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体育

 七海に着替えを手伝ってもらってようやく着替えが終わる。授業のチャイムはさっき鳴っていたので急いで更衣室を出て、無言で七海の後をついて行く。


(気恥ずかしくて七海の顔を見れない・・キスなんて一度もしたこと無かったのに。・・それにあんなに凄いものだったなんて知らなかった。・・それより七海にもっと凄いことを言われたような・・これからはなるべく七海と二人きりになるのは避けないと)


 考えごとをしていると、七海がこちらに振り向いて話しかけてきた。


「別に人目があるとこでは何もしないからそんなに警戒しなくて良いのよ?」

「それって人目が無かったら何かするって言ってるようなものだよ!?」

「だからそう言ってるのよ」


 あまりの堂々っぷりに慄いていると、いつの間にか体育館に着いていた。天井は高く、大きな室内は軽く三千人ぐらいは入れそうだ。クラスの皆は既に集まっていたが先生はまだ来ていないようでホッとしながら七海と列に並ぶ。


(それにしても皆なんでずっとこっち見てるんだ?何かおかしなとこでもあったか?)


 不思議に思っていると丁度先生が入って来た。一瞬見間違いかと思って三度見してしまった。男の人かと見紛うほど筋骨隆々な身体に、快活な笑顔を浮かべたおよそ女性らしくない先生だった。


「おい、お前ら今日は初めての実技らしいな。取り敢えず出席番号順に二人でペアを組んでくれ」


 えっと俺の次は確か河井さんだった筈・・ええと・・見つけた。列の先頭の方に居た河井さんも此方を見て手を振っている。綺麗なピンクブロンドをポニテに纏めて丸渕眼鏡をかけた文学少女だ。俺も手を振りかえすと周りがギョッとした顔で固まっている。


(えっ!?もしかして振り返したらダメだったか!?)

 

 そう思って七海の方を見ると大きなため息をついていた。


 何か失敗したのか不安になっていると、いつのまにか近くに来ていた河井さんが俺の手を握ってきた。


「ハアッハアッ華恋様のおてて・・」


 何か言っているが、声が小さくて聞き取れない。


「何か言った?」

「いえ、何も。宜しくお願いします」

「私こそ宜しく河井さん」


 俺も手を握り返して自然と握手する。


「私のことは河井じゃなく、律子と呼んでください。私も華恋さんと呼びますので」

「わかっ・・ん?律子?」

「はい!律子です!」


この子自己PRの性癖で色々赤裸々に語ってた変態だ・・


(まあそっち方面に話を持っていかなければ大丈夫かな?不安ではあるけど・・)


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