聞いたかよ
「ってえ。なにしやがる」
さして痛くもないように頭を撫で、スザクはセリを睨む。
「おまえのあまりの馬鹿加減に、扇子もつい動いたわ。いいか?おまえはシュンカの母上様にこれを受けて、うなずいておるのだぞ?ゆえに、そこから先起こったことすべて、おまえが働いて当然のことだ。その石をシュンカへ返したのは、おまえが珍しくした、常識内の行動だわ。だのに、それをまた弔いの金として受け取ろうなど、馬鹿すぎて話しにならん」
「金は取りこぼすなとうるせえのは、てめえだろうが!」
「他でがっちり取って来いと言っておるのだ!それともなにか?おまえ、―― このわたしに、たてつこうとでも、いうのかえ?」
にたり、と赤い口が微笑み、坊主は顔を歪ませるが、どうにか口を閉じた。
「・・・あの・・」
この言い争いの元となってしまった子が、二人の間で困ったように石を握りこむ。
「セリさま、おれ、まだちゃんとスザクさまに従者として認めてもらえてないんです。だから、やっぱり石は、納めていただきたいんです。里を代表して、弔っていただかなきゃ、ならないし・・・、それに―― 、」子どもが少し首をかしげ、ゆるやかに口にした。
「・・・あまり、ごきょうだいで、ケンカは、よくないかと・・」
その言葉に、周りのおとなどもがそろって固まる。
「・・・シュンカ?・・・」
最初に反応した絵師の顔をみて、子どもは慌てた。
「あ、・・れ?す、すみません、違いましたか?」
セリとスザクをみくらべる。
「セリさまは、てっきり、スザクさまの、姉様なの、か、とっ」
言い終えぬうちに、その小さな体が、さらわれるように、高々と抱き上げられた。
「聞いたかよ!おい!この子が!シュンカが、言ったことを!」
子どもを抱えたコウセンの声が、勝ち誇ったように空へと投げつけられると、その足元に、いきなり白いネズミが湧いた。




