HR
「うーん、昨日休んだ時に色々助けて貰って仲良くなったから一緒に登校して来たって感じかな?」
「それで?何も無かったの?」
「うーん、特には何も」
「ホントに!?キスの一つや二つは?ホントに何も無かったの?」
「別に何も無かったよ?」
そう答えると、指原さんは首を傾げて七海の方に行ってしまった。
(何か気になることでもあったのかな?)
二人の話してる様子を遠目に眺めていると、肩まで掛かっている長い灰髪に丸メガネをかけた先生らしき人物が入って来た。
「皆さん席に着いて下さい。HRを始めます」
皆急いで席に着く。
「本日は皆さんが入学して一ヶ月が経ち、そろそろ学校にも慣れてきた頃だと思います。これからはもっと積極的になって欲しいということで今日の一限目は、昨日お話しした自己PRをして貰います」
このことは、既に昨日七海から聞いている。自己PRの何処が特別なのか気になっていたのだが、他校とは違い生徒の積極性を上げる為に入学して一ヶ月が経つと、この高校では特別な自己PRをするらしい。
「一応昨日休んでいた生徒も居るので改めて説明しましょう」
そう言って先生は俺の方を眼鏡越しにチラッと見てきた。
(俺の為にわざわざ改めて説明してくれるなんて優しい先生だな)
「本校は、他の高校とは違い特別な校則があります。まあそれは承知で皆さん入学したと思いますが・・」
(えっ!?俺知らないんだけど!?もっと調べておけば良かった・・。まあ過ぎた話はしょうがないか。入学したのは以前のこの体の持ち主だし、承知で来るってことはそんなに悪いことじゃないってことだろうし・・そんなに気にしなくても大丈夫そうだな)
「100年前に男性が絶滅してから種の存続の為、人類は進化し、今では女性同士でも子供がつくれるようになりました。しかし昨今、未婚率をそのままに出生率が著しく下がってきています。その為10年前、政府の働きかけにより大きな学校には恋愛推進制度というものが作られました。勿論本校にも恋愛推進制度はあります。この制度のことを詳しく知らないという方も大まかな内容は知っていると思います。はい、居眠りしている杦本さん、恋愛推進制度とは何ですか?」
先生に大きな声で質問されているのに、一向に起きそうにない杦本さん。仕方なく前の席の俺が起こす。
「杦本さん、起きて!質問されてるよ!杦本さん!」
肩を揺すりながら大きな声で呼びかけるとようやく目を覚ました。
「う〜ん・・何?」
眠たそうに眼を擦っている。
「えっと・・先生が杦本さんに質問してるよ?」
すると、凄く嫌そうな顔をしながらも先生の方に顔を向けた。先生は、にこやかだがちっとも笑っていない笑顔でもう一度質問する。
「起きたみたいね。おはよう、杦本さん。さて、それではもう一度質問します。杦本さん、恋愛推進制度とは何ですか?」
「・・知りません」
キッパリと、それでいて堂々と答えていた。
先生は凄く呆れた表情で溜息を吐いていた。
(いや、今のいままで寝てたのにそんなに堂々としていられるなんてある意味凄いな・・)
 




