これから
「・・・シュンカ、ほら、いいから」
詰まった声を出す絵師に、軽々と持ち上げられて、子どもはそのまま抱き上げられた。
「―― スザク、おれは、この子と一緒に暮らしたいね。おまえがなんと、言おうとも」
片腕で子どもを抱えた男は、そのまま坊主を置いて、部屋をでた。
「―― 伍の宮をまだ案内してないもんな」
いいながらその円のかたちの宮の中を案内する。
「今のが、真ん中の部屋で、あそこを突っ切った奥が、儀式をする祭殿になってるんだ。で、それを囲むみたいに、部屋がある。ほら、この廊下をぐるりと曲がって右手から、まず書物庫、次がおれの使う部屋、で、坊主の道具とおれの絵の道具が詰め込まれた大部屋があって、次がその坊主の部屋。隣は空いてるから、今日からシュンカの部屋だ」
「で、でも」
「居候でも、それぐらいの権限はあるし、おれは、あの坊主より五つも歳上だ」
シュンカは自分を片腕で抱え上げる男の顔をおどろいてみる。
「そういえば、シュンカは?いくつだ?」
「はい、十三です」
「えっ!?」
「・・・もっと、幼いかと思われましたか?」
「・・・ごめん・・まだ、十くらいかと・・」
「父にも、よく言われます。おまえは小さいって―」言ってから、あ、という顔になる。
それでいいじゃないかと絵師はうなずく。
「これから伸びるさ。親父殿、大きい方じゃないか」
弔いだって、まだ、終わってもいないのだ。
過去形で話すなんて、しなくていい。
セイテツさまと小さな声で呼ばれたから、ん?と小さく返す。
「・・スザクさまは、・・里に、連れて行ってくださるでしょうか?」
「行かせるよ。おれが、責任もって。それに、コウセンが黙っちゃいないだろうし・・。ああ、コウセンは、ほら、シャムショから出てきた、むさくるしいおっさんだよ」
あの男、見た目はひどいが優しいぞ、と絵師が説明すれば、「ひどい、は、なかろう」といきなり当人が、廊下の先に現れた。




