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おとぎばなし ― ことのおこり ―  作者: ぽすしち
そうして、

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37/52

空からの迎え

 



 次の日に、リョウゲツを送るための儀式が、天宮でとりおこなわれた。

 

 本来下界では、人が亡くなれば、まず荼毘に付され、それから坊主が呼ばれ、経を唄いあげ、近親縁者で見送る弔いをする。

 リョウゲツは、天宮のやりかたで、見送られることとなった。


 シャムショの奥にある、高台になったそこには、儀式を行うための、石で造られた台があるだけだ。

 天宮には、どこにだって緑があり、常に何かの花が咲き、実をつけた植物がそこかしこにあるのだが、この広い場所の乾いた赤い土には、草さえも生えてはいない。


 天宮の大臣たちは人間ではないので、寿命は尽きない。よほどのことがなければ、病にもかからない。

 なので、この石にのせられるのは、なにかのはずみで思いがけず亡くなった役神か、シャムショに務める下界から来た人間か。

 もしくは、リョウゲツのように、縁あって、ここに来てしまった亡骸か。



 その石に、今日送られる、リョウゲツがのせられている。


 柔らかな白い布が敷かれた木の箱に収まった父親と、子どもは、最後の別れをする。

 コウセンが、シュンカを抱き上げ、しっかり父親と会えるようにしてやり、こどもは、箱の中の男に白い花を添え、顔をなで、腹の上に置かれた手を一度だけ、しっかりと握る。

 あとはただ、その顔だけを、見つめ、そうして、最後に、なにかをこらえるように、頭を下げた。


 抱えたコウセンが、それをせつないように眺めてから、続けて礼をし、一歩さがると、空いた片手で文字を綴って腕を振る。


 ぱしん


 と、遥か上の方。空で音がした。



 ほお、と思わず声をあげたのは、参の宮大臣のセリだ。隣に立つ壱の宮サモンも、これはまた、と空を見上げる。


 「・・初めてみた」

 「おれもだ」

 セイテツとスザクもそれを目にして驚いた。

 

 音をだした空、はるか上のほうから、降りてくるそれらが見えた。

 天宮で亡くなったものには、《空から迎え》がくるのはいつものことだが、下界でなくなった人間には、このような迎えは来ないはずだ。



 「親父殿、・・・どうも、天上人てんじょうびとだったことがあるようだなあ」

  空に『穴』を開け、むこうを呼んだコウセンも、降りてくるそれを認め、天帝が知り合いだったという話を思い出す。


 子どもは、なにも答えられずに、ただ口を開いて空を見上げていた。

 


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