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おとぎばなし ― ことのおこり ―  作者: ぽすしち
そうして、

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46/52

おれに教えるな


  白く美しい石の前で、坊主が経を唄い、里人の見送りは無事に済んだ。


 ふいに赤い石を出し、この場へ埋めたいと言う子へ、コウセンがそれを指先でつつくと石を半分にしてみせた。


「半分はおまえが持つ。半分は母上様に持っていただく。それでどうだ?」


 口を結んでうなずく子の手へ半分。

 もう半分を、白い石の表面をなで出来た切れ目へと手を突っ込み入れる。


 再度表面をなで、ぴたりと、石の切れ目が閉じたとき、子どもの中でなにかが代わりに切れたようで、こらえてもこらえきれぬ涙があふれ、そこからはもう、ただの子どものように、わんわんと泣き叫びはじめる。

 

   ごめんなさい。ごめんなさい。おれのせいで、ごめんなさい。


 小さな手が、何度も何度も、大地をかきむしり、額が土に押し付けられた。




 最初に動いたのは年寄りで、子どもの背を撫でると、そのまま懐に抱き寄せ、土にまみれた両の手を取って、それを皺の多い手で握ってやる。

 子どもはそれでも謝って泣き、年寄りはただ黙って、身体を抱え、あやすように背を叩き続けた。




「・・・ケイテキとかいう、男・・」


 ぼつりと、コウセンがその名をもらす。


「・・次に天宮てんぐうに来たとしたら、おまえら、おれに教えるなよ。・・そのまま無事に、帰せる自信がねえからな」

 瞬きもせずに、血走った目で、掟を破りそうだと吐き出したコウセンを、シャムショの若い男は驚いて見つめ、頭を下げた。




 天災などの災害や、流行り病などの、人間ではどうすることもできない事柄に対しては、天宮は、いや、大臣たちは動く。

 そこには東西南北の将軍たちとの、金子きんすのやりとりも起こる。

 だが、その将軍たちが各々おこなうまつりごとや戦などに、みかどや大臣たちは口も手も挟まない。 それが、ここの掟で、天帝てんていのやりかただ。


 

 子どもがあまりにも泣きやまないので、年寄りに視線をおくられたコウセンが頭を掴み、強制的に眠らせる。


 帰りもアラシが現れて、みなそろってすぐに天宮には帰れたが、コウセンは、子どもをずっと離さなかった。


 抱きかかえて、参の宮へとむかい、セリとサモンが見守る中で、膝に子どもを置いたまま、ちびちびと酒を飲み続けたということだ。







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