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あなたの未練は何ですか?6
ルリーブルのページが一枚、風もないのにふわりとめくれた。
ウメノが小さく声を上げる。
「なんだい、これ。勝手に動くのねこの本……。」
少し、声が震えている。
「本は主の思いを映します。きっと、ご主人への気持ちがページを動かしたのでしょう。」
不安と、納得のようなものが混じった顔。
彼女は、ゆっくりと頷いた。
「……そうかも。あたしの未練って、あの人だったのね。あの人と、もっと過ごしたかったんだ、あたし。気づかなかった。」
そう話す彼女の顔は、驚きで包まれていた。
彼女の中で、ご主人の占めていた割合の大きさに気づいたのだろう。
そんな彼女に、こんな提案をしてみた。
「ここで、ご主人を待ってみませんか?」
うつむいていた彼女ははっとこちらを見る。そんなこと言われると思っていなかったという顔だ。
「そんなこと……できるかい?待つなんて……。どのくらい?」
「好きなだけ。ゆっくり、お茶を飲みながら。」
私はそう言いながらほほ笑んだ。