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役神(えきがみ)をよこす
「しかし、本当に珍しいなあ。この前のイモリみたいなのを退治してから、まだ五日しか経っていないぞ」
山道を進みながらセイテツは坊主の背中に語りかける。
「 ― 退治じゃねえ」
「え?また何か探せってか?」
前にも天帝から、そんな命が出て、こういう山道を進んだな、と絵師は思い出す。
前を行く男はあの時と同じように先を急いでいる。ただ、あの時は、大雑把な場所指定で、目指すものを探しまわったが、今回は、しっかりと特定されていたらしく、坊主が呼び出した僕のアラシが、おまえらが行く場所を知っているぞと、二人を背にのせ、さっさとそこを目指してくれたから、着くのも早かった。
「今回はミカドじゃねえ。ヒョウセツだ。―― あいつ、役神をよこしやがった」
ヒョウセツは、弐の宮の大臣だ。
出不精な男で、よほどのことがなければ己は出張らず、役神を遣わして事を済まそうとする。
今回も、その男がよく使う薬サジの役神が坊主を訪ねてやってきた。