あの日
お母さんはとても素敵できれいだった。きれいなブロンドの髪深い海と深い森のような優しい目いつも笑っていた。そしていつも横たわっていた。長い髪を流して白い折れそうな手が私の顔に触れる。そしてこう言う。生きて。私の大事な子。
さよなら 君は言うが私を置いていかないで。寂しいの苦しいの眠いのもう永遠に眠らせてほしい。苦しむことなく何も感じることなく穏やかに漂っていたい。
そんな私を見ていたい。優しくして。抱きしめて。寒いの。助けて。私はもう死んでいる。一人ぼっち。
一人ひとり人離わたしの名前は。忘れて。わすれた。さようなら。さよなら。涙。微笑み。どこ?
覚えてるのは夜の高い空と芝生、満点の星。雨の匂い。寂しさ。悲しみ。優しさ。カラフル。懐かしい匂い。
憶えているのは遠い階段上にある薄い空、大きな鳥居
死にたいことへの悲しみ。苦しみ。痛み。
震える涙の匂い。抑えた震え。声を殺した音。自らで抑え込む心。すさみボロボロの弱いもの。大きい体で捉える。守る弱い力。
守ると同時に自らを傷つける。それでしか守ることができなかった。
ずっと苦しかった。辛かった。私は何も持ってない。普通でいたいけどもう嫌になってしまった。だから死のうとするのも生きようとするのもやめた。私はきっと死なない。こうやってずっと生きていく。私は駄目な人間だ。
けれど永遠というものは存在しない。命はいつか終わる。だからずっと我慢していれば死という褒美がもらえる。その人生に値する価値のあるもの。
始まりがあればそれ以前が普通になりそうして人生ができる。
正気に返って自己を取り戻せ。己を悩ましていたのが夢であったのに気づき、夢の中のものをみるように、現実のものを見よ。
すべてまやかしだ。おぼえる者もおぼえられる者も
死を恐れるな




