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動くに

 岐阜城。


林秀貞「佐久間より

『家康が武田に奪われた遠江の内、二俣を除き回復した。』

との連絡が入りました。」

織田信長「その間、武田の動きは?」

林秀貞「抵抗らしい抵抗は、犬居城から戻る時のみであります。」

織田信長「誰が狙って来た?」

林秀貞「城主の天野藤秀であります。」

織田信長「武田本隊では?」

林秀貞「ありません。」

織田信長「となると信玄の死は……。」

林秀貞「真実と見て間違い無いかと。」

織田信長「ならば岐阜に兵を置いておく必要は無いな?」

林秀貞「仰せの通りであります。」

織田信長「将軍はどうしている?」

林秀貞「4月末に和議の確認をして以降、目立った動きはありません。」

織田信長「浅井はどうしている?」

林秀貞「2月にあれだけ活発に。殿を亡き者にしようと画策していたのでありましたが……。」

織田信長「奴らは恐らく信玄の上洛を信じている?」

林秀貞「はずなのでありますが……。」

織田信長「相手は将軍であり、我が主君。義昭が和睦を守っている以上、こちらから手を出すわけにはいかぬ。それに……。」


 信玄の生死も定かでは無く、武田も健在。


織田信長「兵站で不具合が発生し、再調達を余儀なくされている可能性もある。迂闊に兵を西へ展開させる事は出来ぬ。」

林秀貞「御意。」

織田信長「……1つ家康に頼んでみるか?」

林秀貞「どのような事を?」


 浜松城。


酒井忠次「殿。織田様より書状が……。」

徳川家康「……。」

本多忠勝「どのような内容でありますか?」


 長篠城を攻略して欲しい。


酒井忠次「古宮には山県昌景が常駐。しかも国衆に課していた先方を解消しています。つまり……。」


 山県昌景自らが兵を率い、相対する事になる。


榊原康政「信長様の狙いは、殿を使って武田信玄の生死並びに武田が動く事が出来るのか否かを確認したいのでありましょう。」

本多忠勝「しかし今回。山県が動いて来るのは確実。」

徳川家康「今、武田の本隊と戦うのは避けたいのではあるのだが……。」

酒井忠次「長篠には2つの川があります。その川の対岸に陣を張り、状況を見て兵を退けば宜しいのでは無いでしょうか?信長様が知りたいのは信玄の死と武田の動きであって、長篠の奪還ではありません。」

徳川家康「……わかった。野田の菅沼定盈殿へ感謝を伝えながら、長篠へ向かう事にする。」


と徳川家康は織田信長の要請に応じ、長篠城へ向け出陣。修築中の野田城と城主菅沼定盈を激励した後、更に北上。長篠城の対岸に陣を構えようかと兵を進めた家康が目にしたもの。それは……。

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