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おとぎばなし ― ことのおこり ―  作者: ぽすしち
なにかが・・・

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積み重なる


 魚は五匹取れた。

 天宮を流れる川には、下界と同じ種類の魚がいる。シュンかはそれが嬉しいのか、なにやら魚の名をアシへ教えながら、器用に銛でそれらを取った。


 アシは、人間のように飯はとらない。

 二匹余るなあと子どもは考え、「阿吽にあげてこようかな」と思いつく。

 

 役神は、あの方たちは生臭いものはお嫌いですよ、とは教えない。きっと、喜んでそれを貰うだろう。



 この子が来てから、天宮ではあちこちで、変わったことがある。

 草木がとにかく良く伸び、花が毎日どこかで咲いている。狂い咲き、とは違い、植物が無理をしている様子はないとセリは言う。


 門番である阿吽が、ちょくちょくと門内で遊ぶようになった。しかも、時々人の型になるのだ。

 褐色の肌をした体格の良い男と、胸も尻も大きな女に子どもが組み敷かれているのを見た絵師が、慌てふためいて騒ぎになった。

 二頭とも、人型になるなど何百年ぶりかとお互いをみてにやけていたが、子どもがイヌの型でないと頭を撫でてくれないからと、この頃はあまりやらない。


 住人以外出入りのあまりなかった伍の宮に、他の宮の大臣や、馴染みになったシャムショの人間、夜しか祭殿に忍び込まなかった小さな役神たちも、昼間から出入りするようになり、すっかり騒がしくなった。


 四の大臣は酒を片手にやってくる。もう片手には、菓子を持っている。

 参の大臣は、スザクをからかい半分に壱の大臣サモンと手をとって遊びにくる。

 シャムショの年寄りは、珍しい食べ物が下界から送られると、伍の宮へとそれを分けにくる。


 そうしてそれを、アシと、シュンカと、後から手伝いに来たシャムショの若い者とで料理して、伍の宮の庭で、皆を呼んで楽しむのだ。

 

 シャムショのほかの者も、コウセンが溜め込んだ酒を持ってきて、「おまえら、それはおれの酒だ」とわめく男が封を切り、結局みなにふるまわれる。


 大人たちから菓子や珍しい食べ物を与えられたシュンかは、庭の片隅でそれらを阿吽や役神に与え、自分はアシたちの手伝いをする。

 アシが、いくらここはよいから、といっても子どもはきかない。自分も伍の宮につかえているのだからと笑って、アシの横で働く。


 明日もきっと、こうして横で同じように働くのだ。



 そう考えると、

    ―― そうだ、アシは、明日のことまでも、考えられるようになった。



  記憶が、積み重なってゆく。





 それが、どういうものなのかわからない。


 これを、自分を仕立てる絵師に伝えていない。






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