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おとぎばなし ― ことのおこり ―  作者: ぽすしち
そうして、

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36/52

それでいい


「・・だがなあ、そりゃあ、だめだった」なにが、『だめ』だったのかは、いつものように語らずに、ただ、緩く笑ってみせる。


 それを見つめる子どもは泣きそうな顔だ。



「なあ、シュンカ。 おれたちみたいに、大事な人にゆかれてしまい、残った者ができるのは、ひとつしかないような気がする。 ―――― 生きようぞ 」


 子どもの大きな眼が、男へこぼれんばかりに見開かれる。


「見送りが、ちゃんとできそうになく、心配か?大丈夫だ。生きて、日々、弔いながら見送ればいい。おれなぞ、いまだに、ちゃんと見送れてやれなくてなあ。・・だが、あのクソ坊主に、それでいいといわれて、初めて心が休まった」



 二人にそんな会話があったのかとセイテツはまた、そっと驚く。



「明日、親父殿を、見送ろうな」

「・・・はい」

 泣きそうな顔でも、子どもはしっかりと返事をする。


「うむ。このまま、ちょっと顔を見にゆこう。男前な親父殿だ。使い込まれたあのこんは、おまえが引き継ぐといい。よくぞ、最後まで、おまえを守りきった。立派な方だ」


 はい、とこたえたシュンカは、コウセンにしがみついたまま、震えるように泣き出して、もう、顔もあげられないようだった。




 子どもの背を、優しく叩き、振り返って絵師にひとつうなずくコウセンの顔は、ひどく、照れくさげで、セイテツは、そのまま二人を見送った。



 大事なものをなくしてしまったあの二人が寄り添うそこに、自分がかけられる言葉はなにもなかった。








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