このさきも
ここまでとなります
「・・・アシが笑った。スザクよりもよっぽど人間らしいな」
「おれあ、役神じゃねえから普通に笑えるぜ」
「・・おまえの笑った顔なんか・・・・いや・・そういやあ、見たな。おまえがシュンカに赤い石を返したとき・・・」
たしかに。寒いものを見た。と、セリと顔を見合わせた記憶がある。
改めてみた坊主は、かわらずの・・いや、いつにも増して、不機嫌そうな顔で、抱き合う子どもと役神を見ていた。
「・・・・ま、自覚なし、で、気に入らないんだろうな・・」
ただでさえ、小さな役神が、シュンカ目当てで宮に昼夜を問わず入り込み、このところ坊主はえらく不機嫌なのだ。
ごく最近も、それをどうにかしろ、とセイテツは文句を言われたのだが、そのときは寝ぼけていて言い返せなかったことを口にしてみる。
「宮で役神がさわぐとおれにいったが、あいつらの騒ぎなどたかが知れているし、だいたい朝など、おまえ、もう起きて書物でも読んでるじゃないか」
小さな役神がうるさいなどと、神経質な文句を言う男ではないはずだ。
それがいったいどうした?ときくと、なぜか坊主は黙り込み、腕を組んで考え込んでしまった。
しばらくしてようやく顔をあげ、首をかしげる。
「言われりゃあ、その通りだ。じゃあ、なんで、あんなうっとうしく感じるんだ?」
「・・・・気に入らないってことだろ・・」
「・・ああ、そうなのか」
「・・・おまえさ、もうちょい、自分を見つめなおせよ」
「ああ・・気に入らねえってことは・・おれは、シュンカを嫌ってるってことか?」
「おまえ、ほんっと馬鹿」
あきらめたようにうなだれる絵師の横、まだ抱き合うようにむかいあう役神とこどもを睨むようにしていた男が腕を組んで答をみつけた。
「・・・おれぁ、ちいせえのが嫌いなのかもなあ・・・」
騒がしい役神にしろ、シュンカにしろちいせえもんなあ、とまじめな顔で考え込む坊主に、絵師はこれ以上、なにも言う気がおこらなかった。
「シュンカ、はやくでかくなれ」
「え?」
いきなりの言いつけに困ったこどもは、その日から飯の量をふやしたという。
かわってゆく ――
このさきも ――
最後まで読んでくださった方、目をとめてくださったかた、ありがとうございました!
次は、重く暗いはなしとなっております。残虐場面も多いため、ご注意を




