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あなたの未練は何ですか?4
「なぁんだか、どれも違う気がするのよねえ。あたし、ほんとに未練なんてあるのかしら。」
彼女は手を伸ばしながら話す。
しっくりくるものがなく、手ごたえを感じられないようだ。
ルリーブルをめくろうとはしない。自分で真実にたどり着きたいというこだわりか、それとも答えを見るのが怖いのか……。それは分からない。
「何かすっきりしない、と感じられている時点で何かあると思いますよ。」
そう返すと、彼女はそうかい?とまた考え始める。
「ヒューさんは不思議な人だねぇ。何も否定しないじゃないか。」
彼女は感心しているようだ。
「ここは、図書館です。図書館員である私は否定より傾聴が得意なんです。」
お茶を出しながら少し冗談めかして返すと、彼女はくすっと笑った。
「いいねぇ、それ。なんか話してると落ち着くもの。」
そう言って受け取ったお茶の湯気越しに彼女の目が和らぐのが感じられた。
話し相手がいることの大切さを、彼女は静かに実感しているようだった。
「話すことって贅沢よね。誰かが聞いてくれるって、本当はすごいことなのかもしれないわ。」