SIDE:姫宮七海
私は姫宮七海、私立猫之宮高等学校に入学したばかりの一年生だ。
私には好きな人がいる。所謂一目惚れで、桜音華恋さんに恋をした。
とても綺麗な銀髪を風に靡かせながら威風堂々と歩く姿、振り返った時の綺麗で透き通った瞳に完全に胸を貫かれた。女神が現れたのかと錯覚した程だ。
華恋さんは、いつも堂々としながらも何処か近寄り難い雰囲気をしていて物語などに出てくる王子様みたいだった。だから同じクラスになれた時はとても嬉しかった。
華恋さんはとても優しく、冷静でリーダーシップにも溢れていたけれど、それと同時にガードがとても固いことでも有名だった。
何人もの同級生達が告白しては、呆気なく振られまくっているのを幾度も目にしたものだ。
だから私は、少しづつ積極的に関わりながら一ヶ月懸けて連絡先をゲットし、つい先日は少しだけど家にもお邪魔することが出来た。
今の所は、とても上手くいっていたと思う。
けれど、今日の華恋さんはどこかおかしかった。
学校に着くと、いつも朝早くに来ているのに華恋さんはHRが始まっても来なかった。こんなことは入学してから初めてのことだった。
一時限目が終わったらすぐさまNYAINで連絡を入れる。するとすぐに返信が来た。
(・・いつもは既読が付くのにかなり時間がかかるのに)
しかも、返信の内容もおかしかった。
いつもに比べて警戒心などまるで無いような返信に、優しい言葉遣い。これはもう何かあったと確信し、家に無理矢理決行することにした。
学校が終わったら速攻で帰る準備を整えて華恋さんの家に直行した。すると、驚くことに華恋さんは私を出迎えてくれた。
とても嬉しかったけれど、そんなことより私は華恋さんの服装に釘付けだった。
白のTシャツはまだ良い。いや、良くはないけれど黒のホットパンツの方が非常に不健全だった。
はっきり言います。
(とってもエッチでした!!健康的な白い太ももが曝け出されていたら食い入るように見ても何もおかしなことではないでしょう!?そうですよね!?)
・・・ふうっ。
まあ、それ程心を許してくれたのだと思い込んで一旦下心は封印した。しかし、秒速でその封印は剥がれかけた。
以前お邪魔したときは部屋には入れさせてもらえなかったのに、今回はリビングではなく華恋さんの部屋に連れていかれたのだ。
(はっ!?普通何でもない人を自分の部屋に入れる?もうこれは、恋人だと思っても良いのでは?)
急な展開に混乱していると、華恋さんはお茶を持って来てくれた。
(そういえば今、華恋さんの部屋にいるんでした。綺麗な部屋・・華恋さんの匂いがする・・)
そうやって惚けていると華恋さんに話しかけられた。
どうやら風邪などではなかったようだ。
(良かった・・。でもそれなら今日はどうしたんだろう?)
そんなことを考えているととんでもない質問をされた。急に男性は居ないの?と聞かれたのだ。
頭の中はクエスチョンマークで一杯になり、いつも意識していた丁寧な言葉遣いもいつの間にか崩れてしまっていたが、それも気にならない程今日の華恋さんは危ない気がしたので詳しく説明することにした。
案の定理解はしたが、何も分かっていないようだった。
(今後は私が華恋を守っていかないと・・)と、思考しながら説明する。
しかし、説明したのに未だに危機感を抱かない。
それどころか今自分が何をやらかしているのかも気づいてないようだった。
あろうことか、この状況で子供のつくり方を聞いてきたのだ。
(これは早めに危機感を持ってもらわないと・・)
なので手っ取り早く、遠回しに今実践してあげると言ったら、流石に何か勘づいたようだったが、多分その意味までは把握してないだろう。
(了承していたら今すぐ襲ってあげたのに・・危ない危ない。思考が良くない方向になってしまってるわ。それもこれも全部華恋のせいよ。こんなに可愛いのにそれを自覚せず誘うようなことばかりして)
明日からの学校が今から不安になってきた。
その後も色々教えながら大事なことは念を押しながら一個一個伝えた。本人は真面目に聞いているのか怪しかったけれど、その分私がきちんと見てあげたら大丈夫だろう。
それと、帰り際に華恋の満面の笑みに見惚れてつい固まってしまった。
「顔が赤くなってたの気付かれてないと良いけど・・」