後悔するなよ
「ふざけてやがる」
坊主が前に進み出た。
「てめえはいっつもそうだ。冗談じゃねえ。これ以上、好きにさせるかよ。-― このシュンカは、伍の宮で預かる」
「ほお。おまえが?だが、それはどうかの。おまえ、そのいい色の頬は、昨日コウセンに殴られたのだろう?」
白く長い尾をくるりとさせる。
「わしはミカドだぞ。それよりも、そこなクソ坊主を選ぶか? まあ、人間の気持ちから離れてるといえば、わしもその男もあまり変わらんがなあ」
眠たげにあくびをした猫を、子どもは、ミカド様、とはっきりおだやかに呼んだ。
「 スザク様は、『クソ坊主』などではありません。 おれは、― スザク様の従者になります」
「・・・・ものずきな・・・」
「そして、スザク様にお願い申し上げます。おれの里に、一度、弔いに行っていただけますか?」
「・・・なるほどな。それで、下界にもどるか」
にゃあ、と猫が笑い、ゆらりとまた子どもになった。
「よかろう。シュンカ、伍の宮に入れ。そして今からおまえは坊主の従者だ。・・・後悔するなよ?」
にやりと子どもが笑い、ゆらりとゆがむと、玉座には何も残らなかった。




