卵焼き
「それじゃ有り難く貰おうかな」
「ええ、遠慮しなくても良いわよ?華恋の好みのものがあれば良いけど・・」
七海のお弁当を見る。
七海のお弁当はタコさんウインナーに、卵焼き、小松菜のナムルにプチトマト、エビフライにブロッコリーと少し多めのナポリタン、そしてゆかりご飯というかなり美味しそう、それでいて綺麗なお弁当だった。
杦本さんはどうかなと思い気になってそちらを見ると全男子の憧れのようなお弁当だった。
エビフライに唐揚げ、ソーセージにミートボール、スパゲッティに卵焼きなどなど、もう欲張りセットだった。だけど、どちらもタイプの違うお弁当で美味しそうだった。
「・・食べさせて」
仕方なく適当にウインナーを箸で摘み口元へと運ぶ。
口を軽くあけた状態で餌を待つ雛のようにしてジッと待つ杦本さん。ウインナーを口に運ぶと暫くモグモグすると満面の笑みを浮かべたのでお気に召したようだ。
そうやって暫くパクパク食べさせていると、七海に制服の裾を引っ張られる。
「なに?どうしたの・・七海!?」
振り向くと七海は黒い笑みを浮かべていた。
「・・私を放置して二人で楽しむなんて酷いです」
「ご、ごめん七海」
「悪いと思ってるなら私にもあーんして」
「あ、あーんが良いの?」
「ええ、あーんじゃないと許しません」
かなりご立腹の様子だったので仕方なく七海の箸に変えて、卵焼きを七海の口へと運ぶ。卵焼きを頬張ると笑顔になったので満足したようだ。
「・・華恋も食べないとね?」
七海はそう言うと、俺の手からさっと箸を取って先程七海が食べた同じ卵焼きを挟む。
「華恋、口を開けて頂戴」
「こう?」
口を開けて待っていると卵焼きがゆっくりと舌の上に載せられる。。咀嚼すると、フワッと柔らかく甘い卵焼きだった。
「ん、美味しいねこれ」
「華恋の口にあったみたいで良かったわ」
「この卵焼きどうやって作ったの?」
「そんなに難しいことはしてないわ。卵に小さじ一杯ぐらいの砂糖を入れて普通に作っただけよ」
(へ〜そんなんで良いなら今度自分で作ってみようかな)
すると横から
「・・私の卵焼きも食べて」
と、無表情で杦本さんも卵焼きを突き出してきた。
杦本さんの卵焼きは口に含むと、トロリと解けて濃ゆい味付けだった。
「・・どう?」
「美味しい。これはどういう風に作ってるの?」
「・・確かお母さんは卵にマヨネーズと醤油をひと回しぐらい入れて作ってるって言ってたと思う」
どちらも違った味付けでとても美味しかった。
「因みに華恋はどちらの卵焼きが好き?」
「・・どっちの方が良かった?」
「うーん・・どっちも全く違った方向の味付けで比較のしようがないから・・でもどっちも同じぐらい美味しかったよ」
「今後も精進しますわ」
「・・・」
その後張り合うように色々と食べさせられたけどお昼は楽しく過ごせた。半日も過ごすと周りの視線にはもう慣れてしまった。
昨日は忙しく投稿することが出来なかったので、また午後に投稿しようと思います。
 




