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私を助けた光の話

 蝉が鳴き始めた時期でした。

 

 女の子は学校から帰る途中、石につまずいて転んでしまいました。

 赤くなったお膝が、とても痛くて。周りに誰もいなかったので、助けてもらうことも出来ずに。

 とうとう泣いてしまいました。

 

 しばらくすると、小さな緑の光が現れました。蛍ではありません。本当にただの光が、女の子の周りをフワフワ飛んでいるのです。


 不思議な光を見て、女の子の涙は止まりました。


「一緒に遊ぼう」


 光が喋りました。

 女の子は驚いて、目を丸くしています。

 

 光は森の中に飛んで行きました。

 女の子は慌てて追いかけます。謎の光でしたが、不思議と怖くはなかったのです。


 森の奥へ進むと、小さな川がありました。おだやかに流れる川は、見ているだけで涼しくなれました。

 近くにこんな場所があるなんて、と驚いた女の子。


 しかし、もっと驚く事がありました。

 たくさんの緑の光が、あちこちに浮いていたのです。


 光は女の子の周りを取り囲み、まるで猫のようにスリスリしてきました。

 女の子には不思議な光が、とても優しい人に思えたのです。

  

 膝の痛みはすっかりなくなっていて、心もぽかぽかしてきました。


 女の子は光とたくさん遊びました。

 

 追いかけっこをしたり、花冠を作ったり。

 

 「ふふ、楽しいね!」


 女の子がそう言うと、光達が金色に輝き始めました。あまりにもまぶしくて、目をギュっと閉じました。

 少し経ってから目を開けると、また緑色の光に戻っていました。

 

 不思議に思いながらも、女の子は緑の光と遊び続けました。

 

 川の水を飲んだり、木の実を食べたり。

 一緒に魚を眺めたりもしました。

 女の子はとても楽しい気持ちになりました。

 

 ピカピカっ!

 

 光達は、また金色に輝きました。

 女の子が笑うと、光の強さが増すのです。

 

 いっぱい遊んで、お腹いっぱいになったからか。

 女の子にはいつの間にか寝ていました。


 しばらくして、女の子は体を揺さぶられて目が覚めました。

 お母さん達が心配して探しに来てくれたのです。


「こんな所で何してたの!」

「光のお友達と遊んでたの。あれ、あの子達は?」

「お母さんが来たときは、他に誰もいなかったわよ。もう、心配したんだから!」


 お母さんに連れられて、女の子は家に帰っていきました。

 

 次の日、女の子はまたあの森に行ってみました。

 しかし、あの光と会う事は出来ませんでした。


 また遊びたいな。そう思った女の子は、おうちに帰ってから絵を描きました。


 光達と遊んでいる絵を、緑のクレヨンで描きました。


               ***

 

 それから、女の子は大人になりました。成長するにつれて、光の事は忘れていきました。


 都会で一人暮らしを始めてからは、仕事に追われる毎日になっていました。


 毎日疲れて、夜は遅くに帰ります。


 会社を出て、横断歩道を渡った時。

 

「危ない!」


 背後から、聞き覚えのある声がしました。

 

 立ち止まって振り返ると、誰もいませんでした。


 キキーっ、ドンっ!


 かわりに、大きな音が聞こえてきました。

 見れば彼女の前で、車が電柱にぶつかっていました。

 

 あと一歩ズレていれば、車に引かれていたかもしれません。


 そう思うと、胸のドキドキが止まりませんでした。

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 咄嗟に、自分を助けてくれた声にお礼を言いました。

 けれど返事はありません。

 

 結局、あの声をどこで聞いた事があったのかも思い出せませんでした。

 

               ***

 

 久々のお休みの日、実家に帰るとお母さんが一枚の紙を持ってきました。


「この間片づけていたら、懐かしいものが出てきたの」


 そう言ってお母さんは、緑色のクレヨンで描いた絵を見せてくれました。


 その絵を見て、思い出したのです。


 あの森の事を、あの川の事を、あの光の事を。

 

 そして事故の時に聞こえた声が、緑の光の声だった事を。

 

「あの光が……また助けてくれたのかな」


 怪我をしたあの時も、光が元気づけてくれたように。

 

              ***

 

 翌日。あの森があったはずの場所に行ってみました。

 

 そこはコンビニになっていて、森もありませんでした。


 近辺を歩いてみましたが、あるのは神社だけで、記憶にあるような川が流れている場所も見つかりません。


 残念ながら緑の光には会えませんでした。

 

 もしかして、困っている人の前に現れてくれる妖精さんのような存在だったのかな。

 ううん。

 今は見えていないけど、光のお友達は自分の心の中に常にいて、護ってくれているのかも。そう思いました。


 心の中で繋がっていることに気づくと、彼女の心があたたかくなり。自然と笑顔になりました。

 

 彼女は心の中で光のお友達に感謝を伝えながら、家に帰って行きました。

こちらは以前、読者様に聞いた不思議な実体験が元になっております。


もしかしたら似たような体験をされた方がいるかもしれないので、ぜひ多くの方に見てほしいとの事だったので投稿させていただきました。


もし似たような経験をされた方、おりましたらご連絡いただけると嬉しいです。もちろん、童話としての感想・評価等もしていただけると励みになります! よろしくお願いします。

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