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おとぎばなし ― ことのおこり ―  作者: ぽすしち
そうして、

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41/52

よく似てる


「―― だれか、教えやがったな?」

 ネズミが後ろ足で立ち、聞いたことのある声をだす。


「ミカド・・・わかっているはずだ。見ていたろう?皆、決まりは守った。だれも、二人のことを教えていない」

 ネズミを見下ろすサモンが、珍しく強気な声で言い切り、隣に立っていたセリが、わざと、ゆっくり、かがみこむ。



「どうだ?これで、わたしたちの勝ちだ」

 女がネズミをつまみあげ、顔の前にぶらさげてすごんだ。


    「―さあ、返して、もらおうぞ」



 ぶらぶらと体をゆすったネズミが、「ちっ、つまらん」とくやしそうに、片方の前足を上にあげた。

「つまらんが、しかたねえ。―セリ、スザク、おまえらの、きょうだいの『えにし』、返してやろう」

言うなりネズミはゆがんでかき消えた。


「見てろよ。おまえのおかげで、ひさしぶりの、感動の場面だ」

 コウセンは笑ってそこをさし、その場面が始まる。



 サモンに優しく押された女が、一歩出て笑う。

 坊主は、セイテツに肘で押されて、女に向き合う。



 女の微笑む顔を見下ろす坊主が、なんともかゆそうに頭をかいてから、しかたねえ、と眉を寄せた。


「・・・・・おい、・・姉上。ひさかたぶりに、もどったぞ」


「おお、愚弟よ。おまえは変わらず、馬鹿よのお」


 苦いものを食わされたような弟の頭を、満足そうに扇子でなであげて、姉は笑う。




「よくぞ、当てたものよなあ」コウセンはそんな二人を眺め、抱えたシュンカと改めて目を合わせ、いきさつを話す。 


「あの二人が天宮に入るとき、ミカドがその『えにし』を取り上げたんだ。取り上げられれば二人が姉弟だったころの記憶もなくなる。 あまりにひどいから、みなで非難したらな、何も知らない者が、おまえらの縁を見破ったらば、返してやるなどとほざいてなあ。・・・セリは大臣になってしまったから、もう人間のように歳をとらなくなったし、五つ離れた姉を、スザクが追い越しちまった。もう、この先はスザクだけが歳をとる。 そんな二人をみて、わかる者など現れまいと思っていたら・・、ほんと、おまえは賢くて素直だなあ」

 コウセンがほめたたえるように子どもを高く抱きなおす。



 セリが、ゆっくりと近付いた。

「―シュンカよ。礼の言葉が思い浮かばん。こんな似ても似つかん男と、よくつながっておるとわかったなあ?」


「だって、お二人とも、よく似てらっしゃいますよ?」

 

 ・・・たぶん、きっと、そんなふうにみれるのは、おまえぐらいだと思うよ、と口にしないで、セイテツとサモンは顔を見合わせる。



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