でもない」
朝食後、今後の方針を決定する。優先順位としては①亜人奴隷を開放する。②帝国をアルケシアに攻め込ませない。③帝国が魔族に攻め込まれないようにする。④帝国を滅ぼさない。①②はマスト、③は①を達成する為の条件として、④を諦めるのは最終手段だ。細かい作戦は
「ノア、後は任せた」
「畏まりました。」
――つまり丸投げである。
アクスとカグヤ、ミレイユは宿に転移し、街に出て観光、、、もとい調査を開始する。国民の倫理観、奴隷商の割合、奴隷の扱い、種族、街の名物、おいしい店…。
その日の深夜、帝都王城の上階にある皇帝の寝室で眠りにつくのはザルグラード帝国第十三代皇帝ヴォルク=ザガン。眠る皇帝を見つめるのは一匹の黒い猫。猫はベッドに近い壁に咥えていた手紙を押し当て、尻尾に絡めていたナイフで突き刺して留めた。その後音もなく影に潜るように消えていった。
翌朝目覚めた皇帝は寝室の壁に突き刺さったナイフと手紙を発見した。
「誰だ…!」と低い声を上げるも、従者もいない寝室は静けさを保っている。皇帝は壁に刺さった短剣を引き抜き、留められていた手紙を手に取る。
「謹啓ザルグラード帝国皇帝陛下
我はアルケシア王国にて四聖を統べる者。すなわち、王国の加護と均衡を担う者なり。
貴国が幾度となく魔族と剣を交えてこられたこと、そして今なおその脅威に晒されている現状に、深く敬意と憂慮を抱く。
我が申し出は、敵意ではなく友好の証である。
この度、帝国北方を侵す魔族の殲滅、および今後数百年の侵攻を封じる結界の構築を、我が力をもって確約する。詳細は、戦地にて余の力をその目にて確かめられよ。
尚、本状が貴殿の私室に届けられている事実そのものが我が力と意志の証明である事、貴殿であればご理解頂ける事と信ず。
我が求むるはただ一つ、亜人奴隷制度の即時撤廃と全解放。それ以外の対価は要さぬ。
そして最後に申し添える。我はアルケシアの守護を司る四聖の主なり。そのこと、決して忘れられぬよう願う。
それでは、いつか対面かなう日まで。
貴国の理と矜持ある選択を、心より願う。」
――アルケシア王国四聖の主より
「……随分と余裕のある手紙だ。挑発、示威、それに宣告か」指先で封を弄びながら、再度短剣を手に取る。
皇帝の寝室に風ひとつ立てず入り込み、手紙一通を刺して去る──それだけで警備は面目を失い、自身は肝を冷やした。だがその瞳は、恐怖よりも昂ぶりの炎に似た色を宿している。
「四聖の主。我が国の命運すら左右するというその”力”とやら、見せてもらおう」重く冷たい空気の中、皇帝は背後の扉に向かって静かに命じる。
「朝一番にラウド将軍と隠密隊長を呼んでおけ。敵か味方か、化け物か救世主か…すべては決戦の地にて見極めてやろう。我が国に指図するとは…ふんっ!無礼者に身の程を教えてやろうではないか。」
窓の外、薄明の空を見上げながら決意を新たにするのだった。皇族専用の食堂。皇帝は一人優雅に朝食を取っている。帝国の皇族は常に有事に備えるため、また毒見を直前、最小で行う為に食事は一人ずつ交代で取る事になっている。
そこに現れたのは金ピカの重厚な鎧に赤いマント、派手な装いの大男。帝国軍統括・ラウド将軍がが皇帝の前で跪く。
「お呼びに預かり参上致しました、皇帝陛下。」
皇帝は無言で人差し指を立て、すっと前に倒す。執事がラウドに手紙を渡す。
「これは…?拝見致します…こ、これは何事ですか!!?」ラウドの大声が食堂に響く。
「昨夜我の寝室に届けられていたものだ。ご丁寧に封を壁に短剣で刺し留めてな。」皇帝が静かに応える。
「なっ!警備兵は何をしていたのだ!!」
「よい。手紙を良く読め。あの魔族共を一掃し結界まで張るというのだ、人知れず帝国皇帝の寝室に手紙をよこすなど造作もない事なのだろう」
「で、では此度は進軍せずこの主とやらの手前を確認し」
「そんな訳あるか」皇帝の眼光が鋭くなる。将軍は再び頭を下げる。
「そんな得体も知れない奴の力など当てにするものか!何のために奴隷と寡兵を贄にして兵力を高めてきたのだ!今回は亜人は使わん、全兵力をもって魔族を殲滅する、一匹も逃がさん。例のゴーレムも出せ。我も戦場に出る。」
「あのゴーレムですか?あれはまだ歩行がうまくいかず・・」
「大杖が使えればよい。そもそもあれの役割はもはや大杖の台座でしかない。初めから車輪付きの大杖として作れば良かったのだ」皇帝は朝食を進めながら文句を言う。
(あんたがやれって言ったんじゃないか!)とは言い返せない将軍。
「此度は帝国の未来を決める総力戦である。帝国の全戦力をもって事に当たれ」皇帝の檄が飛ぶ。
「委細承知致しました。ザルグラードに栄光あれ!」将軍が立ち上がり、胸に拳を当て高らかに叫ぶ。
その声に応じて周囲の警備兵も「ザルグラードに栄光あれ!」と声を合わせる。皇帝は満足そうな表情で朝食を食べ終えた。将軍が食堂を去った後、皇帝は静かな声で命を下す。
「隠密、聞いていたな。アルケシアの四聖とその主について再度調査せよ。」食堂は静寂に包まれているが、皇帝の耳がぴくりと動いた。皇帝は食堂を後にし、通常の公務に赴く。
影猫について解説:ノア曰く正式種族名はウイップテイルシャドウキャット。本体は普通の猫程度の能力しかありませんが、伸縮自在の尻尾はオリハルコン製の鞭くらいの強靭さがあります。尻尾での戦闘力は最小単体でC~集結してSS級以上。数は多数いますがその実は多であり個。または個の分身ともいえます。全ての影猫は情報を共有しており、指令の難易度によって適正な数をノアが合成・管理しています。影に潜み、大抵の場所は潜入可能。会話はできませんが、ライブカメラのように影猫が見聞きしたものをノアだけが確認できます。主要な場所への潜入偵察がメインですが、一部アクスと友好的な関係を結んだ人間の影に潜み、陰ながら護衛してます(友人が死んだらアクスが悲しむと思い、ノアが勝手にやっている)。アークにも常に一匹居て、たまにアクスへモフモフを提供していますね。アクスが最初に「長いので影の猫で影猫」と呼んだので、アーク内では影猫で通っています。
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