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あなたの未練は何ですか?1
カランカラン
扉が開く音に、ふと顔を上げる。
入ってきたのは、小柄で少し腰の曲がった年配の女性だった。首に巻いたスカーフの派手さが目を引くが、それに負けない雰囲気をまとっている。
「ここかい?変わった図書館っていうのは。」
彼女はそういいながら、まるで近所の喫茶店にでも入るような足取りでカウンターに向かってくる。
私は微笑み、ゆっくりと立ち上がる。
「ようこそ、スタンリーブ図書館へ。どんなご用件でしょうか?」
そう声をかけると、女性は少し怪訝な顔を向けた。
「用件ってほどのものじゃないんだけどね。なんだか胸の奥がすっきりしないの。どうにもこのまま進みだす気持ちじゃなくてね。話だけでも聞いてちょうだい。」
そう言って、笑いながら椅子に腰かける様子は軽やかで、しかしその言葉に、なにか重みのようなものも感じられた。