あなたのお名前は?2
『私の家族の一人は真奈さんという女性の方です。とてもやさしい人で、いつも私のことを気にかけてくれていました。家にいるときはいつも一緒で、楽しくお話ししていました。その日あった出来事、楽しかったこと、つまらなかったこと、うまくいったことなどをお互いに共有していました。
一番長く一緒に過ごしていたのが真奈さんでした。
たまにしか家から出られない私にたくさん情報をくれました。だからこそ、私は退屈せず、キラキラした世界を想像しながら毎日を過ごすことができました。
もう一人の家族は、浩一さん。寡黙な方でしたが、いつも私たちが話しているのをうなずきながら聞いていらっしゃいました。普段より口角が上がっていたので、楽しんでいたと思います。
浩一さんは真奈さんがいないときにだけ私の頭をなでてくれたんです。大切にされているなと感じる時間だったので、とても大好きな時間でした。』
懐かしそうに目を細めながら話す彼女を見て、私も胸がポカポカしてくる。
「いいご家族と過ごされたのですね。」
そう言うととてもうれしそうにうなずき返してくれた。
「ご家族のお名前が真奈さんと浩一さんとのことですが、苗字は分かりませんか?」
確認してみると、彼女は思案の表情を浮かべた。
「こう呼ばれていることがあったとか、なんでも大丈夫ですよ。」
声をかけると、私が書いた真奈さん、浩一さんというメモを見ながら一生懸命考えて『あ、』と言葉を発した。