いくらで売れる
「―みなさま。ありがとうございます」
坊主の経が終わると、セリと手をつなぐ子どもが頭を下げた。
「礼など言わなくともいいのだ。あそこに立つ坊主など、おまえの母上様から『よろしく』と頼まれておるのだしな」
女が、閉じた扇子を口元に、馬鹿にした男へ目をやる。
「おれが頼まれたのは、あの石だ」
坊主のそれに、はっとした子どもが、ゆっくり歩み寄り、懐からそれを取り出した。
「スザクさま、その、・・これでは、足りないかと思うのですが・・・」
「なんだ?」
顔をしかめる男に、そのまま手にした、赤い石を差し出す。
「父と、里人を弔っていただくための金子を、おれは持っていないので、どうか、これを替わりにしていただきたいのです」
そうなのだ。坊主は金をとって人を弔う。
そして、このスザク様は、徳が高いため、かなりの高額なのだ。
「いや、いいだろ、シュンカはもう、伍の宮の身内なんだし、おまえの従者になるんだし、―」
絵師が言うのも聞かず、坊主は石を眺めて言い放つ。
「その石、いくらで売れる?」
「っば、馬鹿!それはシュンカのお袋殿の」
「金がねえっていうんなら、しかたねえだろが」
「だ、そうじゃなくて―」
この男に、その石の大切さをどう教えればよいのか、セイテツは頭をかきむしる。
べしん、といい音が響き、場が静まった。




