燃えつきている
残酷表現あり。ご注意を
その、ひどい匂いが鼻に届き、足をとめた。
そういえば、おろしてくれたアラシが、これ以上は近づけん、と鼻すんすんいわせていたのに思い当たる。
山がひらけ目にしたものに、セイテツの口からうめきがもれる。
「・・・ひでえ・・」
そこは、山あいにあるひらけた土地なら、たいてはある里だった。
緩い斜面には田があり、急な斜面には、野菜の苗が植わっているのがみえた。
家々は間隔をもって建てられ、里の中を田のために引いたのか、細く水もながれていた。
そんなおだやかな風景が、どこもかしこも、黒く燃え尽きている。
どこの家も、黒くくすぶって、倒れ、道のところどころには、何やら大きなものから小さな黒いかたまりが落ちている。
「生きてる植物が、一面焦げてる・・。松明や何かの火じゃないぞ」
緑色の稲も黒く色を変えている。
だが、油の匂いはしない。
里に近付けば、さらに言葉を失った。
「・・スザク・・」「・・うむ」
道に落ちていた黒いかたまりは、―― 人だった。
それは、細く黒く固まって、生きていたときの面影さえみえない。
「おい、・・・あの、小さいのは、きっと、こどもだ・・・」
むこうをさして、虚ろな声で絵師が言う。
「・・・間に合わなかったな・・。すまん・・」
坊主が首にかけた数珠を手に巻きなおした。