白を黒に
そうしてついた白い石造りの宮のなか。
謁見の間の玉座の上には、シュンカよりも歳若い子どもがあぐらをかいていた。
おそろしく顔がきれいで、目が異様に冷たかった。
薄布もなく、その姿を見てしまった子どもは慌てて口をとじ、下ろしてもらうと床にひれふした。
「どおだ?坊主ども。これがわしに対する正しい態度ってもんだ。おまえらも見習えよ」
「気がむいたらな。おいシュンカ、相手は化けもんだ。そんなかしこまらなくたっていいんだぜ?」
「だまれ、坊主。それにしても・・・そうか、・・おまえが、リョウゲツの子か?」
ミカドが人間の名を口にするなどついぞないことで、思わず二人の男は玉座を見上げてしまった。
「おう、二人とも、しばらくぶりに、いい反応だ。これぐらい驚いてもらわんとなあ」
「なんだよ、親父殿を知ってるのか?」
太い腕を組んだ坊主が玉座をにらんだ。
「知ってるもなにも、わしが転生させたのだ。母親のサクラもな。あれは、―― またも、人間に命を絶たれたか・・・」
珍しく、帝がしんみりとした声をだす。
「・・まあ、この話はここまでだ。おまえらを喜ばす趣味はわしにはない。―― 子ども、おまえの力は強すぎる。下界に野放しにできるもんじゃあないぞ。親父がついていたから放っておいたのだ。もう、下へはもどさん」
ミカドの言葉は、黒を白にする力がある。これで子どもは下界へもどれない。
「で、でも、おれ、里に」
「誰もおらんだろうが?その坊主にも言われたはずだ。戻って、今さら謝ったところで、誰も元にはもどらん」
「―― クソ猫」
「セイテツ、おまえのように、その子どもは悪くない、などと言うほうが、クソだ」
玉座の子どもがにんまりとし、突然ぐにゃりとかたちを変えた。
「子ども、わしの下につけ。おまえの力はこういう場所でつかうものだ」
猫になった帝が命じる。




