あなたのお名前は?1
カランカラン
来訪者を告げるベルがなった。
「ようこそ、スタンリーブ図書館へ。」
館長として笑顔で挨拶をする。
あれ、姿が見えない。
少し目線を下げると、かわいらしい姿が目に入った。
「かわいい…!」
思わず小さく声に出てしまったが、聞こえていないことを願おう。
当の本人は、広い館内を見渡し立ち尽くしている。
「こちらへどうぞ」
近づいて声をかけると、慎重そうに私の後を着いてきてくれた。
カウンターの椅子に腰かけた様子がかわいらしすぎる。
写真に収めたい欲求を押し殺し、笑顔を向けた。
「今日はどうされましたか?」
定番の言葉をかけると、相手は下を向いてしまった。
『私、名前が分からないんです。家族や友達との思い出はいっぱいあるのに、自分の名前が分からなくて……。』
そう答えて下を向く彼女を見て、心が痛くなる。
「そうなんですね……。」
相槌を打ちながら彼女を観察してみる。年齢は10歳くらい。よく手入れされた頭にピンクのリボンを付けている。目の印象が強く、とても惹き込まれる。
「ここはお名前からルリーブルを探してお悩みを聞くのですが、ほかの方法からでもルリーブルを探すことはできます。まずはいろいろお話を聞かせてください。」
そう言ってほほ笑むと、彼女は顔を上げ、微笑んで見せた。
『はい、ありがとうございます!よろしくお願いします。』
少しでも手掛かりを得ようと、キーワードとなりそうな単語をメモするべく、メモ帳を構えながら彼女の話に耳を傾けることにした。