美しい時
教室にはいつも静かな女の子がいる。何を考えているのかはわからない。隣の席のことはよく話す。時々、冷たい目をする。よく窓の外を眺める。髪は少し長め。服はいつもちょっと適当。でも、たまにかわいい。そんな女の子。
人生ってさ、つらい。生きる恐怖とこのままの恐怖と変わる恐怖で半分こ。
もし人生がもう一つあったらなんてことはない。今の人生しかない。
人に見せたい景色はきっと空。海。川。山。人々。全部知っているはずなのに、涙が出てくる。泣いて泣いて、でも、枯れなくて。
寂しいなぁ。つらいなぁ。まぶしいあの人のようにいられたら、どんなにいいだろう。陽だまりの中にずっといられたら。でも、雨が好き。静かに降ってて。少し冷たくて。暗い中にいて。雨の日は、私はクラゲになる。寒い寒い深海の中でゆったり流れる。時々ぶつかる。でも、雨の日は、安全。守られて慈しまれて生きているから。
運命のような出会いがしたい。図書館で手が合うとか。
春の夜は、穏やか。眠くなりそうなまどろみ。
夏の夜は、にぎやか。心が躍る。
秋の夜は、もの悲しい。浸ってゆらゆら。
冬の夜は、静か。心が写されている。
一人の夜は、ふと怖くなる。自分が寂しいことに気づく。
二人の夜は、営み。幸せに浸れる流れの短い川。
三人の夜は、忘れる。思い出すのは、あの日のにおい。
月のない夜は、なぜか見上げる。月を探して、星の輝きに見せられる。
月の夜は、ただ見る。見上げればどこかにいるもの。
浅い夜は、時間が長い。
夜は時が来るのが早い。
深夜は、ふと気づけば人のさが。
夜は、短い。
人生、変わりたくないものがある。
今の人生と残りの人生。どちらが大切か。どちらのほうが長いのか。
いつの時代にも死ぬには、勇気がいる。
ざわめきにささやかれるのは、暗い中。
ありがとうを言えるのは、人生で一回。
ごめんなさいは、百回。
気づけるものには、気づけない。
会える人には、会えない。
近くには、行かない。
いつか、はきっと来ない。
泣いてもいい
負けてもいい
笑われてもいい
ほっとかれてもいい
気づいてもらえなくても
それでも見捨てることはしない
諦めはしない
変わるときまでは
気遣う言葉がでなくても
何にもできることがなくても
見ていられなくても
自分が最低な人間でも
人に失望される人間でも
苦しんでいるのを見て
離れることはできない
ひとかけらの愛情をもらったのなら
どんなに嫌な人でも、
どんなに苦手でも、
どんなに住む世界が違くても。
理解できない相手だろうと
正面から見つめる。
足がないなら手で
手がないのなら歯で
歯が欠けたなら目で
見えなくなったら想いで
どんなにつらくても
苦しくても、胸が痛くても、
愛されている限り死ぬなんてできないよ
それでも死んじゃうのは、弱いからじゃなくて
勇気を持ってたから
人生を変えられる勇気を全部そこで使っちゃったんだ
目に見えないものを大切にするのは、
信じていたいから
それに守られているから
泣けるのは、思いを知ってしまうから。
泣けないのは、気づいてしまったから。
赤ちゃんの目は、初めて世界を映したときキラキラしてる。
まだ、何も見たことのない目で見た世界は、きっとただ映っているだけ。
でも、心の中に映るのは、きっと不思議な世界。
優しくもない、つらくもない、まだ何にも知らない心。
見えるものは、わからない。
赤ちゃんの目は、とっても深い深い色。
まるで、世界のすべてを、真理を知っているのと言っているみたいに
笑って笑って泣いてへの字口。
きっと何もしていない時ほど、甘美な毒はない。